社会問題小説・評論板
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- まやかしの鎖
- 日時: 2016/10/16 17:31
- 名前: ハルタ (ID: l8Wvg9Qa)
人は誰しも、縛られて生きている。
自由な人間などいない。本当に自由ならば、法律などに左右されず自分のしたいことを堂々と成し遂げるからだ。そして、誰の顔色を窺うこともなく、周りに媚びることもなく。ただ毅然とその場に存在することができる。
誰になんと言われようと己の道を進む。それが自由を貫く人間の生き様だ。
ただ、現代の日本においてそんなことは許されない。国民一人一人に名誉や義務、権利が与えられる。決して、法律に反するような行為をしてはならない。無論、法律に逆らった場合は罰せられる。それは日本だけでなく、他国でも行われている制度である。世の中を守るためであり、自分たちの名誉のためでもある。
人は皆、縛られていると感じている。
我を自由にしろと泣き叫ぶ。
ただそんなものはまやかし、つまりニセモノだ。
人類は日々、自分自身の意志でまやかしの鎖に繋がれ、我を助けろと怒り狂うのだ。
- Re: まやかしの鎖 ( No.1 )
- 日時: 2016/10/16 17:36
- 名前: ハルタ (ID: l8Wvg9Qa)
一輪の花が、そこにあった。
花言葉はわからない。ましてや花の名前すらもわからない。
ただぼうっと、何処かを見つめるように毅然とその花は咲いていたのだ。
少女はその花に近づき、その美しさに目を奪われる。誰に邪魔されることもなく美しく咲く花に魅了され、そのたくましさに感心すら覚えた。
やがて少女はその花を独り占めしたいと思った。この美しい花を永遠に私の元に置いておきたい、そう感じたのだ。それは全く悪いことではない。人間、美しいものを見ると独占欲が湧くものだ。それは本能であり、どんなに頑張ろうとその欲に勝つことはできない。
が、少女はすんでのところでその欲を抑えつける。何も無理して手に入れる必要はないのだと思い、その場を後にした。
その美しい少女の心が、後に世界を動かすこととなったのである。
- Re: まやかしの鎖 ( No.2 )
- 日時: 2016/10/16 18:00
- 名前: ハルタ (ID: l8Wvg9Qa)
「ヒスイカズラ。花言葉は、″私を忘れないで″…素敵ね。」
一人、花畑を歩き、見つけた花について思い出したことをぶつぶつと呟いてみる。
ここに植えられている花のほとんどは世界の中でも貴重なもので、本来ならこんなところに植えられるはずもない環境下で育った花を上手いこと組み替えて植えられるようにしたものだ。
「あら、透花。歩いて大丈夫なの?」
「大丈夫よ。そこまでの重傷でもないわ。」
花の手入れをしていた母に声をかけられ、笑顔で頷く。それじゃあと手を振り、また違う道を歩く。
「本当に素敵…。こんな素晴らしい環境に生まれてきて、私ったら幸せだわ。」
自然と笑みが溢れる。まだ足は多少痛むが、それでもこの花畑を歩いていると心が和らぐ。ここは私にとって天国だった。
今朝ケガをしてしまい、全治2週間だと言われたこの足は、まだ少し腫れている。
自室に戻り、痛む足をさすりベッドに横たわる。今朝といっても学校でドジを働き負ってしまったケガだ。いい迷惑をかけてしまった。
窓から見える外の景色はとてもキレイで、恵まれた時代に生まれたなと再度実感する。
この家が私の城で、この県一帯は私のもの。そう考えると、とても幸せな気分だった。
- Re: まやかしの鎖 ( No.3 )
- 日時: 2016/10/16 19:41
- 名前: ハルタ (ID: l8Wvg9Qa)
綾瀬透花、14歳。綾瀬財閥の一人娘で、小さい頃から武道に学問にと努めてきた。
お父さんは毎日忙しくて、あまり顔を合わせたことはない。ただ毎年私の誕生日には必ず帰ってきて、これでもかというほど盛大に祝ってくれる。
私はそんなお父さんが大好きで、もちろん、お母さんのことも大好きだ。
仕事や体調の関係で家にいることの多い母は、いつも私を可愛がってくれる。お父さんがいない分、私に愛情を注いでくれる。
そんな恵まれた家庭を与えてくれたお父さん、決死の覚悟で私を産んでくれたお母さんには感謝してもしきれない。
不意にコンコンとドアがノックされ、我に返る。
「お嬢様、体調の方は大丈夫でしょうか?」
使用人がケーキを持ってきてくれたようだった。こんな小さな娘、いわば餓鬼に頭を下げていただくのもたいへんなことだ。何より申し訳ない。大の大人にペコペコされるのは私自身あまり好きではないが、それを両親に相談すると
「透花は本当に心優しいなぁ。」
「ごめんね透花。お母さん、あんまり体調よくないから、何方かにお手伝いしていただかなければいけないのよ。」
「透花のためなんだ。ごめんな。」
の一点張り、どうやら使用人を雇うのをやめるつもりはないようだった。
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