社会問題小説・評論板

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

 アクアリウム。
日時: 2011/09/18 22:51
名前: 白兎 (ID: 0inH87yX)





どうも、ハクトです(^^)

傍観者の主人公 伶がクラスのイジメに関わっていく話。

受験生なので更新が遅くなると思いますが、つたない文章を書いていきます。


荒らしトカ周り見えてない発言する奴は個人的には大好きだが
他の閲覧者様を不愉快にさせてはいけないので控えましょ。

応援から酷評まで、コメント受け付けてます(キリッ`・ω・)
 

Re:  アクアリウム。 ( No.3 )
日時: 2011/08/26 14:13
名前: 白兎 (ID: 271PzwQK)

 


生活感のないモデルルームみたいに綺麗な部屋。
そこから出て来たのは、Tシャツにトレパンといったラフな服を着た水野だった。


「久しぶり、三上さん」

一年ぶりに話した彼は、相変わらず穏やかな笑みを浮かべていた。
とても、登校拒否をするような子どもには見えない。

「一応、私は毎日ここに来てるんだけどね」
「ああ、そうなんだ。意外だね」

担任に押し付けられたと言うと、面倒臭がりな君のコトだから、上手いこと言って逃げそうなのになんて言われた。

「誰かがやらなくちゃいけないんでしょ。なら」
「その“誰か”に自分からなるなんてらしくないな」


らしくない……確かに。
マイペースな自分にしては、珍しいことかもしれない。

最近の自分の行動を思い出していると、水野はうわっと声を出した。
驚いているのに、その声は落ちついている。

「手紙、そんなに溜まってたの」
「……溢れ出しそうな勢いだったね」

私の抱える手紙たちを見て水野は目を丸くしている。
居場所の無い水野の手に、それらを押し付けた。

落ちる落ちると焦る水野を尻目に、リビングらしき部屋に入っていく。


「手紙、片したらコーヒー煎れてよ。ケーキも」

はいはい、と呆れたような声が、後ろから聞こえた。


 

Re:  アクアリウム。 ( No.4 )
日時: 2011/08/27 18:36
名前: 白兎 (ID: B6N9vk9k)




「……あつい」


ほくほくと上る黒い液体の湯気を見つめながら、ぽつりと呟いた。

今の季節は初夏で、しかもここは太陽に近い。
そのうえこんなホットな飲み物を出されれば、嫌でもその言葉は出る。
しかも甘党な私にブラックだなんて、なんて気が利かない奴だ。


「そろそろ夏だもんね」

私の言葉の意味を理解しているのかしていないのか、窓の外を見つめ水野は言った。
リビングの窓は無駄に大きくて、町が一望できる。
毎日こんな場所にいて、一体こいつは何を見てるんだろう。


「学校はどう? 三上さんもE組だよね」

相変わらず温和な笑みに、私の口は言い淀んでしまう。
だって、今のクラスはけして良い状態とは言えないから。

やっぱり言いたくなくて、質問を質問で返した。


「水野はさ、何で学校 来ないワケ」


その質問は、水野も答えたくないみたいだった。
肩をすぼませ、コーヒーを口にいれていた。
コーヒーから出る湯気で、水野の顔が歪んで見えた。


「厭離穢土?」

「……は?」
「いや、別に」
「言ってよ。気になるじゃん」

こういう時、別にと言われると急に気になってしまうのは何故だろう。
私は更にしつこく問い掛けた。
すると、水野の口が開く。こいつはけっこう口が緩い。



「適当に勉強して、部活を頑張って、友達と喋って。
それの繰り返しみたいな毎日が、嫌だっただけ」

「嫌って……」


私だって学校が嫌になったことはあるけど、それだけで行かなくなったりしない。
嫌だから、なんて我が儘だ。

そう思うけど、口には出さない。
そんなの水野の自由だし、私が意見する理由はない。


「……うん。そっか」

もやもやとした思いを掻き消すために、苦いコーヒーを飲み込んだ。


「……にがい」

水野が小さく笑った。


 

Re:  アクアリウム。 ( No.5 )
日時: 2011/08/31 15:55
名前: 白兎 (ID: 0T24nVPU)

 




    ▽





いつもと変わらない昼休み。

伶の通う中学では給食は無く、お弁当を持ってくるか購買でパンを買ったりするかだ。

伶は購買派で、いつも通りパンを買いに席を立った。


伶の後ろから聞こえたのも、いつも通りの声。



「三浦ー。俺、いつものヤツな」


「あ! あたしレーズンパンね〜」
「いいな、私も!」

「じゃあ俺は焼きそばパンな」



呼ばれた三浦 亜耶という女子は一瞬 顔を曇らせた。



「え、また……?」
「なに、拒否すんの?」

内にこもるような亜耶の声は、他の女子生徒の強い口調に気圧され
更に小さくなっていく。

「……だって、昨日も」
「良いだろ別に。金は払ってんだろ」


亜耶は俯き、唇を噛み締めた。
下に向けた顔は腰まである多い髪に隠される。


伶は席を立ち上がってから、まだ一歩も動かないままだった。
髪の間から見える亜耶の顔を見て、彼女の悔しさを計ろうとした。


けれど、それは男子生徒の舌打ちによって出来なくなってしまう。


「……早く行けよ三浦。どうせ明日も頼まれるのはお前だよ。
良いから行け。売り切れたら殺すから」


冷たく、はっきりとそう告げられた亜耶は顔を上げて、
男子生徒の冷めた表情に脅えるように顔を逸らした。


「行って、きます……」




伶の横を亜耶が通った。
ふいに香った匂いはけして良いものでは無かった。
伶は若干 眉を寄せ、亜耶を見る。

今にも泣きだしそうな顔を見て、伶は。



「ね、見た?」
「うん」

女子のせせら笑う声が聞こえた。


「三浦のヤツ、泣いてなかった?」
「うんうん。めっちゃ堪えた顔してた」


「まじウケる」
「ウケるっていうかむしろ、」



「キモくね?」





途端に上がる笑い声。


「わかる、キモい」
「元からだけどね」
「ちょ、それ言っちゃ終わりでしょ」







伶は、彼女たちと同じ事を

静かにそう思うのだった。




気持ち悪い、と。




 

Re:  アクアリウム。 ( No.6 )
日時: 2011/09/02 23:35
名前: 白兎 (ID: 7foclzLM)






伶が購買でみるくパンを買い終え、教室に戻ると
同じく買い終えたのだろう三浦がパンと代金を交換していた。

伶は最近は一人で行動することが多いが
昼ご飯くらいは流石に誰かと一緒に食べる。
それくらいのコミュニケーション能力は勿論あるし、話を合わせたりするのは得意だった。


「伶ちゃん! 一緒に食べよう!」
誰と食べるか思案していると、ちょうど声をかけられる。

「いいよ。どこで食べる?」
「ん〜、ココで良いんじゃない?」

クラスメイトの横井 実菜。
ふんわりとしたセミロングの髪に、くりくりと動く表情。
可愛い部類に入る女の子だった。


「じゃあ、実菜の席で食べよっ」
「うん。あ、古谷ー! イス借りるよ」

実菜の前の席を借りて、実菜の机にパンを広げた。

「実菜はお弁当なんだ?」
「うん、自分で作るの」
「すごい。女の子だね」


それからお弁当談議が始まり、楽しく会食をする。

しかし、次に開けられたドアによって、伶は口を、手を止めてしまう。



「みんな、おはよー」
「もう昼ですけどー」
「細かい事は気にしな〜い」
「細かくは無いと思うよー」


教室がすこし賑やかになる。
遅れてやってきたのは、クラスの中でも派手なグループだった。

伶は彼女らを一瞥して、また会話を始めた。
声はかけない。

伶も、この前まではあそこにいたのだが。



そのグループの吉沢 里沙は特に目立つタイプで、すこしヤバめの(不良的な)高校生の彼氏もいる。

そしてその里沙についている女子の内の一人、小坂 由紀は
伶の親友、だった。



それらは過去形であって、もう元に戻ることは無い。
覆水盆に返らず。
零れた水は、もう元には戻せない。
一度壊れた物は元に戻りはしないと、伶は考えていた。

良いんだ、別に。
里沙のグループにいなくなって、困るのはクラスの良いポジションでいられなくなることくらいだし。
ただ、由紀には。







「……三浦、何やってんの?」

里沙の、キツい声が響く。
誰でもそうだけど、三浦に対する態度はみんな冷たい。
突き放すような、尖った声音を話す。
多分、それはきっと私もだろう。



「パンの、お金を……」
三浦の視線は低い。
きっと、里沙が怖いんだろう。

「いや俺さ、頼んだは良いけど、今日サイフ忘れちって」
男子生徒が済まなそうな声を出す。

へえ、と里沙は頷いて、それから

「っていうかさ、三浦に払わせりゃ良くね?」

こんな提案をした。
伶は、ついに来たか、とひどく醒めたため息を漏らした。

亜耶は、目を点にしている。
嫌なのに、その言葉は亜耶の口から出て来なかった。



 

Re:  アクアリウム。 ( No.7 )
日時: 2011/09/10 15:47
名前: 白兎 (ID: 0M.9FvYj)





「無理、だよ。そんなの……」


三浦は振り絞るように声を出していた。

それは誰にも届かない声、なのに。



「そうだ」
里沙は軽く口角を上げた。


「うちらも昼食まだなんだよね」

だから、

「買ってきてくれる?」



疑問形なのに、許された答えは一つだった。
三浦は、教室を逃げるように去っていく。


「早くいけよー」
「ついでにカフェオレもよろしくー」



命令口調の嫌な声。

里沙のグループは、口々に囃し立てていた。

もちろんその中にいる、由紀も。



遠い目で彼女らを見つめ、
そしてまたすぐに視線をパンに移した。


何だかもう、どうでもよかった。


 


Page:1 2 3



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。