社会問題小説・評論板
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- いじめ、解決するよ。
- 日時: 2013/10/01 17:19
- 名前: ost (ID: d4UJd1Wm)
はじめまして! ostと申します。おーえすてぃーなりおすとなりどうとでも呼んで構いません。
今回はタイトル通りいじめに正面から向き合い、解決する物語です。
更新はゆっくりですが、暖かく見守っていて下さい。
プロローグ >>002
1話 初対面@天然 >>003
2話 初対面@印象 >>004
- Re: いじめ、解決するよ。 ( No.1 )
- 日時: 2013/09/17 17:27
- 名前: ost (ID: Bz8EXaRz)
ざっとキャラ紹介を。
「面倒だ、断る」
紫呉 樹(シグレ イツキ)
・中性的な顔つきの転校生
・良く言えばクール、悪く言えば無気力
「餓鬼でもやるときゃやるのよ」
十朱 癒希(トアケ ユキ)
・女医を目指す絶賛成長期
・容姿に反して何処か親父臭い
「うちいっつも転んでばかはうわあああっ!」
桜庭 京奈
・理事長の娘のロリ顔
・ドジでもサポート頑張ります
「私が貴方を支えてあげます」
御黒院 心(ミコクイン ココロ)
・心理カウンセラーを目指す文武両道なお嬢様
・度胸はある
「ところで自分の心配はいいのかしら」
青城 悧瀬(アオキ リセ)
・学年考査トップのクール
・冷静さ故、冷たいと思われることも
「へえー、で、皆はどうなん?」
橙乃 琴羽(トオノ コトハ)
・ 口から先に生まれたようなお喋り屋
・情報を聞き出すことは得意
- Re: いじめ、解決するよ。 ( No.2 )
- 日時: 2013/11/24 21:26
- 名前: ost (ID: SkGQb50P)
プロローグ
塗装落ちが一切無い、新築の4階建ての校舎。平坦な屋根に真ん中上に設置されている時計、横に長く縦に短い建物は学校という子供が集う学舎の特徴の一つであろう。
その校舎の前に俺は立っていた。理由は何てことはない、ここで同じように"お勉強"をするためである。初めて、と前置きがくっついてくるが。
初めて、というのは俺が今日この学園に転校してきたからである。親の人事異動により勤務先が変更したらしく、今までの住居から仕事場に通うことが難しくなったためにすむ場所が変わった。そのおまけとして学校も違くなっただけのことである。
——面倒くさ……
正直この転校には気乗りはしなかった。折角築いたコミュニティがゼロになるだとか、馴染めなかったらどうしようとかいう類いの不安はないのだが、強制される自己紹介や待ち受けているであろう質問がうっとうしいのだ。以前にも学校が変わったことがあったのだが、その時は一日中これでもかという位に問われたため、気が滅入ってしまう。ああ、想像しただけでも嫌だ、ガクンと肩が下がる。
——ってうだうだしてても仕方ねえ、か。
そうだ、校舎の前で突っ立っていても現実から逃れることなどできないのだ。覚悟を決めねば。ふぅ、と息を吐き出し、胸の不快感を呼気に乗せる。そして足りない分の空気を鼻から補い、新鮮さを取り入れる。すーはーすーはー、繰り返すこと数回。満足するまで行う。
「よし、行くか」
気がすむまで深呼吸し終えると、目の前に映る大きな建物を見据えた。現実を受け入れるぞ、と士気を高め、人々を迎える扉の取っ手に手を掛けた。
- Re: いじめ、解決するよ。 ( No.3 )
- 日時: 2013/09/30 22:32
- 名前: ost (ID: jEJlOpHx)
「おはよう、貴方が転校生の紫呉樹君ね」
学園から出された案内に従い一角の教室に足を運ぶと、若い女性が出迎えてくれた。今時珍しくストレートの長い黒髪を整え黄緑のカーディガン、薄いピンクの膝丈フレアスカートをはいている姿は清楚と言えよう。ナチュラルメイクにたれ目なのだから、尚更印象が強くなる。
「……あ、はよございます」
加えて柔らかい笑顔で俺を見つめるが、同性である俺はなんとも思わずに、ただ二言だけ返す。実にボリューム小さめで適当な返事だが、相手は恥ずかしい故の反応だろうと曲解してくれるだろう。
「私が貴方が新しく入る1—2組担任の奥栄小百合です。宜しくね」
俺の思惑通りとまではいかないが、少なくとも不快感を与えてはいないようだ。見たところ笑みは保たれているし、他の顔のパーツの変化も見られない。気遣いは不要だろう。もともとそのような気は皆無だが。
「……おねがいします」
誰だって分かりそうなほどかったるい口調だが、やはり彼女はニコニコしている。生徒に軽い態度を取られているのにどうして嫌な顔一つしないのだろうか。
「じゃあ、教室行きましょうか。あ、そうだ……」
彼女が放った次の一言で、俺の疑問は晴れる。
「紫呉君、多分女子が煩くなると思うけど、ごめんなさいね。私のクラス、格好良い男の子に目が無いから……」
「おと、こ……のこ……?」
ちょっと待った、俺を男に見間違えるのは分かる。声質もテノール寄りのアルトと言われたことがあるし、紫色のショートカットに肉つきの無い身体も散々男と判断されてきた。一度女子から告白されたこともある。だがしかし俺が通うことになった学園は男子禁制。女子のみが通うことを許されているのだ。
「先生、ここ女子校……」
「えっ……あ……!」
そのことを伝えると理解したようだ。間違いに気付いた彼女は俺に何度も頭を下げる。
「ごめんなさい! 先生うっかりしてました……」
ああ、こいつは抜けていて鈍感なのか。悩みが一つ、解決した。
「大丈夫です」
別に俺は先生のような人に何度も出くわしているし慣れっこだ。特に気にしていない。
「それより……」俺はちら、と時計を見やる。「先生、時間……」短針は8の字を越え、長針は2の字の手前だ。だいたい8時7分位だ、そろそろ教室に行かないとまずい気がする。
「そ、そうですね行きましょうか。では、私についてきて下さい」
若干早口になりながら、せかせかと先生は歩いて行く。
——大丈夫かぁ?
俺はあくまでも自分のペースで、彼女を追いかけたのだった。
- Re: いじめ、解決するよ。 ( No.4 )
- 日時: 2013/11/30 15:48
- 名前: ost (ID: SkGQb50P)
第一印象はかなり重要だ。人は最初のイメージで他人を決定付けることが多く、最初に形成した人物像を壊して新たなイメージで塗り替えるぼは余程のことがないと難しい。初対面でしくじれば負の印象が残り続けるだろう。
「それじゃあ、自己紹介お願いね」
「紫呉樹です。……よろしく」
だから初めて顔を合わせるホームルームの自己紹介では、俺は口元を下げてなるべく"低く、やる気"の無い声で挨拶をした。若干の冷たさも含ませながら。頭も申し訳程度に傾けただけである。
どうしてぶっきらぼうな態度でのぞんだのか、それは自己紹介の後の質問攻めを避けたかったからだ。低い声で親しみやすさを下げて、気だるそうな声の様子でお前らとは仲良くする気はないと遠回しに告げる。二つの要素によって人は俺との会話がきまずくなり、結果近寄る奴が少なくなるというわけだ。
友人が作れなくなってしまうじゃないかと指摘されそうだが、別に友人など必要ない、俺は一人でも生きて行ける。
友人など邪魔なだけだ、自分の時間が少なくなる。
友人など面倒なだけだ、気を使って疲れてしまう。
デメリットが数多く上がる存在など誰が望むものか。一人の方が余程気楽である。
「じゃあ紫呉君の席は後ろの窓際ね」
「はい」
指示された席に向かう間も無表情を貫く。その間に聞こえてくる小声。格好いいだとか男っぽいだとか、関わりずらそうだとか。生徒は予想道理の反応を示し、見事に印象操作されている。よし、と心ではガッツポーズをするが、外面は淡々と、足を動かすのみだ。席に着いたとしても変わらない。
「紫呉君はまだ来たばかりで分からないことがあるから、皆教えてあげてね」
きっとそのような者はいないだろう。俺と距離をとるものばかりだ。……ああ、そういえば先生鈍かったな。
「それでは、ホームルームを終わります」
これで疲れずにすむだろう。誰かに束縛されず、自由なのだ。俺は喜んだが、つかの間のことで。感情もすぐに崩れ去るのであった。
Page:1