社会問題小説・評論板
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- 輝け
- 日時: 2015/09/22 14:55
- 名前: 浅葱 (ID: .DYzCgCx)
「いけいけーっ!」「がんばれーっ」
校庭に鳴り響く、大太鼓の音。
女子男子からの掛け声。
俺ー堀口 雅也はリレーアンカーの場所についていた。
アキレス腱を伸ばしながら、後ろを振り返る。
我が赤組のランナーはビリの道を走っていた。
だんだん近くなるその距離に俺は高鳴る鼓動を隠しきれずにいた。
「ご、ごめんな、、遅れて、、、、」
ランナーは荒い息の中でそう言った。
「大丈夫。俺に任せろ!」
笑顔で叫ぶと俺はバトンをしっかり握って走り出した。
- Re: 輝け ( No.1 )
- 日時: 2015/09/22 15:00
- 名前: 浅葱 (ID: .DYzCgCx)
あっという間に目の前の三人を抜かし、二位の座に躍り出る。
風を切ってしっかりと地を蹴って走る。
「雅也いけーーーっ!」「おおおおおおおっ」
勢いは最高潮になり、俺はそれに答えるかのように一層速く走った。
そして白組のアンカーを抜かし、俺は白いテープを切った。
- Re: 輝け ( No.2 )
- 日時: 2015/09/22 15:09
- 名前: 浅葱 (ID: .DYzCgCx)
「いやー、すげーよ雅也!!」「さすがだなー」
一位を掴んだ俺を赤組の皆が褒め称えてくれた。
「だってビリだったんだぜ?すげーよ、雅也」
みんな、嬉しそうに笑う。
その中で俺は笑顔を顔に貼り付けていた。
俺は堀口雅也。14歳。
保育園の頃から陸上選手になるのが夢だった。
小1からずっとリレー選手で、ずっと一位。
三年生の先輩よりも速いって言われてる。
陸上部では期待の新人としてそこに居座っている。
体育祭では毎年〈奇跡のアンカー〉として注目されている。
- Re: 輝け ( No.3 )
- 日時: 2015/10/08 10:05
- 名前: 浅葱 (ID: .DYzCgCx)
「それにしてもさー」
親友の北川浩輔が後ろを振り返る。
そこには、二年連続ビリ代表の冴島翔がいた。
彼は頭脳明晰だが、運動神経が悪く、反射神経も鈍い。
昨年のクラス対抗リレーは彼のせいで負けた。
「もうちょっと速く走れないのかな〜?」
浩輔は翔を睨みながら笑う。
翔は俯き、ギュッと拳を作る。
「ほんと、ほんと」
「ちゃんとやってよね、冴島くん」
「あんたのせいでクラス対抗リレーも負けたんだから」
女子がギャーギャー責め立てる。
冴島はみんなのストレス解消のオモチャだ。
運動神経が鈍い冴島を「これも試練だ」と無理やりリレーの選手に立たせ
速く走れなかったり、ビリになったりするとみんなで責め立てる。
体育祭で仕事をかなり任され、ストレスが溜まりまくっている浩輔を先頭に。
「何とか言えよ」
浩輔が冴島の脇腹を強く蹴った。
小さく呻き声が出る。
みんなは笑い、
「もう迷惑かけないでよねー」
と席に戻って行った。
俺も冴島を残してみんなのあとに続く。
- Re: 輝け ( No.4 )
- 日時: 2015/10/08 10:14
- 名前: 浅葱 (ID: .DYzCgCx)
愉快だった。
昔から速く走れない奴が大嫌いだった。
速く走れなくて、ビリになって、それなのにヘラヘラ笑ってて…
なんで笑ってられるのか、分からなかった。
一位になった人に二十秒以上差をつけられたのに、なんで笑っていられるんだ?
そういう奴を見てるとイライラしてきてよく責め立てたものだ。
そいつが泣いて、先生に叱られても反省の気持ちは湧かなかった。
だから足が遅い冴島が虐められてるのを見るのは目の保養になった。
見てるだけでも楽しいから、直接何かを言ったりはしないが…
しかし、なぜ冴島は泣かないのだろう。
あれだけひどいことを言われてるのに。
あれだけアザを作っているのに。
どうして泣かないのだろう。
あいつが泣いたらもっと面白いのに。
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