社会問題小説・評論板
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- あの日にはもう戻れない——
- 日時: 2011/11/25 17:37
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
前、テレビで特集をしていたときに男の人が言っていたの。
「すぐ止める事ができると思った」
「一度やると、止められなくなってしまった」
「もう、あの日に戻ることは出来ない」
それも、目に涙を浮かべながら。
一言一言ゆっくり、確実に声に出していた。
ただの、視聴者の私は、泣く位ならやらなければいいのに、としか思わない程、私にとっては凄くつまらないドキュメンタリー番組だった。
でも……。
でも、その時は私もその男の人と同じようになるなんて……思いもしなかった。
■当作品は「覚醒剤」所謂、薬物に関しての作品となります。「覚醒剤」という言葉に嫌悪感を抱く場合や、作者の書き方が嫌な方はお引取り願います。
■初めましてっ。プロローグが少し暗い感じになってしまいました;
当作品の作者「柚子」といいます。社会問題系は初めて執筆するのでどうなるか分からないですが、冷めた目で見守ってくれればなぁと思いますっ。
■コメントをくださったお客様
■めにう
*キャラクタ紹介「>>001」
*目次
第一章【 本日快晴 】
第一話「>>002」
■お知らせ
■2011年11月24日スレッド作成
- Re: あの日にはもう戻れない—— ( No.1 )
- 日時: 2011/11/24 16:47
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
■キャラクタ紹介
■主人公
□白守 鈴奈/しろかみ れいな
□女
□高等学校2年生/17歳
□茶髪のセミロング。毎日カチューシャをつけている。
□大人しく、クラスでも目立たない控えめな性格。
□自分は常識人である、と思っている。
「私は、こんなことしたかったんじゃないのに……」
■鈴奈の兄
□白守 誠記/しらかみ もとき
□男
□大学3年生/21歳
□長身で細身。黒髪で短髪、黒ぶち眼鏡着用。医学部のため、白衣を羽織っていることが多い。
□真面目で誠実。人一倍曲がったことが嫌い。
□大学院医学部3回生
「他人の為に自分を犠牲にするっていうのは、勇気と優しさが必要なんだ。それが出来るお前は、凄い奴なんだぞ?」
■鈴奈の同級生
□佐藤 倖/さとう ゆき
□女
□高等学校2年生/16歳
□ハニーブラウンで、ショートヘア。前髪には黒いアメピンをつけている。制服のスカートを規定よりも短くしてる。
□元気っ子で、やんちゃっ子。クラスのムードメーカー。
□特になし。
「ほらほらっ! 暗い顔してたら幸せがにげていっちゃうぞー?」
■鈴奈の同級生
□松岡 結城/まつおか ゆうき
□男
□高等学校2年生/17歳
□ヘソピアスをしている。肌はやけていて、髪の毛の色は銀に染めている。
□一見すると不良に見えるが、正義感が強く秀才。ただ、口が悪い。
□次期生徒会長候補に入っている。
「つーかさ、倖。お前煩いから黙れや」
※随時更新予定
- Re: あの日にはもう戻れない—— ( No.2 )
- 日時: 2011/11/25 17:36
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
第一章 【 本日快晴 】
第一話
誰も居ない教室に、一人でいるのはやっぱり落ち着く。
まだ生徒が登校してくるには早い、午前七時五十分。一人の女子生徒が、教室に入ってきた。少女の名前は、白守鈴奈(しらかみれいな)。教室の扉を開けると、誰も居ない教室を見て嬉しそうに微笑を口元に浮かばせた。
「あーれ? 鈴奈じゃん、はえーのな」
「えっ……。あ、おはよう」
死角に入っていて見つけられなかったのか、教室には鈴奈より先に結城がいた。結城は、鈴奈の落胆振りを面白そうに笑ってみていた。
「結城くんは、なんでこんな早く学校に来てるのよ……」
「あー? お前こそなんでこんな早く来てんだよ。って聞いてやりたいのも山々なんだけど……。俺は、ただの仕事だよ」
そういい、結城は手に持っていたA4のファイルをひらひらと動かす。鈴奈は、その中身を悟った様で、あぁ……と溜め息をつきながらつぶやいた。
最近、鈴奈達が通っている高校では一つ、小さくも大きな影響力を持ち合わせている噂が存在していた。それは“生徒の一部が薬物に手を染めている”というものだった。この噂が教師や生徒会長の耳に入った時には、授業を取り止めて臨時の全校集会が開かれた。全校生徒と教師や事務員全員が入ってもまだ余裕のある体育館であっても、クーラーが熱気に負けてしまうほどだった。
その全校集会で伝えられた“噂”の内容を聞いた生徒たちは、隣にいた生徒たちなどと話し合っていた。鈴奈は、その中の一生徒として仲のいい、佐藤倖(さとうゆき)と話していた。結城はというと、その噂を公表した本人であった為、現生徒会長や学校長と共に壇上に上っていた。
壇上で結城が話したこと、それは衝撃的過ぎて鮮明に覚えている。
「薬物とかに手出してるような社会のゴミと同じ校内に自分が居る。それが俺は許せないね。社会のゴミは社会のゴミに相応しい舞台で生活をして欲しい。ってーか、“覚せい剤”とか使った奴、本当に居んのか? ただの、仲間内での冗談が全校集会で取り上げられちゃって困ってるんですー、とか言いやがる奴居るんだったら、とりあえず俺のところに来い。しめてやる」
そういって、結城は壇上から降りていた。
聴衆役の生徒達は全員口を上げぽかんとしていた。
- Re: あの日にはもう戻れない—— ( No.3 )
- 日時: 2011/11/29 17:44
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
「そういえばさ、結城くん」
自分の机にカバンを提げ、結城の下へと鈴奈が歩み寄る。結城は何も返事をせずに、書類に向けていた視線を鈴奈へと移した。
「あの……薬物に手を染めている生徒って、結局でてきたの、かな……?」
結城の正面に来て、不安げな表情を鈴奈は見せる。
優しい鈴奈のことだから、生徒が薬物に手を染めているなら助けたい、とか誰も傷ついたりとかしてないよね、なんて事思っているのだろうとしか結城は考えていなかった。
「いーや。出てきてないけど、先輩にはボコられたぞ俺」
へへっ、と愉快そうに言う結城を鈴奈は本気で受け止めすぎて顔が青褪めていった。
「そ、それって、大丈夫だったんですか!?」
「いや、だから、大丈夫だしさっ? 大丈夫じゃなかったら今頃病院だろうしな?」
涙目にまでなって心配してくる鈴奈に、申し訳なさそうに結城がいう。それでも顔を赤くし目に涙を溜め続ける鈴奈に、内心面倒くさくなっている自分がいることに結城は気づいていた。
二人がそんなことをしていると、教室の扉が豪快にガラガラッと音を立てて開く音がした。瞬間、涙目の鈴奈と苦笑いをしていた結城が音が鳴ったほうを見ると、クラスメイトのほぼ全員が教室に入ってきた。
一つ、結城少年は察したことがあった。それは、自分と鈴奈の遣り取りを一部始終見ていたかは定かではないが、ほぼ全員のクラスメイトが見ていたということだ。録画や録音されてなければいいなぁと思いながら鈴奈に目を移す。鈴奈は、状況が理解できないようで少しテンパッている。
「こら! 結城のくせに、可愛い可愛い鈴奈泣かせるとは何事だあっ!」
扉のほうから、凄い速さで結城の幼馴染でり、鈴奈の大の親友である佐藤倖(さとうゆき)がやってくる。それも、頬を膨らませながら。
「倖……お前か? お前なのか? クラスメイトに教室入れないようにしてたのはお前か?」
結城は倖の言葉に耳も貸さずに、また書類に目を移し言う。少し呆れも入っていたが、一番含まれていたのは怒りで、いつもよりもワントーン低い声が教室内に響き渡っていた。
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