社会問題小説・評論板
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- だるまさんが、転んだ。
- 日時: 2015/08/19 10:04
- 名前: 雪亜 (ID: l8Wvg9Qa)
『───だるまさんが〜…こぉろんだっ。』
- Re: だるまさんが、転んだ。 ( No.1 )
- 日時: 2015/08/19 10:21
- 名前: 雪亜 (ID: l8Wvg9Qa)
小さい頃、『だるまさんが転んだ』をやったことはないだろうか。
1人が後ろを向いて、「だるまさんが〜」というゲーム。大抵の人なら知っているだろう。
でも私は、あのゲームが好きではない。
なぜって?
私が知っているあの遊びは、相手がこちらを向いた時に止まった位置で自分の地位が決まるからだ。そして、動いてしまった輩は敗北者、つまり人生の負け組となる。
まぁそのせいで、今でもその子供じみたお遊びは続いているわけなのだけど。
「だーるーまーさーんーが‥転んだッ」
「ひゃあ!!」
「はい、今日はエリねー」
「そんなぁ…」
本日の敗北者は二ノ宮エリ。本当下らないゲーム。
私…大久保瑠璃はその様子を黙って見ていた。
「瑠璃ー、今日はエリだよ」
「よろしくね瑠璃ー!」
「はいはい」
適当に受け流しながら、自分の席に戻る。
このクラス…1-Cは問題のあるクラスだった。
毎朝、全員揃うと“だるまさんが転んだ”を始める。
そこで決まった敗北者は、その日1日雑用係。
…なぜかこれが習慣になっていて、そしてなぜか私は女王扱い。だから毎日あの遊びには参加しないけど、そのかわりに敗北者を“いじる”役割になっている。
──これはいじめじゃないから、罪には問われない。
これが、私のおまじないだった。
- Re: だるまさんが、転んだ。 ( No.2 )
- 日時: 2015/08/19 21:04
- 名前: 雪亜 (ID: l8Wvg9Qa)
チャイムが鳴ると、生徒達は自分の席に着く。
いつも通り担任が入ってきて、今日の予定を話しいくつかのお知らせを伝えると、職員室に戻っていった。
「瑠〜璃〜」
「何よ。もう始まるわよ、授業」
「あれ?瑠璃、聞いてなかったの?先生の話」
私の前で小首を傾げる彼女は篠崎クミナ。確か…柔道の中学生大会で日本一に輝いたんだったっけ。
「ええ全く」
「数学の西岡が休みだから、今日の一時間目は自習だよ?」
「あらそうなの」
「冷たいなぁ〜…あ、それでなんだけどさぁ」
わざとらしく手を叩くクミナに多少の苛立ちを感じながらも「何よ?」と相槌をうつ。
「いつもいつも、同じ様なやり方じゃない?それにみんなエリのこと嫌いだからさぁ…」
可愛い笑顔からは想像のつかない暗い声で、クミナは言った。
「──たまにはいじめちゃおーよ?」
- Re: だるまさんが、転んだ。 ( No.3 )
- 日時: 2015/08/21 09:44
- 名前: 雪亜 ◆wma11R9XmY (ID: l8Wvg9Qa)
…何を言っているのだ、こいつは。またいつものおふざけか。
しかし、クミナの目は射るように冷たかった。
「…嫌よ」
「えぇ?なんで?」
「いじめなんて下民の行うことだわ」
そう言って立ち去ろうとすると、その瞬間チャイムが耳に入った。
「…座りなさい、クミナ」
「……はい」
*
一体何なのだろう、この関係は。
私は、特別お金持ちとか、そういうわけではない。強いて言えばお父さんがある大企業の社長の次に偉い、ただそれだけ。
なのに一体どうしたのだろう。いきなりあのゲームが始まって、その頃から私は特別な扱いを受けていた。
…まぁ、心底気分はいいのだけど…。
聞いてみようかな、と斜め前のクミナの席に小さく畳んだメモを投げる。覗こうとする奴らは視線で退かす。
クミナは読み終えると、そのメモに何やら書いてこちらに投げてきた。
私の質問に対しての返答。
『どうして私の立場は変わらないの?』
という質問の下に、右上がりの文字でこう書いてあった。
『…さぁ?(・_・;)?』
…オイ。と心の中でツッコミを入れ、クミナの方を見ると笑顔で親指を立てていた。
「あんたねぇ…」
「ん?」
しかし、本当になぜなのだろう。
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