社会問題小説・評論板
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- 秘密の遊び。【夕凪☆゛と空は同一人物だったw】
- 日時: 2013/03/25 17:07
- 名前: 空 ◆JGlOo5d1iU (ID: Re8SsDCb)
初めまして。
空(くう)と申します。
*ルール*
・小説カキコのルールに反する行為はしないでください。
以上です。
- Re: 秘密の遊び。 ( No.2 )
- 日時: 2012/09/15 14:10
- 名前: 空 ◆JGlOo5d1iU (ID: Wz/uC4rR)
*プロローグ*
桜舞う4月の空を見上げ、不意に流した涙。
私は今日から未知の世界へ飛び込むのです…。
- Re: 秘密の遊び。 ( No.3 )
- 日時: 2012/09/15 14:34
- 名前: 空 ◆JGlOo5d1iU (ID: Wz/uC4rR)
「初めまして。桜庭 李磨です。よろしくお願いします。」
と、簡単な自己紹介を済ませ、私はとっとと席に座った。
そう。今は4月。
新しい学年の始まり…。
そして、新しい生活が始めるのです。
「大場 心優です。」
「榊 莉音です。」
「直木 隼です。」
「杉林 蓮です。」
—————…。
クラスメートが次々と自己紹介を済ませる中、私は必死で全員の名前と顔を覚えようとしていた。
中学生になった今。
もうあの頃みたいにいじめられたくはない。
絶対に…。
私はそう繰り返して口にしていた。
——時はさかのぼること2年前…——
「ねぇ…岬ちゃん…。遊ぼうよぉ…。」
「…。」
「ねぇってばぁ…雄太くん…話そうよぉ…。」
「…。」
「ねぇってばぁっ!!!!!!!!!」
私はクラスメート全員に無視されていた。
終いには…先生も、知らないフリをした。
————————————————————————————————
そして、今に至るわけで…。
「——————…さん?」
「————…らばさん…?」
「桜庭さん!!」
「ハイ!!!!」
私は驚いて返事をした。
「桜庭さん…出合ってるんだよねぇ…?」
そういって彼女は不思議そうに首をかしげる。
「あ…ハイ。」
「よかったぁ。間違ってるかと思ったじゃん。」
そういって彼女は明るく笑った。
「あの…あなたは…?」
「そっか。覚えてもらってないか。大場 心優。みいって呼んで?」
「あ…ハイ…。」
「ねぇねぇっ!!桜庭さんの名前、李磨だよねぇ?」
「はい…。」
「りまって呼んでもいい?」
「もちろん…。」
私は抑えきれない喜びでつい口角が上がった。
「りまってさぁ、ケータイ持ってるの?」
「あ…はい!!」
「あのねぇ…そろそろ敬語じゃなくってもOKだよ。固苦しいじゃん。
タメ語で全然OKだから!!」
「あ…は…うん!!」
「あ、そんでね?メアドと携番交換しよ!」
「うん!!」
私の買ってもらったばかりのケータイに初めての『みい』という名前が表示された。
「いつでもいいからメールしてよね。じゃっ!!」
と言って、足早に去って行く心優…。
それを見ながら、私は『みい』と表示されたケータイを握りしめ、喜びを噛み締めていた。
- Re: 秘密の遊び。 ( No.4 )
- 日時: 2013/03/25 17:10
- 名前: 空 ◆JGlOo5d1iU (ID: Re8SsDCb)
私…初めて声かけられちゃった…。
≪夜≫
「「♪〜♪♪〜♪〜」」
電話…。
ケータイが鳴った。
「ハイ。もしもし。」
『あぁ、りま?あたしだけど…。』
…?『あたし』?
『わかんないか…。あたしだよ。今日携番交換した心優!!』
「あぁ…みいちゃんかぁ…。」
『今出てこれる?』
「あ〜…微妙…。」
『親が厳しい?』
「うん…。」
『嘘ついてでもいいからサ、来てくんない?』
「あ…うん…。どこに?」
『駅の近くのソーロン。』
「わかった。じゃ。」
「「ガチャッ」」
初めての電話…。
私の心はふわふわしていた。
!!ってそんなこと言ってる場合じゃない!!
『嘘ついてでも』…かぁ…。
でも…明日からいかなかったことが原因でいじめられたりしたらっ…。
よし…決めた。行こう。
「「タンタンタンタンタン…」」
私の階段の下りる音と、お母さんたちが見ているテレビの音しかしない家の中…。
「お母さん…お父さん…。」
「なんだァ…まだ起きてたの?今日は疲れたっぽかったからもう寝てるかと…。」
「ねぇねぇッ!!あのね、友達がっ…宿題を…教えてほしいんだって!!
だから…今からその友達の家に行っても良い?」
私は生まれて初めての親に嘘をついた。
「「ギュッ…」」
私の握りしめたこぶしは汗ばんでいた。
「良いわよ。ね?お父さん?」
「うむ。遅くならんようにな。」
あ…生まれて初めてのウソ……成功してしまった…。
「ありがとっ!!行ってきます!!」
李磨はかばんを手に取り、急いで靴を履いた。
『新学期早々…宿題かぁ…大変ねェ…。』
『うむ。でも、友達ができたようでよかったじゃないか。』
『そうですね。』
小さく聞こえる両親の会話…。
李磨は、耳を塞ぎ、「ごめんなさい」と言いながら、走って駅前の某コンビニ店に向かった。
「お待たせっ!!」
「来てくれてありがとう。」
「あの…その…人たちは…?」
心優の周りには、見知らぬ女の子たちが3〜4人並んでいた。
「同じクラスの子。右からリサ、実柚(みゆず)、沙羅(さら)。」
「よ…よろしくお願いします…。」
「なぁ〜にこの子キョドっちゃってんの?タメなのにサ。」
リサと呼ばれる子がそう言った。
「そんなことよりサ、今日はこのコンビニ攻めんの?」
実柚という子がそう言った。
「そ。あたしはコスメ攻めっから、アンタらは食品とか、雑貨系よろしく頼む。」
と心優が言った…。
アレ…?学校の心優と違う…。
李磨はそう思った。
確かに、学校ではどっちかっていうとマジメっ子のイメージだったが、今はメイクもして、服もギャルっぽい…正反対な感じだった。
「よし!!やるか!!」
沙羅と呼ばれる女の子が声をかけた瞬間、みんな一斉にコンビニmに入っていった。
一人取り残された李磨は、最後のほうにコンビニに入っていった心優に声をかけた。
「あの…やるって…何を?」
「決まってんじゃん。万引きだよ。」
ま…………万引き——————————————————————…?
- Re: 秘密の遊び。 ( No.5 )
- 日時: 2012/09/22 15:56
- 名前: 空 ◆JGlOo5d1iU (ID: RCkZ3Tkz)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode=view&no=15796
「まっ…万引きなんて…ダメだよっ!!」
私はあわてて心優たちを止めようと腕を強くつかみ言った。
「ハ?何言ってんの?やらなきゃ明日からアンタはウチらのグループに入れてやんないから。」
「えっ——————…?」
李磨は強く心が揺れ動いた。
今ココで万引きをしなければ、私は明日学校で独りぼっち…。
『ヒトリボッチ』…。
李磨は過去の記憶を思い出し、耳を塞いだ。
「ぃゃ…嫌だ…もうあんな思い…嫌だ…。」
李磨はそう小声で呟き、あることを心に決めた。
「みいちゃん…。」
「なに?」
「私…やるよ…。」
「そう来なくっちゃあ!!」
心優の顔は一瞬にして明るくなった。
「みんな聞いて——!!今日から、この子、ウチらの仲間だから!!」
『オッケー!!』
『ヨロー!!』
『りま…だったよねぇ?』
店に入ろうとしている心優の友達…いや、もう李磨の友達が返事をした。
李磨は嬉しくてこぼれそうな涙をこらえ、みんなのもとに駆けて行った。
≪店の中≫
「りま、お前はまだしたことないんだろ?」
「うん。」
「じゃあ外で見張ってろ!!バレそうになったら携帯に連絡しろよ。」
「うん。」
実柚がそう言って、自分と沙羅の携番を李磨の携帯に登録した。
新しく増えた『リサ』『沙羅』ケータイに表示された名前。
李磨は喉の奥がジ——ンと痛くなるほどの喜びを感じた。
「じゃ、ウチらは行って来るから。」
「うん。がんばってね…。」
私は両手でこぶしを握り、3人の成功を祈る半面、親への罪悪感も感じ、汗をかいていた。
「たっだいまぁ〜!!」
あれから何分経っただろうか。
心優の元気な声が聞こえた。
「今日は大量だぞぉっ!!」
沙羅がそう言って李磨に盗ったモノを見せた。
「今日沙羅張り切ってたもんねぇ。」
心優がそう言って苦笑する。
「よーっし!!打ち上げしよーぜぃっ!!今日は沙羅のオゴリでッ!!」
と実柚が元気に言った。
そうして李磨は心優らに連れられて、近くのカラオケボックスに入った。
「ね…ねぇ…みんな…いつからこんなことしてるの?」
と李磨が尋ねると、
「いつだろうなァ…もう忘れちった。」
と実柚が返してきた。
「こんなこと…いつまで続けるの…?万引きは…悪い事だよっ…。」
そう李磨が慌てて返すと、
「また?アンタ、いじめられたいの?」
「えっ—————————————…?」
私は言葉を返すことができなかった。
「あんね?よく聞きな。万引きがなかったらね、私ら、出会ってないから。」
そう沙羅が返してきた。
「ハ?」
私は訳が分からず、口をポカンとあけた。
「私ね、もともと2人とそんな仲良かったワケじゃなかったの。
でもね、あるテスト期間でムシャクシャした時期にウチ、妙に何かをしたくなったの。
でもその気を晴らすため、気分転換に出かけたコンビニで可愛いパステルカラーのマニキュア…盗んだの…。
もちろん、盗る気はなかった。でも…勉強ばっかりで醜い自分の姿がガラスに映って…。
…つい盗っちゃったんだよね…。汗だくの手で…マニキュアひとつ…。握りしめて…。」
そう心優が言って、実柚とリサのほうを見た。
「その帰りにね、2人にあったの。
全然仲良かったワケじゃなかったのに、2人を見ると妙に安心して…泣きじゃくっちゃったんだよね…。
恥ずかしい話だけどサ。
そっから私ら、いつメンって感じなの。」
- Re: 秘密の遊び。 ( No.6 )
- 日時: 2012/09/29 15:28
- 名前: 空 ◆JGlOo5d1iU (ID: V7TyzRLy)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode=view&no=15796
「でも…。「でもじゃねぇ!!この子と言いふらしたら、お前どうなるかわかってるんだろうなぁ?」…ハイ…。」
私は心優達に逆らうことができなかった。
『いじめ』…私の一番怖い言葉。
私はいじめはもう一生経験したくないと心に強く願った。
「じゃねっ!!」
「呼び出してゴメンね?また明日!!」
「バイバイっ!!」
そんな明るい言葉をかけられた私は、『今の万引き…本当にあったことなのか。』とまで思い始めた。
たかが一瞬。たかが数百円…。
私はそう自分に言い聞かせ、家まで帰った。
「ずいぶん早かったんだなァ。」
ドアを開けるなりお父さんが来て言った。
「あ…うん。少しだけだったんだよね。」
私はそう苦笑しながら答えた。
そしてそのまま誰とも話さずに階段を駆け上り自分の部屋に入った。
「ハァ…ハァ…。」
うそをつくのがこんなにも苦しいことだなんて思ってもみなかった。
私は静かに涙を流して泣いた。
頬を伝い、膝の上に落ちる涙の滴をただただ見つめ、夜を明かした。
「「李磨ぁ〜朝よォ!!」」
昨夜、一睡もしなかったが、私の意識は通常通りだった。
眠いなんて一回も思わなかった。
「「トントントン…」」
「おはよう。今日は朝ごはんいらないから。」
お母さんに向けてそう言った私は、さっさと準備をし、家を飛び出た。
お母さんやお父さんの顔を見ると、昨日のことの罪悪感で胸がいっぱいになる。
『私は万引きしてないから何も悪くはない。』そんなわけがなかった。
万引きを手伝ったのは事実なのだから———————…。
≪学校≫
まだ教頭しかいない職員室の前を通り、私はまっすぐパソコン室へ向かった。
「『万引き…犯罪』っと…。」
私はヒットしたサイトのあまりの多さに驚いた。
『万引きは犯罪』『窃盗罪』『万引き、見張りも同犯』『セコい』『コスい』『最低な行為』『なんでそんなことするのか理解できない。』
私の頭はおかしくなりそうなくらい痛んだ。
ズキン…ズキンと、私のしたことの罰のように痛んだ。
「万引きってサ、そんな悪いことじゃないよ。」
「えっ?」
振り向くとそこには心優が立っていた。
「だってさ、たかが数百円じゃん。そんな数百円やそこらで見せつぶれたりなんかしないんだから。」
黙って口を結んでいる私を見て、心優は話を進めた。
「私たち、年間いくらぼったくられてると思ってんの?
それ考えたらさ、いいじゃん。少しくらい。今日もやるんだけどさ、来ない?っつか、来なきゃダメだかんね。」
心優はそう言い残すと静かにその場を去っていった。
心優の言葉を聞いて、私の心は少しスッキリしていた。
『万引き』は悪いことじゃないの…?
そうだよ。悪いことじゃないんだよ。
ただ店にある商品に手を出すだけの軽い『遊び』だよ。
そうだよ、『遊び』なんだ。
≪授業中≫
私は万引きの仕方についてのサイトを読み漁っていた。
教科書でケータイを隠し、『万引き 成功方法』を何度も何度も調べた。
そしてその調べたことはノートにまとめていた。
そう。今日、初めての『遊び』を実行するために————————…。
≪放課後≫
「ねぇ、李磨。」
さっそく実柚が話しかけてきた。
「わかってるよ。アレでしょう?今日夜10時とかどうかなぁ?
この辺ではサラリーマンのために遅くまでやってる書店がほとんどだし、昼間より夜のほうが従業員が少ないから、成功確率も上がるし。ね?」
実柚は口をポカンと開けて、私のほうを見ていた。
「ん?なんか用?」
私は聞き返すと、
「いや…昨日あんなに嫌がってた李磨なのに…。」
「私、変わるから。今までの弱虫の私なんかじゃないから。」
私はそう言い切ってから一呼吸おいて静かに話した。
「今言ったこと、ほかの2人にも伝えたほうがいいよね?」
唖然としている実柚を無視して私は続けた。
「『遊び』の手口なら、私に任せてね?」
そう言って私はカバンを手に取り足早に教室から出た。
≪夜≫
「今日も昨日と同じ子に勉強教えなきゃなんないから、行ってくるね。」
私は両親の返事を聞かずに急いで家を出た。
「お待たせ。」
「おぉっ!!全然待ってなんかないよ。」
「早く始めちゃお!!」
「今日は何を盗ろっかなぁ?」
「で?今日の手口は何?」
そう実柚が聞いてきた。
私は初めて人から必要とされたのだ。
嬉しくて、思わず上がる口角を抑えて、私は今日の手口をみんなに伝えた。
「よっし。私はリストバンドをつけて、その中に欲しいものを入れるってワケだ?」
「そ。失敗はあってはならないから、あくまでも慎重にね。」
私はそう念を押して、みんなを店に入らせた。
≪数分後≫
「たっだいまぁ〜!!」
ご機嫌そうなみんなの声を聞いて、私はほっと一息ついた。
「リストバンドの中に入るものは少ないけど、コレ、絶対バレないし、良いかもな。よっし、コレ、続けてこうよ!!」
「いや違う。毎日同じ手口だと。さすがに店側も気付き始める。同じ手口をやっていいのは、最高2回まで。」
私は冷静にそう行った。
「スゲエ…前とは全然違う。別人みたい…。」
心優がそう呟いた。
私は笑って
「ありがとう」
とお礼を言った。