社会問題小説・評論板
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- S.O.S
- 日時: 2016/01/05 14:10
- 名前: 春川 小毬 (ID: 3NNM32wR)
S.O.S
エス.オー.エス
助けてだなんて、絶対に言わない。
- Re: S.O.S ( No.1 )
- 日時: 2016/01/05 15:21
- 名前: 春川 小毬 (ID: 3NNM32wR)
◆Prologue
パパとママは、愛し合ってたのかな。
ママはパパが大好きだった。家族で買い物に行って、旅行に行って、笑ってる時、いつもパパと一緒にいたがった。
家にいる時も、視線の先にいるのはいつもパパだった。
でも、ママを理解できる人なんてなかなかいなくて。
我儘で自分勝手で子どもっぽくて、意地っ張り……だけど、ほんとは繊細でもろくて傷付きやすい。パパも多分、理解して無かったんだ。ママのこと。
でもね、あたしは理解してるって思ってたんだよ。あの時まで。
塾の帰り、駅を詩織と歩いてた。
パパと若くて美人な女の人が歩いていた。
すっごい、優しい人なんだって。あの人を知ってる人は皆そう言った。ママなんか、敵いっこないくらい。パパが選んだ人は、ママじゃなくって。
パパの同僚の、『美月さん』って人だった。
「アンタなんか、最低ッ!泥棒猫!」
「ごめんなさい、でも、私にはこの人しかいないの!」
離婚調停中。ママが、美月さんに暴力をふるった。
それが決定打。もう、ママとパパは戻れない。あたしと家族もそう。
- Re: S.O.S ( No.2 )
- 日時: 2016/01/05 15:47
- 名前: 春川 小毬 (ID: 3NNM32wR)
◆Episode01
パパから、生活費の仕送りは来た。離婚のときの賠償金の額だって、相当だったはずだ。———なのに、お金はすぐに底を尽きた。
どうやら、ホストとギャンブルにつぎ込んでいたらしい。弟の祐太は呆れて、あたしは言いようのない悲しみと怒りに襲われた。
「金、無いの。このままじゃアンタ達、餓死よ」
そう、ママが言った。
弟は中学生、あたしの高校はバイト禁止。生活保護に当てはまる条件なし。恥ずかしい話だけど、本当に餓死すると思った。馬鹿だから、あたし。
「姉ちゃんさ、なんかバイトしてよ。特例とか当てはまんないの」
「ないよ、そんなの……新聞配達とか?」
「もっと収入いい奴探せよ、ほら、なんだっけ——あれ、JKなんとか」
「やめてよ、そんなの!キャバ嬢系じゃん阿呆!」
でもその時。確かに、あたしの頭にその選択肢が埋め込まれる事になった。『JKおさんぽ』とかって、結構なお金になるんだよね。時給千円だっけ。考えてみよう、ってそんな方向に段々転換されてく。
「大丈夫、紗奈?」
「大丈夫だよー、ちょっとお腹すいちゃって」
最近、ぼうっとしてる事が増えてきて。
「大丈夫かよ、冬川」
「へ?大丈夫大丈夫」
学校の勉強にも、身が入らなくなってきて。
「雇ってもらえますか?」
「うん、いいねぇ。客取れるよ、君」
ヤラしい顔したおっさん。——売春グループ、って言うのかな、コレ。『時給千二百円』その誘い文句に釣られた。
「じゃあ、『コノミ』ちゃん。よろしくね」
「よろしくお願いします」
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