社会問題小説・評論板
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 君と僕と世界と夢と‐第1話‐
- 日時: 2015/07/18 14:42
- 名前: 華菜咲華菜 (ID: fhgz9KYE)
2018年5月20日
今日未明、○×県△□市で一家殺人事件が発生しました。
犯人はその家の長男咲野夢路被告(18歳)
犯行は認めましたが、動機などは未だに黙秘を続けています。
凶器は鋭利な刃物で腹部を数か所刺されており‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「最近は物騒な事件が多いわね。
あんたも気をつけなさいよ。一也。」
・
・
・
10年前
・
・
・
バタバタ
「おかーさーん!おべんとーまだー?」
「はいはい、今できましたよ。」
「ありがとっ!じゃあ行ってきます!!」
「行ってらっしゃい」
「夢路おにいちゃん行ってきます。」
僕の名前は咲野実。
僕にはすごく仲のいい双子の兄がいた。
僕たちは顔も性格もよく似ていて二人とも学力は並、
運動もそこそこ得意で違いがあまりなかった。
ただ一つ違うものといえば
夢路おにいちゃんの一人称が「俺」
ということとあともう一つ
「夢日記」をつけていることだった。
夢路おにいちゃんは夢を見るたび「夢日記」に覚えていることを全て書き込んでいた。
その日記を僕が見せてと言っても絶対に見せてくれなかった。
- Re: 君と僕と世界と夢と‐第2話‐ ( No.1 )
- 日時: 2015/07/18 14:54
- 名前: 華菜咲華菜 (ID: fhgz9KYE)
一年前のある日の夜、僕がトイレに行こうと階段を下りていくと、
リビングからお父さんとお母さんの話し声がした。
「なんだ、こんな時間に話って。」
「ごめんなさい。
でも少し気になることがあって・・・」
「気になること?」
「はい・・・。」
お母さんは思いつめたような顔をしている。
「どうした?」
お父さんは心配そうにお母さんの顔を見つめた。
「あの子の部屋からこんなものが出てきて・・・。」
お母さんが何かノートのようなものを差し出した。
「ん?ただの「夢日記」じゃないか。」
「そうなんですけど・・・。その内容が・・・。」
その日記をお父さんに渡そうとした時、
「ねえ、何してるの?」
背後から夢路おにいちゃんの声がした。
驚いた僕はいきおいあまって後ろに倒れこんでしまった。
「ゆ、夢路ど、どうしたの?こんな夜遅くに・・・。」
お母さんがおびえているように見えた。
「ねえ、何してるの?」
夢路おにいちゃんはもう一度質問した。
「ああ、これはだな・・・
ええっと、あのぉ・・・あーあれだ!
ふ、夫婦の仲をだなもう少し深めてなかよくなろうというだな・・・
えっとぉー」
お父さんが苦しい言い訳を続ける中
夢路おにいちゃんは冷静に質問を続けた。
「ねえ、何持ってるの?」
お母さんは持っていたノートを後ろに隠した。
「ねえ、なか、見たの?」
夢路おにいちゃんはゆっくり冷静に最後の質問をした。
その質問を最後にみんなが黙り込む。
その時、僕以外の人たちはみんな深刻そうな顔をしていた。
重たい沈黙を破ったのはお父さんだった。
「ほら、お前たち、今日は遅いからもう寝なさい。
続きはまた後日にしよう。」
そうして僕たちはそれぞれの部屋に戻った。
布団に戻った僕は隣のベットで寝ている夢路おにいちゃんに「夢日記」について聞いてみた。
「ねえ、夢路おにいちゃん。
どうして「夢日記」をみちゃだめなの?」
「なんでそんなにしりたがるんだよ。」
冷たい声がベットから聞こえる。
「だって気になるじゃないか。」
「面白くもなんともないよ。
あんなの・・・。」
そういうと夢路おにいちゃんは静かに泣き出した。
「夢路おにいちゃんないてるの?どうして?」
「さっきの母さんみただろ?
まるで俺におびえてるみたいだった。
きっと、俺の事なんか・・・。」
そういいながら頭まで布団をかぶって寝てしまった。
次の日の朝、まるで昨日のことがなかったかのようにいつも通りだった。
「ほら夢路そろそろ行かないと遅刻するわよ。」
「うーん。わかってるよ。」
「ごはんは?」
「いらない。行ってきます。」
夢路おにいちゃんは「行くぞ実。」と言ってランドセルを持った。
「あー待って夢路、
行ってきますのぎゅーしてちょうだい。」
お母さんは満面の笑みで両手を広げた。
夢路おにいちゃんは不服そうに両手を広げて
「ぎゅー」をした後にうらやましそうに見ている僕を見た。
「ねえ、母さん、実にはしてあげないの?」
その言葉を聞いたお母さんは少し困った顔をした。
「え、ええ。そ、そうね。
でも今日はもう時間がないからまた今度にしましょうか。」
「・・・・・・言うなら実に言いなよ。
なんで俺に言うの?」
夢路おにいちゃんは振り返って玄関を出た。
僕もそれに続く。
夢路おにいちゃんはため息をついて僕のほうを見た。
「母さんのあのセリフ・・・何回目だと思う?
たぶんもう15回目だぜ?
普通親なら15回も自分の息子無視いないだろ!」
僕も悲しい気持ちにならないといえばウソになるが
夢路おにいちゃんが僕以上に怒ってくれるので満足だった。
「まあ、僕はあの二人に嫌われてるからね・・・。
仕方ないよ。」
「お前なあー。
それでも俺の双子の弟かよ!
もっと怒ってもいいんだぞ!」
「あはは。
夢路おにいちゃんは怒りすぎだよ。」
僕がそう言って笑うと
夢路おにいちゃんも一緒になって笑った。
しばらく二人で笑った後
夢路おにいちゃんが急に深刻な顔をした。
「なあ、実。
これから言うこと信じなくてもいいからとりあえず聞いてくれ。」
僕は静かにうなずいた。
夢路おにいちゃんの話は
「夢日記」についてだった。
あれだけ嫌がっていたのにどうして今話してくれるんだろう
と思いながら聞いていた。
僕は夢日記はただ見た夢をノートに書いて終わりだと思っていた。
でも夢路おにいちゃんの話は違った。
初めは普通の夢だった。
自分がアイドルになる夢や
川にいたのに急に場面が教室になるなど
非現実的な夢だったという。
でも、夢日記をつけているうちに
だんだんリアルな夢になっていった。
お母さんが事故にあう夢や
僕が階段から落ちて足を骨折する夢など、
不幸が続く夢を見るようになり、
現実と夢の見分けがつかなくなっていったそうだ。
そしていつしかその夢は正夢になっていった。
初めは偶然だと思っていたが
みんながする行動一つ一つが見た夢と一致していた。
そしてこの一週間で見た夢は夢路おにちゃんが僕を殺す夢
。今僕たちが立っているこの歩道橋で・・・・・・。
つまり、僕は今日、今ここで夢路おにいちゃんに殺される。
Page:1