社会問題小説・評論板
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- 最期の言葉
- 日時: 2017/03/19 12:10
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
あの子が最期に言った言葉を、私は忘れない。
- Re: 最期の言葉 ( No.1 )
- 日時: 2017/03/19 12:23
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
東花園女子学園は、至って普通の女子校だ。
生徒一人一人が自然を愛し、勉学に励み、清く正しい心を育むために造られた、平和な学校。
お嬢様気質な人間が多く通うが、ちらほらとランクの高い一人娘などがいる以外には、大した身分の差はない。稀に、上の人間が威張ることはあれど、この学校特有の“清らかな心”のおかげで大きな問題は起こらずにいた。
そして私─西大谷陽華も、幼い頃からこの学校に通い、心からこの学校を愛する人間の一人だった。
私は親が大企業の社長ということもあって、かなり上のランクにいた。それでも上には上がおり、私よりも権力を持った者は在ったが、特に不満を感じることもなく楽しい毎日を過ごしていた。
それが、先月転校してきた彼女のせいで、一変した。
- Re: 最期の言葉 ( No.2 )
- 日時: 2017/03/19 12:36
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
「堀川水樹です。よろしくお願いします」
そう言って頭を下げた彼女の身なりに、私を含めたクラスメートは唖然とした。
お世辞にも可愛いとは言えない顔立ちに、だらしない服装。ボサボサの髪に、どことなく不潔感を覚えた。
「え…ちょっとやだ…」
「何、この子?」
教室のあちこちから、そんな声が聞こえる。
私も隣の席の子と目配せをし、「ありえない」と苦笑した。
あまりにもこの学園に似合わない彼女は、あっという間に学園中の話題となった。
中等部はどの学年も2クラスなので、この2年生のフロアでも、A組の人間が転校生の顔を見にこのB組の教室へやってきては嫌味ったらしく笑って帰っていく。そしてそれが上級生や下級生に伝わり、どんどんと野次馬は増えていった。
- Re: 最期の言葉 ( No.3 )
- 日時: 2017/03/19 12:45
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
注目の的にされた彼女は、ただ席に座って下を向いていた。そこに、1人の少女が近づいた。
「ねぇ、あなたのお父様やお母様は、どんなお仕事されてるの?」
口角を上げて小馬鹿にしたようにそう問いかけたのは、中等部2年でトップの権力を持つ同じクラスの西園寺愛子。父親は西園寺グループの会長であり、その一人娘の愛子は私よりも力を持っている。
だからたまに、彼女はクラスメートを顎で使ったりもしていた。けれども私は彼女の次に権力があったので、良い意味で愛子のお気に入りだった。
そんな愛子に話し掛けられても顔を上げることなく、堀川水樹は小さく言った。
「お母さんは、仕事してません。お父さんは、普通のサラリーマンです」
それを聞いた周りの人間が、一斉に吹き出した。
「なによそれ、とんだ身分違いね!!」
「ムリしてまでここに通わないで?学園の印象が悪くなるわ」
確かに、彼女の家庭や身なりからして、この学園は不釣り合いだ。そう思った私は、一緒になって笑った。
- Re: 最期の言葉 ( No.4 )
- 日時: 2017/03/19 12:49
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
「やだ、笑っちゃかわいそうよ。いくら堀川さんでも」
愛子は不気味な笑顔のまま、周りを制した。
「ねぇ?私ずっと思っていたの。この学園は平和すぎじゃないかって。だから、少しくらい、邪魔者を始末してもいいんじゃないか…って」
私はそれだけで、全てを察した。
周りの人間も、察した。
大きく息を吸い、愛子は周りにいる生徒、そして何より堀川に向かって言い放った。
「堀川水樹はこの学園の邪魔者よ。今日からみんなで始末しましょう」
- Re: 最期の言葉 ( No.5 )
- 日時: 2017/03/19 13:00
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
その日から、中等部2年生の中で『邪魔者を始末する』動きが始まった。
あくまでもこの学園の印象を守り抜くために、下級生や上級生、そして教師にバレないようにひっそりと。
最初はささいな嫌がらせだった。すれ違い際に悪口を言ったり、蹴ったり、転ばせたり。
それがだんだん過激になっていって、私も参加するようになって。そして現在に至る。
堀川が転校してきて一ヶ月。この期間中に、堀川への嫌がらせはいじめへと変わっていった。
私はいつものように愛子の側にいる。堀川が転校してくる前から愛子の取り巻きになっていて本当によかった。そのおかげで、私は愛子の堀川いじめに主犯グループとして参加できるし、何よりターゲットにされることがない。余計なことをして愛子に睨まれるリスクがない。
今日は、堀川の私物に悪戯をしていた。
愛子の取り巻きである、私と南野朱梨。そしてクラスメートが何人か加わり、6人くらいで堀川の机を漁っていた。
ペンでぐちゃぐちゃに塗りつぶして読めなくしたり、泥水に投げ込んだり。終いには机にまで落書きをして、大声で騒いだ。
私は愛子と笑いながら、堀川の体育着を取り出してハサミで切り刻んでいた。ジャキ、ジャキッと音がするたびに、なんともいえない優越感に浸っていた。
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