社会問題小説・評論板
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- 私の話を聞いてください。
- 日時: 2015/12/07 18:45
- 名前: kanami☆ (ID: 3NNM32wR)
これは、
つまらなくって、
平凡で、
どこにでもありそうな、
私のお話。
- Re: 私の話を聞いてください。 ( No.1 )
- 日時: 2015/12/07 19:43
- 名前: kanami☆ (ID: 3NNM32wR)
◆episode01 「私の話を聞いてください。」
私の名前は草間 郁、ごく普通の女の子です。
“つい最近までは”愉快だった母、晴香。病弱な父、剛志。大人しめの姉、由華。暴れ盛りの弟、達也。そして、普通の女の子である私、郁。
平々凡々で、面白くない私の話を——聞いてください。
「郁、行ってらっしゃい」
「行ってきます、ママ」
そんな風に朝を迎え、急いで鞄を自転車の籠に放り込み、鍵を差す。「このオンボロ自転車め」そう言って蹴るように自転車を漕ぐ。時間は六時五十分。間に合うか間に合わないかの境目、ギリギリ。
「おー、草間さんッ、おはよう!」
「おはよ、大島」
カバの様な顔をした同級生の男子・大島 勝に挨拶をし、自転車を蹴とばすような漕ぎ方で急ぎ、そろそろ顧問の辰見先生が起きる時間だろうな、と考える。車だからってのろのろして狡い。
「ふー、やっと着いた」
「郁——ちゃん?おはよう」
「おはよ、秀たん!」
秀たん、というどこぞの萌えキャラかというあだ名をつけられてしまった少年の本名は平川 秀平。くりくりとした大きめの目に色白な肌——と女装すれば十人中十人が見返るような美女になりそうな子である。
「柔道部って、朝練あったっけ?」
「ないけど、た……」
「あ、行かなくちゃ!ごっめん」
そういって秀たんの話を遮って私が向かったのは第二体育館。男女卓球部、女子バレー部、演劇部が使っている(つまり演劇部員にはバレーボールが当たることが多々ある)二つ目の体育館である。
ちなみに第一体育館は、男女バドミントン部、男女バスケットボール部、男子バレー部が使っている。
あともう一つは三階建ての柔・剣・空手道場。ここで柔・剣道・空手部が部活をしている。秀たんは柔道部なので二階である。この構造を思い返すだけでこの学校の広さにうんざりする。
そして私は第二体育館に着く。これは———ぎりぎりセーフ、かな?
- Re: 私の話を聞いてください。 ( No.2 )
- 日時: 2015/12/07 21:09
- 名前: 優空 (ID: Iohw8dVU)
こういう文の書き方すごく好きです…!なんか真剣そのものという感じで(笑)
更新楽しみにしてます!頑張って下さい!
- Re: 私の話を聞いてください。 ( No.3 )
- 日時: 2015/12/08 18:16
- 名前: kanami☆ (ID: 3NNM32wR)
優空さん
こういう文の書き方すごく好きです…!
———だなんて、嬉しい&光栄です!
これからもそう思ってもらえるように頑張って書きます。
- Re: 私の話を聞いてください。 ( No.4 )
- 日時: 2015/12/08 18:59
- 名前: kanami☆ (ID: 3NNM32wR)
◆episode02 「私の部活は」
「おはよ、スミス」
「グッモーニング、郁」
スミス——といういかにも外人っぽい渾名を持つ少女が振り向く。明らかに日本人の容貌をしており、実際に彼女は日本人で、名前は墨田 真尋。得意科目は英語で、だからスミスと言う渾名がついたのだろう。よくは知らないが。
「おはりーん、郁」
「おはよ、はぐ」
続々と部員たちがやってきて、自分が最後ではなかった、と一安心する。
急いでピン球を掴んでポケットに入れ、綺麗な台を確保しておく———そう、私の部活は女子卓球部だ。よく地味な子が多い、と言われているがその噂は間違いなのだと入部してはじめて気付いた。
「はい、じゃあ始めるよ———お願いします!」
部長のその一言で、スミスとはぐ(こと、三枝 美並)がタイマーのスイッチを押す。「フォアのクロス!」から始まり「全面!」で終わる。
はぐとかスミスみたいな、上手い子と出来ると嬉しいけど———正直、渡辺 紗由とかぽんちゃん(こと、安藤 夏)とかとは打ちたくない。
勿論、自分がそんな事言える立場じゃないってことは理解してる。
「ふー、明日は外練か」部活終わり、入り口でぽんちゃんが言う。
「……って事はさ、佳枝が来ん日じゃな」
「ほんまじゃな……ずるい」
ぽんちゃんが呟いたことの、気持ちが分からん……わけがなかった。佳枝は外連は絶対来ないし、練習はいっつも遅刻かサボリ。なのに上手いから先生は佳枝を大会に出すことが多い。ずるい、そんなの。
「あ、ごめんな。変なこと言うてしもうて」
「え、何の事言っとん?———何も、聞こえんかったけえ」
そう言いながら“せっけんの香り”のエイトフォーを取り出す。五月って、暦なら春なのに、部活の後の肌は汗臭いから油断できない。
本当は無香料以外は校則違反だが、ガンちゃんなんか、“ロールオンフレッシュフローラル”使ってるんだからそれよりはよっぽどマシだろう。
それから数多くの黒鞄の中から自分のものを探し、荷物がいっぱいで太ったナップザックを背負って「じゃ、お先!」と言って駆け出す。秀たんに会いたいな、嵐のナントカくんが出る月9の話しなくちゃ。
- Re: 私の話を聞いてください。 ( No.5 )
- 日時: 2015/12/09 17:06
- 名前: kanami☆ (ID: 3NNM32wR)
◆episode03 「私のクラスは」
「秀たん、おはよ!」
「おはよ、郁———でさ、見た?昨日の……」
「見たよ!え、あれヤバくない?めっちゃ怖えんじゃけど!」
そんな話をしながら、用意をする。普通に平凡で平和な朝の一幕だけど、———リリカはまだ来てないよね、って事ばかりが頭をかすめて、平和に平凡に過ごすことすらできない。
「おっはよ、郁」
「……リリカ、おはよ」
大っ嫌い、あんたなんか、あっち行ってよ———そう言えない自分の弱さに腹が立って、でも本当に嫌いかと言われれば首を傾げる。自分にとって、そんな立ち場の少女・金田 聡子(通称リリカ)が近寄ってくると、秀たんの顔は一気に青ざめた———勿論、郁も。
「あー、そういえばぁ、理科室にぃ、これ!落ちとったよ!」
「……癖に……」
「あっれれぇ?こういう時はなんて言うの?あ、から始まるあれよ」
もう嫌だ、と言いそうになる。目を付けられた、と言うべきなんだろうか。出席番号は前後、話しかけたのは自分。こんな事しなければ、とそう思う。愛華ちゃんは「大丈夫?」とは言うけど庇ってはくれない、秀たんは庇ってくれるけど影響力はない。親には———言えるわけが、なかった。
「郁は落としてねえのにさぁ……」
「は?なんか言った?」
そんな一定の日々の繰り返しが、郁にとっては痛い。先生に言えば良い——けど、そしたら何倍返しされるんだろう。朝の会が始まってから、帰りの会が終わるまで。八時間も、息ができないくらいに、苦しい。
虐められてないのに、こんなことを言う弱い自分が、大嫌いだ。
憐れむような目で見てくる愛華ちゃんも、夏海も、あっちゃんも、大嫌いだ。でもやっぱり、そうやって人を怨む事しかできない自分が一番、大っ嫌いだ。
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