社会問題小説・評論板
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- はりぼて王国
- 日時: 2014/08/19 15:33
- 名前: かんな (ID: lJWT90W0)
1.今園なずな
私は失敗作。
お姉ちゃんは有名な名門中学に入った。そこから県屈指のエリート高校に主席入学した。
私はお姉ちゃんと同じ中学——鷹峰中学校を受験した。結果は不合格。しかも一次試験で。今は桜ヶ丘女子中学校とかいう私立のバカ女学校にいる。
一次試験の合格発表が終わった後、お母さんは私を殴った、蹴った。
なんであんたはお姉ちゃんみたいにできないの塾にもいかせてあげたじゃない金返しなさい一次試験で落ちるなんて恥ずかしい勉強したの?してないんでしょこの出来損ないが中学はどこに行くつもりなのまぁどこに行ったってあんたはあたしの顔に泥を塗ったんだわねぇあんたの友達は受かったんですって?2人も?その2人が受かるレベルでアンタは落ちたのよこの出来損ない。
その後お母さんとの会話はほとんどなくなった。
私は前述のように私立のバカ校、桜ヶ丘中学に入学した。
そして現在に至る。
お母さんにも見放された私は、休日はパソコンを起動して延々とネットサーフィンをしていた。
そしたら、見つけた。
『桜ヶ丘女子中学校裏サイト』を。
- Re: はりぼて王国 ( No.1 )
- 日時: 2014/08/19 15:44
- 名前: かんな (ID: lJWT90W0)
「桜ヶ丘女子中学校裏サイトへようこそ!」
薄ピンクの背景にその字が真っ赤に浮き出ている。
裏サイトと銘打っているが、実際は掲示板だ。掲示板の作成においては初歩向けの「いちごラクラクレンタル掲示板」を利用しているようだ。
裏サイトと知って私の胸は高鳴った。裏サイトと言うからにはきっと、残酷な悪口が大量にあるのだろう。私はゆっくりとスクロールをした。
はっきり言って、期待はずれだった。
そこに書き込まれているのは悪口なんかじゃない。
「部活疲れた〜」
「体育大会早く来ないかな〜」
とかいう馬鹿どもの呟きで溢れていた。
「R美は、T郎と付き合ってるんだって!」
「S子は3人の彼氏がいる!」
…馬鹿じゃない?
ああ、つまらない。なんで皆は、こんな馬鹿げた所で我慢できるのか。
もっと、残酷な悪口を投下したりしたいと思わないのか。
…私が、そのサイトを作ってしまえばいいんじゃないか?
一瞬この考えが頭に浮かんだ。私はこのサイト以上のクオリティーの裏サイトを作ることは10分足らずでできる。そのURLをここに貼れば、たくさんの馬鹿どもが集まってくるだろう。
思い立ったが吉日。さっさと終わらせてしまおう。
- Re: はりぼて王国 ( No.2 )
- 日時: 2014/08/19 15:57
- 名前: かんな (ID: lJWT90W0)
…結構、簡単に出来てしまうものだ。
真っ黒な背景に、白い文字。『新・桜ヶ丘女子中学校裏サイト』の完成。
サイトのトップには、「悪口・陰口・いじめ掲示板」と掲げられている。
馬鹿どもはこの餌にひっかかってくれるだろうか。少し不安に思いながら古い方の裏サイトにここのURLを貼り付けた。
——反響は、ものすごかった。良くも悪くも。
「なにこれ?」「新?」「悪口とかダメだよ!」「いじめ!?ひどい!」「ここの管理人さん?」「違うんじゃない?口調とか違うし」「じゃあ新って何?」「そもそも、このサイトは何?」
一瞬で、これほどの返信が来たのだ。
しかし、この大反響の書き込みは、管理人にも行き渡ったようだった。
管理人からの馬鹿げた返信が次々と投下されていく。
「あなた何ですか?このサイトのパクリですか?」
「私の許可なしに、なんで似たようなサイトを作るんですか?」
「悪口とか陰口とかいじめとか、ふざけないでください」
「みなさん、ここのサイトにはくれぐれもアクセスしないように!」
パクリ?私の許可なしに?アクセスしないように?
お前は何様だ。ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
管理人の呼びかけは意味を成さなかった。たちまちにアクセス数が跳ね上がり、コメント欄も続々と増えていく。
最初は皆戸惑ったような書き込みだったが、次第に———
「体育教師の青木、ウザイ。オバサン。クサイ。」
「K子って、不細工だよね。」
「1年の高木は、人間のクズ。デブで汗クサイ。」
悪口で埋め尽くされた。
- Re: はりぼて王国 ( No.3 )
- 日時: 2014/08/19 16:04
- 名前: かんな (ID: lJWT90W0)
その悪口を延々と眺めていると、なんと古いサイトの方の管理人が介入してきた。
「こんなサイトで悪口なんて、バカじゃない!?」
「みんな、こんな酷いことして、楽しいの?」
「ここの管理人は、パクリで盗作でサイテーな人間だよ」
…つくづくこいつはバカだ。しかもハンドルネームは「本当の管理人」。調子に乗ってるんじゃねーぞ。しかも盗作の意味、わかってないし。
この管理人の書き込みは、集中砲火を浴びた。
「お前のサイトはつまんないんだよ」
「自分のサイトが不人気だからって八つ当たり?」
「管理人さんを貶めるなんてひどい。もうアクセスしない」
いい気味。しかし古い管理人は反撃をした。
「なんでみんなそんな風になっちゃったの…?」
「昔みたいに、みんなで楽しい話しようよ」
「私のところに戻ってきて、サイトもリニューアルするから」
「バカじゃない?何悲劇のヒロイン演じてるの」
「もうあんたはいらないから、サイトも閉鎖しちゃえば?」
「もうみんな、誰もあんたのサイトになんか行かない」
皆は私の良い代弁者だった。
昔の管理人は何度か反撃を続けたが、いつの間にか書き込みがぴたりと止んだ。サイトを見てみると、既に閉鎖していた。
勝った。私がここの、新しい、頂点の、人間だ。
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