社会問題小説・評論板
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- 1年B組の悪魔 「コメ・アドバイス下さい!」
- 日時: 2012/08/19 21:46
- 名前: テントウムシ ◆uyBOASgJA6 (ID: .uCwXdh9)
こんにちは、初めまして。
小説は初書きのテントウムシです。
いじめ関連のお話を書こうと思ってます。
舞台は中学校です。
中傷などはご遠慮ください。
コメや意見などは大募集です!ぜひしてください!
『目次』
プロローグ>>1
第一話>>2
第二話>>3
第三話>>4
第四話>>5
第五話>>6
『名簿』
女子
1番・浅田 葵 Aoi Asada
2番・天宮 帆花 Honoka Amamiya
3番・五十嵐 結衣乃 Yuino Igarasi
4番・遠藤 光璃 Hikari Enndou
5番・岡田 知子 Tomoko Okada
6番・片岡 めぐみ Megumi Kataoka
7番・木下 ココ Koko Kinosita
8番・小石 李緒 Rio Koisi
9番・笹原 美織 Miori Sasahara
10番・清水 愛 Ai Simizu
11番・須藤 祥子 Syouko Sudou
12番・立川 茜 Akane Tatikawa
13番・戸川 桃子 Momoko Togawa
14番・難波 亜美 Ami Nannba
15番・萩野 ねお Neo Hagino
16番・船川 陽奈子 Hinako Hunakawa
17番・南沢 菜々希 Nanaki Minamisawa
18番・柳田 佳代 Kayo Yanagida
男子
30番・安藤 将 Tasuku Anndou
31番・相沢 啓介 Keisuke Aizawa
32番・歌津 命 Mikoto Utatu
33番・恩田 悟 Satoru Onnda
34番・霧月 礼二 Reiji Kirituki
35番・小林 泰治 Yasuharu Kobayasi
36番・佐々木 航 Wataru Sasaki
37番・園田 俊 Syunn Sonoda
38番・高久 悠太 Yuuta Takaku
39番・中沢 陽太 Youta Nakazawa
40番・花井 徹平 Textupei Hanai
41番・牧野 広夢 Hiromu Makino
42番・宮浜 海斗 Kaito Miyahama
43番・林道 遥 Haruka Rinndou
44番・渡辺 大吾 Daigo Watanabe
担任・堀川 美穂 Miho Horikawa
教育実習生・波多辺 結 Yui Hatabe
- Re: 1年B組の悪魔 ( No.1 )
- 日時: 2012/08/05 17:46
- 名前: テントウムシ ◆uyBOASgJA6 (ID: 96KXzMoT)
プロローグ
「波多辺 結です。3週間よろしくお願いします」
私は33人の中学1年生たちに、お辞儀をしながら言った。
いっせいに拍手とあどけない笑みが、私へと向けられる。
皆が同じようにキラキラした表情をもった、今どきの中学ではなかなか見られない光景だ。
(さすが星麗学園の子供たちだわ……!)
私は思わず心の中で呟いた。
ここは星麗学園という名の、勉強で有名な私立中学校。
有力者の子供の割合も高く、中でも不思議な威圧感を放っているのは現在内閣総理大臣の浅田誠の一人娘である浅田葵だ。
いつもニコニコしていて、見ているだけでは何を考えているかわからない。
私はそんな彼女の通う学校に、教育実習生としていくことになった。
担当クラスは1年B組。
担任の堀川美穂先生も優しそうでよかった。
「結先生!好きなものは何ですか?」
「彼氏いますか?」
「何歳ですか?」
飛び交いまくる質問も、中学生としては珍しい。
皆笑顔で私に言葉を交わしてくれる。
ああ、なんていいクラスなんだろう。
- Re: 1年B組の悪魔 ( No.2 )
- 日時: 2012/08/13 20:32
- 名前: テントウムシ ◆uyBOASgJA6 (ID: .uCwXdh9)
【第一話】船川陽奈子SIDE
「はい、お水だよ♪」
楽しげな浅田さんの声が、私の頭の中に響いてくる。
目の前には掃除用の雑巾を洗って茶色くなった水が、バケツいっぱい出されていた。
臭いも見た目も、人間の体内に入っていいっものじゃない。
鼻をふさぎたくとも、地面に押し付けられている私には何もできず、その汚臭に吐き気さえしてくる。
どこをふいたらそうなるの!?
「ほら!飲みなよ!」
取り巻きの女の子たちが、私のこげ茶のセミロングを引っ張り上げる。
皆にやにやと意地悪そうな笑みを浮かべて……私を助けようとする人は誰もいない。
女子も男子もそれは同じ。
1年B組は、浅田さんの独裁国家だ。
総理大臣の娘である浅田さんに逆らえる人なんていない。
初等部の後半あたりから、クラス全員で内密にかつ盛大に『いじめ』が行われていた。
もちろん、浅田さんを筆頭に。いじめを始めたときはまだ、総理大臣の娘じゃなかったのにな……。
私、船川陽奈子は、今年に入って二人目のターゲットに選ばれてしまった。
理由は簡単。
もともといじめられていた戸川桃子を助けてしまったから。
助けてたって言ってもそんなかっこいいことはしてない。する度胸なんてない。
ただ追い掛け回され疲れていた彼女に、水をあげたってだけ。
たったそれだけがばれて、ターゲットは私に変わった。
今まで仲良く話していたはずのみんなが、途端に悪魔のように変わってしまった。
当の戸川桃子も教室の隅で震えているわけではなく、私にあの茶色い水を飲ませようとしている。
他のクラスの人も先生もいじめの存在に気づいてないから、助けを求めるわけにもいかない。
さっき挨拶をしていた教育実習生だって、いいクラスだなとしか思ってないだろう。
まさに地獄だ。
「飲まないの?仕方ないなぁ……」
浅田さんは少し黙ると、チラリと自分の幼馴染である宮浜君を見た。
宮浜君はにっこりと笑って見せる。
誰もが好む、太陽のようなほほえみ。
彼の紺色の髪が窓から入る風に揺れた途端、窓側にいた歌津君が窓をぴしゃりとしめた。
そして宮浜君は優しげな表情のまま私に近づくと、バケツを持ち上げた。
バシャッ!
私の上でひっくり返す。
ぽたぽたと茶色い雫が、私の髪の毛や頬を伝った。
「やだぁ、きったなーいっ」
笹原さんが甲高い声で、わざとらしい悲鳴をあげる。
周りの女子は憐みの視線をむけつつ、くすくすと笑っていた。
「陽奈子ちゃん、制服びしょびしょだね。着替えたほうがいいよ」
浅田さんが私に手を伸ばす。
「いやっ」
私は思わずその手をはらってとびのいてしまった。
クラスメートがざわつき始める。
やっちゃった……
はたらかない私の頭でもこれくらいわかる。
浅田さんの手をはたくなんて、死刑並みの重罪だ。
浅田さんは赤く晴れた自分の手をさすり、私を見つめた。
大きな二重の瞳を細め微笑むその姿は、私の中では不気味にしか映らない。
腰まである長くきれいな黒髪も、ただただ今は怖いだけ。
私は思わず教室を飛び出した。
「あ!船川逃げたぞ!」
「捕まえろ!」
私へ向けられる鋭い声が、まるで背中に突き刺さるように痛い。
「くっ……うぅ」
心が苦しみの声を上げたとき、涙が形となってこぼれた。
どうしてこんな思いしなくちゃいけないの?
私はなにも悪いことなんてしてないはずでしょ?
どうして皆変わっちゃうの?
友達だったんじゃないの?
全部全部浅田さんがいけない!
彼女が女王様なかぎり、私は一生このままだ。
浅田さんなんて……
イナクナッチャエバイイノニ。
- Re: 1年B組の悪魔 ( No.3 )
- 日時: 2012/08/07 23:09
- 名前: テントウムシ ◆uyBOASgJA6 (ID: 96KXzMoT)
【第二話】恩田悟SIDE
また始まった……
俺は心の中で呟いた。あくまで心の中で。
4時間目が終わり昼食の時間も終わると、堀川先生は教室から出ていく。
教育実習生の波多辺ちゃんも、そのあとについて職員室に向かった。
職員室は2階の端っこにある。このクラスは5階の真逆側。
隣にはA組があるけど、星麗学園は変なとこまで防音が極められていて例え隣のクラスでも、声なんてほとんど聞こえない。
なんで防音なのかって?
さあ……元が音楽学校だったからじゃない?
詳しいことは俺も知らない。
まあとにかく、先生がいなくなると始まるわけだよ。例の『あれ』が。
今日も波多辺ちゃんがいること以外はいつもと同じ光景だ。
浅田の人が変わるとか……そんなことは思わない。
彼女はいつも通りだ。
優しくて
可愛らしくて
上品で
友達思い
そんな女の子をいつも通り『演じている』
『演じる』という行為をしながら、『あれ』のほうも実行するんだ。
今日はまたひどかった。
もはや茶色く濁った水を戸川がバケツいっぱいにくみ、それを船川の前においたんだ。
飲めという畏怖の念を込めて。
浅田と常に行動を一緒にしている宮浜が、彼女の『命令』で動いたときに、命が窓を閉めた。
さすがに窓が開いていたら、防音じゃなくなるとでも考えたのかもしれない。
だったら命がしめることもうなずける。
悲鳴だか叫び声だかが漏れれば、今までやってきたこともダダ漏れだからさ。
でもこれは、浅田が『命令』したわけじゃない。勝手に命は閉めたんだ。
アイツの『窓を閉める』という単純な行為を見たとき、俺正直思ったんだ。
あーあ……汚染されてるなって。
気づいてもらえればそれですべてがすむはずなのに、クラス全員で証拠隠滅の道を歩いてる気がする。
……でも、
俺もまた、たくさんの傍観者の一人にすぎないんだけど。
- Re: 1年B組の悪魔 ( No.4 )
- 日時: 2012/08/09 23:59
- 名前: テントウムシ ◆uyBOASgJA6 (ID: .uCwXdh9)
【第三話】波多辺結SIDE
「結先生……。私ここわからないんです。教えてもらえませんか?」
放課後、鈴の音のような綺麗な声に振り返ると、教室の入り口に浅田葵が立っていた。
テレビで見たことあるし今日も会ったけど、本当に可愛い。
白い頬に桃色の唇。
目はぱっちり二重で、長くサラサラの黒髪。
星麗学園のピンクのセーラー服が、とてもよく似合っていた。
彼女は小さな手で、数学の教材を抱えている。
「いいよ。どれがわからないの?」
私はにっこり笑って、供託から一番近い岡田さんの席に座った。
浅田さんも、私の向かい側に腰を下ろす。
そして教科書を開いた。
「えっ!?」
それを見て、私は思わず声をあげてしまった。
並ぶ数字の中に、たくさんのアルファベットが並んでる。
中学一年生レベルとは思えなかった。
「すごいね……!もうこんなの解いてるんだ!」
目を白黒させる私に、浅田さんは遠慮がちな笑みを見せる。
そしてその後、質問を挟みながら問題を解いていった。
「浅田さん、全問正解だよ!」
答えに丸を付けながら私が言うと、浅田さんはパッと顔を輝かせる。
その時突然、ガラガラッと教室の扉が開かれた。
「葵〜?」
のんきな声とともに、少年がひょこっと顔を出す。
日焼けした健康的な肌に、紺色の髪が特徴的な宮浜海斗だ。
彼もまた大病院の院長の息子で、いわゆる天才と先生方は言っていた。
「勉強終わった?」
「うん!今ちょうど……」
宮浜君の言葉にうなずいた浅田さんは、ハッとして私のほうを見た。
「私たち幼馴染なんです!だからっそのっ」
赤面し、両手を振り回して説明する。
私はなにも言ってないのにな。純粋って感じ。
「宮浜君は勉強しなくていいの?」
私は天才と知っていながら質問してみた。
「ま、なんとかなるっしょ」
宮浜君はそう言いながら、ぺカッと笑った。
浅田さんとは真逆で、太陽の陽だまりのようだった。
「あの、教えてくださってありがとうございます。私は今から馬のおけいこがあるんで」
「馬!?」
浅田さんの言葉をほぼ無視し、私は彼女の言ったおけいこ内容を大声で復唱した。
馬って……あの馬?
「浅田さんいくつ習い事してるの?」
馬やってるくらいだから、いっぱいすごいの出てきそうって思って、私は浅田さんに聞いた。
「えっと……」
浅田さんは右斜め上に目を向ける。
「月曜日に生け花、火曜日に塾とそろばん。水曜日に馬術、木曜日に塾、金曜日に剣道、土曜日に書道とそろばん、日曜日に剣道です」
……休みがない。
中学生の日常としてどうなのこれ……
「疲れたりしない?」
心配になって言うと、
「ストレスってことですか?」
と、キョトンとした様子で聞き返された。
うなずく私に、浅田さんはニコッと音が鳴りそうな笑みを見せる。
「大丈夫ですよ。学校でちゃんと発散して」
「葵!」
意味ありげな浅田さんの言葉に、宮浜君がするどい声をかぶせた。
普段のヘラヘラとした様子を思わせないほど怖い表情で。
しかしすぐにキュッと目を細めて
「帰ろう。はやくしないと遅れちゃうよ」
と笑い、浅田さんの白い腕を引っ張っていった。
浅田さんは天使のような柔らかな微笑みを浮かべ、
「さようなら」
と、言った。
二人の姿が見えなくなった頃、私は浅田さんの台詞を思い出していた。
あれはどういう意味なんだろう。
学校に来て友と会うことが、ものすごく楽しいということか。
だけど宮浜君の態度も気になる。
「明日……また聞いてみればいいか」
私の言葉は、暗い校舎にに吸い込まれて消えていった。
- Re: 1年B組の悪魔 ( No.5 )
- 日時: 2012/08/13 19:40
- 名前: テントウムシ ◆uyBOASgJA6 (ID: .uCwXdh9)
【第四話】笹原美織SIDE
葵は頭がいい。
さすが総理大臣の子供って言えるくらい。
噂じゃ高校生の問題も、簡単に解けるって話。
そんな葵だから、ふつう考えないような遊びを考え付く。
葵の考えたそれは、想像を絶する面白さだった。
私はもともと強気なタイプだけど、弱い者いじめなんてしたことがなかった。本当よ?
でも……きづいたんだ。
それの、面白さに。葵のおかげで、ね。
「……っ、もう いやぁ……!」
私、帆花、ねお、桃子の目の前でしゃがみこんでいる船川が、しゃくりを上げながら涙をこぼした。
彼女の服ははだけていて、傷だらけ。
ちなみに場所は更衣室で、私たちは携帯をカメラモードにしていた。
ここまで言えば、何をしていたか想像がつくでしょう?
葵は更衣室のはじにあるベンチに座っている。
ニコニコと無邪気で可愛い笑みを浮かべて。
葵は基本的にいじめには参加しない。
それは当たり前。だってどこの国でも指導者は命令を下すのが仕事でしょ?
葵はただ楽しんでいればいい。
どうしてメインのいじめメンバーに、元いじめられっこがいるかって?
それが葵の決めたルールだからよ。
葵は、その時もニコニコしながらこう言った。
『あのね、このルールは絶対に守ってほしいの。それは……この遊びからは解放された人は、必ず私の傍にいてね」
一見穏やかな台詞。
でもこれは仲良しとか友達とか、そういう単語は一切通じない、彼女の中の秩序。
一度いじめられた人間は、その苦しさを知っている。
先生たちは信じないと思うけど、もしもいじめのことを話されたら困るでしょ?
俗にいう熱血教師ってのもいるかもしれないし。
だから葵は見張ってるの。
いじめという罪を犯させるの。
このクラスの地獄に誰も気が付かないように。
「さ!それとんな」
私は船川に目を向け、彼女の上半身の下着を指さした。
途端に船川の肩はびくっと動き、桃子が私を見つめた。
ねおは「いーねぇ!」と他人事のように笑っている。
私にとっても皆にとってもただの遊びだものね。
「い……やだっ!」
船川は自分を抱くように体を丸め、震える声で叫んだ。
目からこぼれおちる雫は、心なしか大きくなっている。
「おいっ脱げよ!!」
「帆花ちゃん」
帆花が船川の服につかみかかった瞬間、葵が音を立てずに立ち上がった。
いつもの天使のようなほほえみを作り、小さく口を開く。
「もうやめてあげなよ」
そして優しげな口調で言った。
帆花は大きなその瞳をさらに大きくして、ためらいながらもその手を離す。
「陽奈子ちゃん」
葵は突然船川に呼びかけた。
船川は青ざめてしまった顔を彼女に向ける。
葵は一瞬笑顔じゃないような気がしたが、再びニコッと音が鳴るような笑みを見せた。
目は笑ってない。
「携帯かして」
「……!」
葵の言葉に、船川はフルフル頭を振った。
こげ茶色の髪が左右に揺らめく。
「はやく」
葵は静かに言い放った。
船川は怯えたように肩をすくめ、水色の携帯を差し出した。
折れるのはやいな……。
まあ仕方ないか。結局誰でも無理よ。
「美織ちゃんも」
今度は私に携帯を要求する。
「ん」
私は平然と手渡した。
葵は私の携帯のデータフォルダを開く。
一番最初に出てくるのは、船川の半裸写真だ。
そしてそれを、赤外線で船川の携帯へと送った。
次に船川のアドレス帳の欄を開く。
葵はたくさんの名前の中にある、一人の名前のところで指を止めた。
……功刀亮介?
隣のクラスの人だ。確か……
「功刀君って、陽奈子ちゃんの幼馴染だよね?」
葵の問いに、船川は返事をしない。
床に視線を向け黙っている。
葵は気にせず言葉をつづった。
「彼にイタズラしちゃおっじゃな〜」
そう言って柔らかい笑みを浮かべると、アドレス欄から新規メール作成ボタンをおした。