社会問題小説・評論板

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君は最期を知らない
日時: 2016/10/23 19:48
名前: あみさだら (ID: l8Wvg9Qa)

「ねぇ、なんで永原さんが死んだか、あなた知ってる?」
鈴のような声で、彼女はそう私に問いかけた。
「──永原さんを殺したのは、私」
「私が、永原さんを殺した」
目の前にいる私ではなく、誰かに囁きかけるように。彼女の言葉は静かに消えていった。
「でも、柊さんを殺したのは私じゃない」
「なぜって?だって犯人が分かっているもの」
「あなたでしょ?柊さんを殺したのは」
怪しく笑う彼女の手には、恐らくそれで永原を殺したのであろうトロフィーが握られていた。
「どうして、永原さんを殺したの?」
突然私が口を開いたから驚いたのか、やや目を見開き、口角をあげる”彼女”。
「憎かったのよ」
それだけ言って、彼女は私にトロフィーを振り下ろす。
「あなただってそう。あんた達が…私の邪魔ばかりするからっ…!!!!」

Re: 君は最期を知らない ( No.1 )
日時: 2016/10/23 20:01
名前: あみさだら (ID: l8Wvg9Qa)

私の名前は金沢遥。此処、美山女子学院の頂点。

「あ、遥さん、おはようございます」
「おはよう」
「遥さんっ昨日のテレビ見ましたっ!!」
今日も私の取り巻きがご機嫌取り大会を始める。そんなことしたって、私の一人一人に対する感心なんて変わるわけないのに。

ただ、こいつは違う。
「遥さんじゃないですか。おはようございます。今日も学校にいらっしゃったんですね?」
「──永原」
永原真由。大してかわいいわけでもお金持ちなわけでもないが、いつもやや上から目線の言葉を私に投げかける。言葉遣いこそ相手を敬うような態度だが、いつもニヤニヤと口角を上げて話すその様が私は気に入らない。
取り巻きたちも、彼女の私に対する態度は鼻につくようだった。
「何よ永原、あんたいつもいつも」
「遥さんに対して失礼なんじゃないの?」
キャンキャンと騒ぐ取り巻きにその場を任せ、私は一人、自分の教室の自分の席に座る。

いつまで永原はあのことを許さないつもりなのだろうか…。

Re: 君は最期を知らない ( No.2 )
日時: 2016/10/23 20:15
名前: あみさだら (ID: l8Wvg9Qa)

永原真由とは、初等部にいた頃出会った。
忘れもしない小学4年生の秋に、私はクラスメイトをいじめていた。確か名前は──橋野美鈴。今はもう転校してしまって、この学院にはいない。なんだか日頃のムシャクシャした気分を晴らしたくて、私は橋野をいたぶり、ストレスを解消していた。

そして、いつものように橋野の靴箱から革靴を取り出し、トイレの便器に投げ込んだ瞬間のことだった。永原真由に声をかけられたのは。

「みーちゃったっ」
背後から声がして、驚いて振り返ると、そこには永原真由が立っていた。
私は橋野をいじめていたと言っても、複数人で集中的にいじめたことはなかった。いつも一人で。私だけの秘密にして。橋野は私専用の人形だったからだ。
おまけに家では厳しいしつけをなされていたものだから、私が誰かをいじめているなんて情報が出回ったら…と思い、こっそりと橋野を呼び出し、一人で殴ったり蹴ったり…まあ、一人でやるにしてはかなり過激ないじめだったとは思う。

トイレに突っ込まれた革靴を見て、永原真由はクスリと笑った。
「それ、橋野美鈴ちゃんのでしょ?私知ってるよぉ〜、金沢さんが美鈴ちゃんいじめてるの」
永原と同じクラスではなかった。それなのに、何故バレたのか。橋野がバラしたのか。そんな不安をよそに、あくまでも冷静を装って永原に向き直る。
「何が言いたいの…これは」
「誰かに頼まれた、そう言い訳したいんだ?あはは、無理無理!ガッカリだなぁ、こんなお嬢様が人をいじめてるなんて」
こいつの前で言い訳は通じない、そう直感し、私は諦めて素直に話をすることにした。

「このこと、誰かに言うつもり?」
「ううん、別に。だって私も美鈴ちゃん嫌いだもん。だからさっ」




「これは二人─いや、三人かな。三人だけの秘密にしちゃおうよ」

Re: 君は最期を知らない ( No.3 )
日時: 2016/10/24 16:32
名前: あみさだら (ID: l8Wvg9Qa)

それからだ。永原が私に対して馴れ馴れしい態度を取るようになったのは。
今でこそ、私の取り巻きがどんどんと増え、態度は重視されているものの、永原は私にいつもニヤニヤと気味の悪い笑顔で話しかけてくる。
それは昔から変わらなかった。
きっと、永原は何かのキッカケであのことをバラすつもりだろう。

「──さん、遥さん?」
「えっ」
「大丈夫ですか?顔色悪いですけど…」
言われて初めて、自分がとても真剣な顔をしていたことに気付く。頬に触れると、やや冷たかった。
「あぁ、ごめんなさい、少し考え事をしてたみたい」
とっさに笑顔を作り、いつもと変わらぬ態度で取り巻きと会話をする。

そんな私を、永原真由は見つめていた。


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