社会問題小説・評論板
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- 罪無き街に接吻ヲ。
- 日時: 2012/10/02 19:37
- 名前: Gras (ID: q0osNPQH)
『 朝起きて 歯を磨き 朝食をとり 家を出て 昼食をとる 家に帰り 夕食をとる お風呂に入って 歯を磨き 就寝 』
—それが常識だといつから知った?
少年は本を片手に祖父に聞いた
「牛さんや豚さんはなんで食べられるの?僕達は食べられないの?」
祖父は肉切り包丁を片手に少年に答えた
「ただの肉が人間様に何ができるというんだ?」
この世界はわからない事だらけだ
少年は本を開く
本の世界は少年のいる世界とはまるで違って輝いていた
少年は本を片手に祖父に聞いた
・・
「じゃあなんで僕達は人間を食べるの?」
祖父は肉切り包丁を片手に少年に答えた
「アレは人間じゃないんだ。いいか?人間というのは私やお前の事を言うんだ。この街の外の奴らは人間じゃない。肉だ。そう肉なんだ。生きるための糧になる大切な肉だ。わかったか?」
少年は顔を少し歪めた
「わからないよ」
祖父は肉切り包丁を振りかざした
人間の 肉が 骨が 砕けて 少年はただ わからないと繰り返す事しかできなくて 全てが崩れそうになった
- Re: 罪無き街に接吻ヲ。 ( No.1 )
- 日時: 2012/10/03 21:42
- 名前: Gras (ID: q0osNPQH)
少年の食卓には毎日肉が並んでた
言い訳程度に野菜が散りばめられていてほとんどが肉料理だった
「今日は上級な肉を買ったんだ。きっとうまいぞ」
祖父は得意げにニヤッと笑いながら肉を口に運ぶ
「お前もいいかげん野菜だけ食べずに、肉も食べなさい
さもないとベスパ様から罰が与えられるぞ。」
少年は無言でフォークを野菜に突き刺す
「そういえばもうすぐで1ヶ月じゃないか。もうやったのか?」
「…一体いつまでこんな事を続けるつもりだよ。おかしいとは思わないのか?」
「思わないね、おかしいのは街の外の奴らの方さ。諦めてしきたりに従うことだな。」
「…ごちそうさま」
少年の名前はグリセ。16〜17歳で読書好きなどこにでもいる少年だ。
生まれた時には既に母も父も亡くなっており血縁者は祖父と兄のみ。
グリセは自分の生まれ育った街に正直うんざりしていた。
ベスパ様とよばれるこの街の神にはルールが2つあった
1、ベスパ様へ毎日赤ん坊の心臓を捧げること
2、5歳以上の人間は1ヶ月に最低一回は狩りをする事
そして主食はもちろん狩ってきた新鮮な肉だ
牛や豚の時もあれば人間の肉の時もある
むしろ人間の肉を食べる方が多いぐらいだ。
「共食いなんてどうかしてる」
いつもの口癖をこぼしながら自室に入るグリセ。
グリセの自室には溢れんばかりの本が並べられている。
幼いころから色んな本を読んできたグリセは明らかに狂ってるこの街から脱出しようと密かに目論んでいた
ベッドに寝そべり横にあった絵本を一冊とって開く
『誕生日おめでとう!今夜はママ特製のバースディケーキとシチューよ!』
『えーん。えーん。牛さんのお肉なんて食べたくなよぅ…可哀想だよぅ』
『私毎日学校が通えて幸せ!家族がいて幸せ!朝昼晩ご飯が食べれて幸せ!あぁ普通ってこんなにも幸せなんだ!』
グリセは絵本を閉じ枕に顔をうずめる
窓の外からは肉を切る音 悲鳴が今日もあちらこちらから聞こえてきて
顔を歪めた
数分ベッドの上でゴロゴロしているとこちらに勢いよく向かってくる足音が聞こえた
「よぉ!!っはよー!今日も元気に鬱ってんのかー!?」
そう言ってズカズカと部屋に入ってきたのはグリセの友人モロだった。
金髪にカラフルな服装でいかにも悪餓鬼の様な姿をしている。
「眠い」
「肉を食え肉を!!今日こそ狩りに行くだろ?」
「眠い」
「こんな本ばっか読んで野菜ばっか食べて…そりゃ眠くなるわ!!
人生損してるぞお前早く起きろって!」
「俺だって嫌だよこんな生活、早く出たいんだよ」
それを聞いたモロは少し間を開けて肩をすくめた
「仕方ないよ、この街に生まれてしまったのが運の尽きだったんだから。今更どうこう言ってもどうせ俺達はここから出られやしないさ」
『どうせ出られない』その言葉の意味はグリセ自身もよくわかっていた
「俺達を人間とは言わないよな。人間が人間を殺して食べるなんて普通じゃない。俺達は…ただの化け物だ。」
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