社会問題小説・評論板
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- 触んな触れんな近づくな。
- 日時: 2016/02/12 21:56
- 名前: 青空苹果 (ID: dDPEYPay)
なんて悍ましいのでしょう。
醜い醜い化け物たち。
その手で触れるなんて嗚呼、悍ましい。
気持ち悪い。
吐き気がこみ上げて、ぐらぐらと視界が揺れて、ズキズキと頭が痛む。
_____「触んな、触れんな、近づくな。」
■ ■ ■
神木 永久(カミキ トワ)
重度の人嫌いであり人に触られることが大嫌い。
所謂傍観者であり、中立の立場。
刹那の従姉妹。
余りにも酷い”いじめ”により人嫌いに。
神木 刹那(カミキ セツナ)
永久がいじめられていたときに助けることができなかった自分が嫌い。
故に必要以上に自分を痛めつけようとする。
所謂いじめられっ子。
永久の従姉妹。
佐々波 累(サザナミ カサネ)
人を痛めつけるということに疑問を抱いておらず、正に幼子。
所謂いじめっ子。
幼い頃から両親に虐待を受けている。
■ ■ ■
>>目次<<
- Re: 触んな触れんな近づくな。 ( No.1 )
- 日時: 2016/02/17 18:55
- 名前: 青空苹果 (ID: dDPEYPay)
神木従姉妹は、この学校ではあらゆる意味で有名人だ。
従姉妹の姉、神木永久は重度の”人嫌い”であり、人に、いや自分以外に触れられることを絶対に許さない。重たい黒髪に黒色のフレームの眼鏡、表情を隠すようにしたマスク。制服は常に長袖でいつも厚めのタイツ。手にも黒色の手袋が嵌められていた。
従姉妹の妹、神木刹那は別に特筆すべきところはなかった。一言で言うならば、”いじめられっ子”。ただ彼女は自らいじめっ子を煽り、自分を痛めつけている節がある。彼女にそれを問えば。いつだってこう言った。
「私が嫌いだから、痛めつけるの。嫌いだから痛めつけるのは、そうおかしくはないでしょう?」
■ ■ ■
「ねえねえ、刹那ちゃん。嬉しい?」
佐々波累は、本当にそう思っているようで。日本人ならあり得ないようなフィクションのような翡翠色の瞳を瞬かせて、神木刹那に問うた。
と言っても、当の刹那はただただ累を見つめているだけだった。
「お返事ができない悪い子は、どうしようか?」
累はふわり、とまるで古くからの友人にするように、刹那に笑った。
刹那はそれを、まるでどこか遠いところのように見ていた。
■ ■ ■
_____「あはははッ、さっさと死ねば!?」
ばしゃり、と水をかけられた。
冷たくて、寒くて、そして、痛い。
ぎゅうぎゅうと胸が締め付けられて、頭ががんがんと痛む。
______きもちわるい。
そう、私をいじめる奴等をみて、私はそう思った。
顔は醜く歪み、それは、まるで獣のようだった。
汚らわしい。
穢らわしい。
けがらわしい。
____ケガラワシイ。
やめて、触らないで。
やめて、触れないで。
やめて、近づかないで。
「……、……わ、永久っ!」
がばり、と慌てて飛び起きた。頭がズキズキと痛み、気分が悪い。見上げると、かなり近いところに人間がいた。
「っ!?……っひ、いや、近づくな……!」
「ちょ、落ち着いてよ永久! 僕だよ、僕!」
ずるり、と椅子から滑り落ちる。そっと薄目で確認すると、幼馴染みの城咲拓真だった。
おろおろと手を彷徨わせる姿は、よく見知ったものでほんの少し安心する。
城咲は私がある程度近づいても許せる一人であった。
- Re: 触んな触れんな近づくな。 ( No.2 )
- 日時: 2016/04/04 19:04
- 名前: 青空苹果 (ID: dDPEYPay)
「今日は一緒に帰ろうと思って、ね?」
ふにゃり、と柔らかく笑う拓真。軽く頷いて立ち上がった。
並んで教室を出る。誰かと帰るのは久しぶりだ。
すると、空き教室から、複数人の声が聞こえた。
_____刹那と、累達だ。
”あいつら”とよく似た醜い声に、体が反応する。
「永久、こっちから帰ろう。」
気を使った拓真が、遠回りの方を向いた。
拓真も同罪だ、だっていじめを見て見ぬ振りしたのだから。
くすり、と私は久しぶりに笑った。
■ ■ ■
今日もご飯は抜きだ。
弟と、お母さんと、お父さんが笑いながら晩御飯を食べている。
私が悪いんだ。そう、今日は遅れちゃったから。
昨日はお母さんの機嫌を損ねちゃったから。
一昨日はお父さんの機嫌を損ねちゃったから。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
お父さん達がご飯を食べ終わったら”躾”がある。
痛いけど、ありがとう。
育ててくれて、ありがとう。
ありがとう。
ありがとう、大好きだよ。
「ありがとう。」
____「昨日の夜、佐々波美代さん、樹さんが遺体で発見され、意識不明の重体の春樹くんが保護されました。犯人は娘の佐々波累さん、自宅で保護されました。どうやら虐待を受けていた模様です。」
- Re: 触んな触れんな近づくな。 ( No.3 )
- 日時: 2016/04/10 19:43
- 名前: 青空苹果 (ID: dDPEYPay)
学校に来ると、いつも以上に教室が騒ついていた。
人の声というものは何故これ程までに不快にさせるのだろう。無論私の声も。
「あ、っ、と、と…わ、ちゃん。」
久しぶりに聞いた声は、刹那のものだった。
大きく目を見開き、一歩後ずさる。
刹那は、小さく震えながら、細く、枯れた声で言った。
「佐々波さんが、捕まったって、お父さんをころして、弟も意識不明って、お母さんもしんじゃったって……。」
自分で言っていることなのに余程動揺しているのか、文法がなっていない。
でも____
「どうでもいいよ、そんなこと。」
そう言って席に戻ろうとした___
「永久ちゃん!」
「ごめんなさい
許してくださいお願いします
もう痛いのはいやなんです。
辛いんです。
もう佐々波さんもいない、
誰も私をいじめる人はいない
だから許して
ゆるして
ゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるしてゆるして……
ゆるしてよ!!!!」
狂ったように叫ぶと、刹那は教室を飛び出した。
呆気にとられていたクラスメイトは、どっ、と私が教室に入ってきた以上の騒がしさに包まれた。
- Re: 触んな触れんな近づくな。 ( No.4 )
- 日時: 2016/07/01 20:26
- 名前: 青空苹果 (ID: gI7kIfkJ)
彼女は狂ったふりをしている。それを、僕は気づいていた。気づいていたのに、助けてあげなかった。だから、彼女は”本当に”壊れてしまった。
佐々波さんがいない今、彼女は壊れてしまったのだ。彼女が今まで平静保っていたのは、佐々波さんからのいじめによる感覚の麻痺だ。
「ま、別に僕はどうでもいいんだけどね。」
そう。僕は刹那はどうでもいい。大切なのは永久だけ。
大事な永久。僕の永久だ。
+++
「せつなっ! たっくんと一緒にセミつかまえにいこっ!」
麦わら帽をかぶった幼い少女がふわりと笑みを浮かべ、もう一人の少女を誘う。
後ろには、小柄な体格のあどけない顔立ちをした少年がたっていた。
「うん、行く!」
そう返事したもう一人の少女だったが、立ち上がるとその場で止まった。
「……どうしたの?」
「おねえちゃん、セミさん、可哀想。セミさんって、ちょっとしか生きられないんでしょ? なのに……可哀想。」
麦わら帽をぎゅっと掴み、少女は応える。
「しょうがないもん。だって、だってセミさん____弱いもん。」
+++
ここまで見てくださった方へ。
参照が100を突破しました。
本当にありがたいです。
ですが、受験期なので今後更新は止まります。(今まで止まってきたけど)
本当に申し訳御座いません。
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