社会問題小説・評論板

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

世界
日時: 2015/07/10 22:31
名前: 空海零 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)

「この世界は、君が思うほど優しくないし、美しくもない。だけどね、君にとって大切なものが、きっと——見つかると思うよ」

“世界”は優しくない。
“世界”は美しくもない。

だけど、私はこの世界が——


++++

◆目次◆

一章 歯車

一話 上靴 >>1

Re: 世界 ( No.1 )
日時: 2015/07/10 22:31
名前: 空海零 ◆wcVYJeVNy. (ID: IfRkr8gZ)

一話 上靴


「この世界は、君が思うほど優しくないし、美しくもない。だけどね、君にとって大切なものが、きっと——見つかると思うよ」

幼かった私を抱き上げ、見知らぬおじさんが言った言葉は、今も心に残っている。

あのときのおじさんの言葉は、幼い私には分からなかった。

だけど、十三歳の今なら分かる。

世界は、優しくない。

真っ黒になるまで落書きをされた上靴を見て、ようやく理解した。

小さなため息を、一つ。

ぐるぐると頭の中をめぐる、「なんで」という言葉。

「落ち着け……私」

自分を落ち着かせるように、呟いた。

精神の安定を図ろうとしても、この状況が変わるわけじゃない。

暗転もしなければ、好転もしなかった。

つまりは、何も変わらなかった。

「……これは、現実だってこと?」

げんじつ。ゲンジツ。現実。

頭の中で反響したその単語が、顔を持った。

「……なんて、残酷な現実」

呟いた小さな言葉が、朝の喧騒にかき消された。


Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。