社会問題小説・評論板
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- そらのむこう。
- 日時: 2011/11/30 15:29
- 名前: 笑羅 (ID: NgR/a8mA)
はじめまして〜^^ノ
初投稿(?)笑羅デスw
これは私が中1のときにノートに書いてた話です。
文章力が小学生並み、いやそれ以下ですがそれでもおkな心優しい方だけどうぞ!
- Re: そらのむこう。 ( No.1 )
- 日時: 2011/11/30 15:29
- 名前: 笑羅 (ID: NgR/a8mA)
教室は 息苦しいだけだった。
空の向こう 第一話
「キャーッ!見てーあいつ顔マジ笑えるwww」
「ッハハハハ!!!グロすぎ〜終わってんでしょあれはwww」
「っはーありえね〜ww」
いつも友人たちが盛り上がる話は悪口ばかり。
美有もその輪の中にいる一人だった。
ね、美有もそう思うでしょ?
と話を振られることも少なくは無い。
そんなときは同意するしかなかった。
もし、皆と違う意見を言ったりすれば・・・。
そんな恐怖心が常に美有をつきまとう。
苦痛だった。
息苦しかった。
・・・・・・カシャ・・・・・
静かに携帯のシャッター音が鳴る。
美有は最近、そらの写真を撮ることにこっていた。
昼休みは、息苦しい教室を抜け出して屋上に行く。
冷たい風が頬に当たりとても気持ちがいい。
昼休みの屋上は、美有の居場所だった。
「うん、よく撮れてんじゃん。」
ついさっき撮った写真を見つめ、美有は満足げにつぶやいた。
あとでみんなに何処行ってたのとかあれこれ訊かれるけど
言い訳なら後で適当に考えられる。
だから、せめて昼休みの20分間だけ・・・・。
そう願っていたとき。
ガチャ・・・・・・・
屋上のドアが開く音がした。
(・・・・!?誰・・・・?)
美有は思わず隠れてしまった。
いつもは誰も来ないのに・・・・いったい誰?
もしかして、みんなに、この小さな居場所がばれてしまったのだろうか。
教室にいるときの息苦しさが、一瞬よみがえる。
でも、その心配は無かった。来たのは、見知らぬ男子生徒だった。
少しホッとする。でも同時に、びくびくしている自分が嫌にもなった。
入ってきた男子生徒は、美有に気付く様子もなく、ゆっくりと前に出る。
美有はなぜか、そのふらふらとした足つきに、心臓がはねてしまう。
ジ サ ツ ・・・・・・
その3文字が頭に浮かんでしまったのだ。
まさか・・・・・まさか、そんなことは・・・・
あれこれ考えているうちに、美有は頭が真っ白になり、走り出していた。
男子生徒の腕を引く。
「あ、あのっ!そーいうのやめたほうがいいよ!!」
美有が叫ぶと、男子生徒とはっきりと目が合った。
「・・・・・・・・はぁ?」
男子生徒の形のいい瞳が、少しつりあがる。
(・・・・・・・アレ?)
美有はちょっと悪い空気に気付く。
「もしかして・・・死のうとしていたワケでは・・・・・」
「死ぬぅ?何言ってんだよあんた」
美有は顔が真っ赤になる。
「えと・・・・・・ごめんなさ・・・・・」
「ウソ。当たり。」
男子生徒がそう言った。
(えっ・・・・・・・)
美有は男子生徒を見つめた。
よく見たら、整った顔立ちをしている。
坂部友也・・・・
美有は思い出した。
隣のクラスの、坂部友也。
何度か廊下ですれ違ったことがある。
そのたび、美有はこの少年にどこか不思議な雰囲気を感じていた。
話した事は無い。これが、初めてだ。
そうとはいえ、人が死のうとしている現場を見るのは、ショッキングなものだ。
「な、なんで・・・・・・」
美有がそう訊ねたとき、坂部友也はもういなかった。
- Re: そらのむこう。 ( No.2 )
- 日時: 2011/12/01 17:00
- 名前: 笑羅 (ID: NgR/a8mA)
「あーっ美有いたいたー!またトイレー??」
「うん・・・・ごめん」
予鈴はまだなっていないが、美有は教室に戻ったのだった。
あんな現場と出くわした後で、ゆっくり写真をとることなどとてもできない。
「ねー美有!坂部君って知ってる?」
美有の心臓は再びはねあがった。
坂部・・・・・・・
偶然なんだろうか。
「え、えっと・・・・確か隣のクラスの・・・・」
美有はそう答えた。
「そうそう!かっこいいよねー!坂部君!あたし告っちゃおっかな〜!狙ってたんだよね!」
「杏花・・・あんたホント顔しかみてないよね」
「いーじゃん告れば?応援してやんよ!」
アハハハハ・・・・・・
美有も皆と同じように笑う。
でも・・・・
坂部友也・・・・・
あの顔を思い出すと、心臓がなりやまなくなる。
ウソ。当たり。
・・・・・死のうとしていた・・・・・
・・・もし、私があの時、屋上にいなかったら・・・
ゾクリ。寒気が走る。
坂部友也は、何を思って屋上にきたのだろう。
どうしても気になる。もう一度だけ、話したい。
その日の放課後、美有は隣のクラスに直行した。
誰もいない教室で、一人、窓辺を見つめている少年がいた。
坂部友也だった。
「えっと・・・・・坂部友也くん。」
「・・・・・」
美有が声をかけても、友也は無言だった。
「・・・・・ちょっと来て!!」
そんな友也の腕を、強引に引っ張り、屋上まで連れて行った。
「アンタ、昼休みの・・・・・何のよう?」
「そ、そのことなんだけど・・・・。死なないほうがいいです。」
「はぁ?アンタに関係ないだろ」
確かに関係は無い。でも・・・・
「自殺未遂の現場見ちゃったらおとなしく過ごせないっていうか・・・・」
「だからってなぁ・・・」
「あっ、あのあのっ 見て欲しいものがあるんですっ」
美有は、そう言って友也にケータイで撮った空の写真を見せた。
「・・・・・・空・・・?」
「うん。空ってさ、同じ表情の写真は二度と撮れないじゃん?そう考えると、この写真一つ一つって、すごく貴重に思えない?」
美有は必死で友也に伝える。
空は同じ表情を二度としない。
それが、みんなに合わせていつも同じ顔ばかりしている自分にとって、とても羨ましかった。
美有が空を撮り始めた理由だった。
「だから坂部君も、ちゃんと空を見上げてみ・・・・」
「つまり空ヲタク?」
美有の言葉を、友也がさえぎった。
「えっ、ヲタ・・・・?」
「フッ。冗談。でもそうだな・・・俺も熱中できるなにかを見つけていれば、こんなことにはならなかったかもしれない・・・」
友也はゆっくり空を見上げる。
ひやりとした風が頬に当たる。
「知りたいか?・・・俺がなんで死にたいのか・・・・」
友也が美有を見つめる。
「・・・理由なんて無いよ。死にてぇから死ぬ。・・・それだけ。」
友也はそういって少し笑う。
(理由が・・・・ない・・・?)
予想外の答えに、美有は呆然とする。
「そ、それでも・・・・死ぬのなんて・・・よくないです・・・・」
救いたい。
美有はそう思った。
目の前にいる人を救えるのなら・・・・
「なら、さ、空の写真いっぱい撮ろうよ!そしたらきっと気持ちも変わるかも・・・」
美有は友也に笑いかけてみる。
友也はだまって立ち上がった。
「ま、気が向いたらな・・・・」
そうつぶやき、屋上を後にした。
「・・・・・・・」
私の思い、ちゃんと伝わったんだろうか?
屋上に一人残された美有はぼんやりと思う。
空を見上げる。
厚い雲が、空一面を覆っていた。
- Re: そらのむこう。 ( No.3 )
- 日時: 2011/12/02 16:50
- 名前: 笑羅 (ID: NgR/a8mA)
昼休み 美有はいつものようにそっと教室を抜け出した。
いつもなら、屋上へ続く階段を踏みしめるたび 心が軽くなる。
しかし今日は違った。
教室にいるときの息苦しさとはまた別のものを感じていた。
友也がここに来てくれる事を願っていた。
死ぬためではなく 空を見上げるために。
でも・・・・そんなの無理だったんだね。
こんな弱虫の私に 人の命なんて救えるはず無かったんだ。
誰もいない屋上を見て、美有は思う。
「ホントに・・・死んじゃうのかな・・・・」
「誰が?」
後ろから声がする。
「だから坂部・・・・・え?」
美有は後ろを振り返る。
「俺、生きてるけど。」
ケータイを片手に、坂部友也が立っていた。
「来てくれたの!?」
「でも、考えが変わったわけじゃない」
友也はぶっきらぼうに言ってケータイを空に向ける。
カシャ・・・・
美有のケータイと同じシャッター音だった。
「俺も空ヲタクになってみようかなって思っただけ。どーせ死ぬなら何かをやり通してから死にてぇし」
「なっ・・・・だからヲタクじゃないって・・・ば」
ふと美有は友也のケータイに目をやる。
「・・・・坂部君・・・・なかなかの腕前だね」
「は?」
「いい写真撮るねって褒めてるんだよ」
「これが?ま、ヲタクが言うんだから間違いねぇかもな」
そう言って友也はケータイを閉じた。
美有は少し嬉しかった。
少しでも、友也が自殺を思いとどまってくれたなら、それでいい。
きっと、空の写真を撮り続ければ、前を向いて進んでくれるだろう。
「・・・・美有、ニヤニヤしすぎ。」
「ほほーぅ、さては何かあったか?」
放課後、グループの友人に詰め寄られる。
「えぇっ!?なにもないよぉ〜」
美有はおどけた感じで言ってみた。
「またまた〜ぁ。うちら最近恋バナ多いんだよ。だからぁ、そういうのはすぐ見破っちゃうわけ。」
「そーそー。美有がいない間に話は進んじゃってるよ?」
「そうなんだ・・・・」
恋バナか・・・誰かの悪口じゃないんだね。
心の中でそうつぶやく。
「で?実際どうなの?好きな人でもいるの?」
「えーっ!何でうちらに黙ってんのさー!!」
友人たちは盛り上がる。
「違う違う!好きな人なんていないよ〜!みんなといるほうがダンゼン楽しいし!」
「美有・・・・・心の友よ!」
友人がみな美有に飛びついた。
みんなといて、久しぶりに、楽しいと思える。息苦しくならない。
久しぶりだった。
でも・・・・つかの間の幸せだった。
「・・・・んでさぁ、話変わるんだけどさぁ、美有もちょっと聞いてよぉ!2年の森ってやつマジウザくってさぁ〜」
グループのリーダー的存在の杏花が話を変えると、話題はすぐに悪口に切り替わった。
みんなといるほうがダンゼン楽しい・・・・か・・・。
小さな嘘をついてしまった。
美有はそう思った。
- Re: そらのむこう。 ( No.4 )
- 日時: 2011/12/03 14:27
- 名前: 笑羅 (ID: NgR/a8mA)
「あれってさ、みんな友達なの?」
昼休み、屋上でふいに友也に聞かれる。
「お前のそばにいる女子みーんな」
「えっ?・・・そ、そうだけど・・・・・なに?」
突然関係ない話題を持ち出され、美有は少し面食らった。
「ふーん・・・お前、友達多いんだな」
「そうだね・・・・多い、かな。」
美有は独り言のように呟いた。
美有のグループは クラスの中でも一番目立つグループだ。
それは多分、リーダー的存在である杏花のおかげだ。
杏花は気が強くて、気に入らないものはつぶさないと気がすまないタイプだ。
杏花を、クラスメイトはもちろん、先生すらも恐れている。
そんな杏花のグループに、なぜ自分が入る事ができたのだろう。
「でもまぁ・・・多ければいいってもんじゃないよ。」
哀しげに微笑む美有に、友也が言った。
「聞いてやってもいいぞ。悩んでるんだろ?そいつらのことで」
「え・・・・」
「そういうのためこんでると 俺みたいに自殺しかねないぞ」
美有は一瞬迷った。
言うと、悪口になっちゃうんじゃないの?
・・・・・みんなと同じになっちゃうんじゃないの・・・・?
そんな心の葛藤が、美有を悩ませていた。
でも・・・
「実は・・・・」
美有は話し出していた。
なんとくなく、友也にはすべてをうちあけることができそうだった。
「ふーん・・・・なるほどね」
全てを打ち明け、美有はいくらかすっきりした。
「お前も大変なのな。」
「まぁね。」
少しすまして言ってみた。
「あいつらにも教えてあげりゃいいじゃん。空のこと。」
「・・・そういうわけにもいかないよ・・・」
本当は杏花たちにも教えてあげたい。
でも・・・
「もし杏花に逆らったりしたら、ヤバいんだよ?」
「でも・・・そんなの友達じゃないじゃん」
「・・・・うん。」
美有は素直に認めた。杏花は友達じゃない。
上辺だけの友情だ。
分かっていた。自分は、卑怯だ。弱虫だ。
居心地は悪いが、杏花に目をつけられ、孤立するより、ずっとマシだ。
そんな考えが、いつも頭の片隅に存在する。
「だから、空が羨ましいんだ・・・・」
美有はそっと空を見上げた。
初めて、誰かにこの話をした。
「・・・・まぁ、俺はもうすぐ空に行けるけどな。」
「・・・・えっ?ごめん、よく聞こえなかった。」
友也の呟きは風にかき消された。
「今は聞こえなくていいよ」
「えーっ 何それ。教えてよー」
美有は冗談っぽく友也に言った。
友也は哀しげに微笑んでいた。
ドク・・・
その表情を見て、胸騒ぎに似た感情が込み上げてくる。
やっぱり、坂部君って、ちょっと不思議だ。
改めてそう思う。
「じゃあさ、学校サボるか?」
「・・・・・・・・・え?」
突拍子のない友也の言葉。
「な、何言ってんの!?」
「一日ぐらい好きなことして楽しんでみたらいいじゃん。空の写真ツアーみたいな。」
「・・・・坂部君って意外とアホなんだね・・・」
「アホじゃねぇし・・・」
本気で言ってるのだろうか。
「つーかサボリじゃなくて旅!これならどう?」
友也がひらめいたように言う。
「いや・・・・結局サボりじゃん」
「何?じゃ、空ヲタクさんははそんな学校に無理していくわけ?」
ドキッ。美有は戸惑った。
行きたくなんて・・・ない。
「うん、じゃ、決まりな」
「え゛!?」
美有は思わず戸惑いを声に出して答えていたのだ。
こうして、空の写真ツアーに行く事になった美有だった・・・。
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