社会問題小説・評論板
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- ◎月×日 晴天
- 日時: 2012/10/27 20:57
- 名前: 甘味屋 (ID: b9FZOMBf)
◎月×日 晴天
クラスの沢田が自殺した。
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こちらでははじめまして、甘味屋です
痛々しいぼくら大嫌いな中学生の話
- ◎月△日 曇天 2 ( No.2 )
- 日時: 2012/10/27 21:39
- 名前: 甘味屋 (ID: b9FZOMBf)
—女子って本当に怖いよなぁ
か弱く、沢田の遺影に向かってすすり泣きする女子たちを眺め、僕は内心(それこそ口に出す勇気なんてない)でつぶやいた。
思ってないくせに。悲しくないくせに。仲良くないくせに。
あのとき、止めなかったくせに。
一緒になって笑ってたくせに。
よく・・・涙を出せるよなぁ、都合よく・・・
怖。
沢田の死に顔を拝むことはできなかった。
説明はされなかったけど、なんとなく察しがついた。
飛び降りだったから、顔面はもう原型をとどめていなかったからだろう。
グロテスクだなぁ、こうやって生きて動いてる文明の人も、死ねばただの肉なんだ。
残酷な現実だけど、僕らじゃどうにもできないんだろう
沢田の両親が、遺書を読み上げていた。
僕は起きていたけど脳みそが爆睡中だったのでよく覚えていない。
どうせ関係ないんだし。
薄情だって思われてもいい。あとになってゲラゲラ笑う下賎なやつよりはマシだと思うし
くだんない弱虫の言い訳なんか聞いて、いいことなんてあるわけないだろう?
- ◎月▲日 曇天 ( No.3 )
- 日時: 2012/10/28 20:53
- 名前: 甘味屋 (ID: b9FZOMBf)
「死んだってね、沢田さん」
ひどく遠い目をして、僕に話しかける女子がいた。
女子としてはちょっと許せないくらいの短い黒髪の、似合わないスカートを履いた彼女。
僕の友達。 水野葉月。 変わり者で、孤立しているのに虐められたことがない変な子。
「はづちゃんだってクラスメートだろ」
「まぁね でも しゃべったことも 見たこともなかったから」
ひでぇやつ。見たことはあっただろうに。
「飛び降り自殺かぁ、痛かったろうなぁ」
「好きそうだね」
「リアルグロだもんねーでもね、自殺は好きじゃないな 屋上から飛んで、そのまま落ずに滑空できたらいいのに」
「馬鹿なの?」
「本気だよ」
「それは馬鹿って言うんだよ?」
「ううん、ほんとうにね」
こいつだめだ僕の話を聞いていない
葉月は間を空けて、あのへらりとした笑顔を浮かべた
「空飛べたらいいのに」
楽だろうなぁ、なんて付け足して。
あぁコイツは例えいじめられようが殺されかけようがこのヘラヘラした顔をやめないんだろうな
腹が立つわけじゃないけど、なんだろう?
「やだねぇ、どうなっちゃうんだろうねこのクラス」
葉月は唐突に言った。
その言葉の裏には、
[こんどは誰がいじめられるんだろうね?]
という響きが込められているのを僕は知っていた。
- 夢 ( No.4 )
- 日時: 2012/10/30 20:34
- 名前: 甘味屋 (ID: b9FZOMBf)
突き落とすことは楽しかった
あの顔を見るのが好きだった
心のどこかでまだそれが叫んでいることを知っていた
ぼくは弱虫であったのか?
忘れたことさえあった
ただただ何かから逃げるように
僕は他を突き落とし叩き落として生きていた
僕は結局「何」であったのか?
ぼくはそれを知ることができなかった
君が言った
「君はかわいそうだよ」と
意味がわからなくて
君を突き飛ばそうとして
僕は足を滑らせて落っこちた
落ちた、落ちた、落ちた
骨だらけの穴のそこに落ちたところで目が覚めた
- ◎月 ■日 晴天 ( No.5 )
- 日時: 2012/10/30 20:54
- 名前: 甘味屋 (ID: b9FZOMBf)
沢田聖子が自殺して二週間が経った。
矢張りみなさんそれぞれ薄情ものであったようで、一週間経った頃にはもうあの暗い雰囲気も失せていたし、二週間経った今ではもう既に忘れられたかのように新しいイジメが始まっていた。
ターゲットは前までは教室の隅っこで読書していたような地味な女子。
名前は井上梨花。
今現在も教室の奥でリーダー格の篠原友里たちに集団リンチされている。
僕はといえば変わらず自分の席で葉月とお喋りしていた。
「あーぁ。可哀想に」
葉月が彼女たちを見ながらポツリと言った。
何が可哀想なのか?
訊いてみようとは思わなかったけど、不思議に思った。
「女子は怖いなぁ。」
「はづちゃんだって女子だろ」
「私はあーいうのの種類には入らないんだよ」
「あぁそう」
「ねぇ游」
葉月は唐突に、僕の名前をよんだ
「游はさ、もし世界にあーいう人たちしかいなかったらどうする?」
「どういう意味?」
「もしも世界の人全てが、「虐げる側」と「虐げられる側」に分けられてしまうんだったらどうする?」
葉月は、僕の目を見ないでそう言った
いつものようにぼうっとしながら怖いことを言った。
「・・・どうしようかな、人間辞める」
「あははっ游らしー」
「そういうはづちゃんは?」
「んー、どうかなぁ」
「・・・」
葉月は少し考え込んで、
「殺されようかな」
と、笑った
- ◎月□日 晴天強風 ( No.6 )
- 日時: 2012/10/30 21:07
- 名前: 甘味屋 (ID: b9FZOMBf)
「出る杭は打たれるってね…」
水野葉月は一人傍観していた。
残酷なのか幼稚なのか、少女たちの寸劇をわずか離れた場所より観ていた。
止めに入ることもしなければ、加担することもしない。
後々面倒になるのが嫌だからだ。
それに、葉月にとっての周囲とは、自分にとって取るに足らない、小さな劣等種の集まりでしかないからだ。
能無しの馬鹿げた思考回路で、自分の確固たる道を邪魔されてなるものか。
それが彼女の心理。
「最低な世の中…」
見下した目で、窓の向こうを眺めていた。
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