社会問題小説・評論板

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白黒ストーリー
日時: 2013/06/16 22:27
名前: suzuka ◆3p2qsnXqkQ (ID: 8wzITB29)

 ご注意
・荒らしなどの迷惑行為はご遠慮ください
・文才等はございません
・更新は遅いです
・アドバイス、コメントいただけると嬉しいです

 目次
1 >>1 >>2
2 >>3
3 >>4

Re: 白黒ストーリー ( No.1 )
日時: 2013/06/08 14:47
名前: suzuka ◆3p2qsnXqkQ (ID: 8wzITB29)

 1

太陽の光が見えない暗く重い空。鳥が一羽でそこへと消えていく。その姿はとても小さく、しかし羽を広げるととても大きかった。自ら暗闇へと向かう鳥に“不安”というものは存在しないのだろうか。————私には無理なんだ。
「木須野さんだ」
「一人で登校とか寂しすぎ、かわいそー」
哀れみの声は勿論聞こえている。目線も感じている。すべてが私に突き刺さる。回避するすべなどない。
ぽつ。雨が降り始めた。灰色の雲から、大粒の冷たい雫が私へと襲いかかる。傘などは持っておらず、私は無防備なまま歩く。走る気もしない、何もしたくない、学校へ行きたくない。その思いが私の足を止める。
女子生徒が二人、視界に入った。右側で歩く黒髪をポニーテールにしている女子の後ろ姿は見覚えがあった。朋香だ。
「やばっ! 降り出した」
「私傘持ってるから、一緒に入ろう。朋香」
「え、本当? ありがとう」
遠くで聞こえる二人の会話。朋香は“友達”の傘に入り、学校へと笑顔で向かう。その姿は演技だと分かっていても、とても楽しそうで。うらやましかったのかもしれない。————寒い。



下駄箱の中の私の上履きには落書きがいくつか。
もう察しているだろうが、私・木須野美奈はいじめにあっている。主犯は元友達で、クラスのリーダー格の赤石朋香。原因は受験勉強のストレス発散。朋香の志望校はかなりレベルの高い私立高校で、ストレスもたまっていたのだろう。地味な嫌がらせを中心とするいじめが少し前から始まった。
私は落書きを気に留めることなくそのまま上履きを履き、自分の教室へと向かった。雨の音が少しずつ大きくなっていく。窓の外に目をやると、中庭には大きな水たまりがもうすでにできていた。
私はぬれてしまった少し茶色がかった髪の毛をハンカチで軽く拭いてから、教室のドアを静かに開けた。にぎやかで、私が入ってきた事にはまったく気がつかないクラスメイト。
私の席には葉山という男子が座っていた。しかしそれはいじめではなく、彼の友人の席が私の席のとなりなので、私がいない間だけ友人としゃべるために座っていたのだろう。第一、いじめの事をクラスメイト全員が知っているわけではない。ましてや男子だと、私と朋香がもう友達ではなくなった、という事実さえも気がついてないのかもしれない。私が机の前で数秒立ち止まると、彼はようやく私の存在に気がついたのか「悪い」と一言だけお詫びの言葉を口にしてから私に椅子を差し出した。私は何も返事をせずに椅子に座り、読書を始めた。無愛想だと思われただろう。きっと後で私の愚痴を言うのだろう。だが言葉がのどで止まってしまいお礼の一言も言えなかったのだ。つまらない意地や恥ずかしさから、私はただうつむいて読書をしているふりへと逃げたのだ。————ごめんなさい。
校内にチャイムがなり響くと、最近白髪が目立ちだした二十代後半、男の担任が出席簿を持って教室へ入ってきた。朝の学活が始まる。

Re: 白黒ストーリー ( No.2 )
日時: 2013/06/16 20:49
名前: suzuka ◆3p2qsnXqkQ (ID: 8wzITB29)

「今日は国語の多路野先生が休みだから、一時間目は自習だそうだ。今から自習の時に使うプリントを配るから、今日の朝学活はこれをします」
担任が最前列の生徒に何枚かのプリントを渡し、その生徒が後ろへとプリントを渡す。そうやって、最後列の私のもとへとプリントがまわってくるのだ。しかし、いつまで待ってもプリントはまわってこない。それは私の前の席に座っている朋香が私にプリントを渡さないからだ。以前も何度かあった。
私は担任にそのことを言うわけでもなく、一時間目は寝ようと目論んでいた。プリントがないならどうしようもないだろう。
睡眠不足ではないが、すぐに寝れた。少しずつ狭くなっていく視界。周りのクラスメイトの声も小さくなっていく。
「これは今日中に提出だぞ。この時間に終わらなかったやつは居残りだ」
担任のその声も、聞こえない事にした。————起きたら謝って、プリントをもらいにいこう。

Re: 白黒ストーリー ( No.3 )
日時: 2013/06/16 21:16
名前: suzuka ◆3p2qsnXqkQ (ID: 8wzITB29)


 2

目が覚めた時には、もう昼休憩だった。寝過ごしてしまったのだ。今日の体育は五十メートル走のテストだったのだが。————最悪だ。こんな、内申点が大切な時期に。
後悔の言葉が頭の中で渦巻き、お昼ご飯はのどを通らなかった。玉子焼きを一口だけ口にはくんでみると、焦げた苦い味がした。私はお弁当箱を閉じた。
教室内にはもう担任の姿は無く、私は職員室へと重い足を運んだ。長くて面倒なお説教か、私の存在の無意味さを思い知る地獄のような時間か。どちらが待っているかはわかっていた。
「先生。朝のプリントを無くしてしまったので、もう一度ください」
「え? あぁ、あれか。放課後までに提出だぞ」
「はい……ありがとうございます」
先生の机の前から一歩の動かない私を、煙たそうに先生が見る。ちなみに、この先生は体育の先生だ。
「まだ何かあるのか?」
「……いいえ、何も」
私は手の震えをおさえて職員室を出た。背中に冷たいものが張り付いたように、頭におもりがついたように。————私がいなくても、何も変わらないんですか。私はいらないものなんですか。

Re: 白黒ストーリー ( No.4 )
日時: 2013/06/16 22:28
名前: suzuka ◆3p2qsnXqkQ (ID: 8wzITB29)

 3

放課後の居残りが終わった頃には、部活終了時刻だった。学校に鳴り響くチャイムと、私の足音。長い階段。降りようとした瞬間に、背後の寒気。
ドンッ ガタガタガタッ
————最後に見えたのは嬉しそうな朋香の笑顔だった。

Re: 白黒ストーリー ( No.5 )
日時: 2013/06/16 23:34
名前: suzuka ◆3p2qsnXqkQ (ID: 8wzITB29)


 4

目が覚めると、まぶしい太陽の光が私を灰にしてしまいそうなほど照りつけていた。汗で服が体にくっついている。アルコールのにおいと、一定のリズムで聞こえてくる機械的な音。しかしそれはカーテンの向こうからだった。
「病院……?」
少し動かすだけで痛む全身。動かない左足。
「起きましたか?」
背の高い男性が手に持っている紙に何かを書き込み、その後私の左足の包帯をとった。すぐにわかった。骨が、折れたんだと。
おそらく医者であるその男性と一緒に入ってきた母親は、疲れているようだった。ボサボサの髪に、細い目。私を見るその目は、少し潤んでいた。
「足……折れてるんですか、骨?」
出てきた言葉をそのまま口にすると、医者は新しい包帯を巻きながら作り笑いで答えた。
「左足の骨がかなりひどく折れてましたが、そこ以外は大丈夫ですよ」
私は自分の左足を凝視すると、舌打ちした。医者は少し困った顔をしたが、上から私を見下ろしてからカーテンの向こうへ消えていった。その時、彼は確かに言った。「骨折ですんでよかったじゃないか……命を落とす可能性だってあったんだ。悲劇のヒロインぶってんじぇねーよ」
「ちがう、ちがう」
————私が舌打ちしたのは。


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