社会問題小説・評論板
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- 大好きなモノ【銀色の注射針】
- 日時: 2017/04/29 22:40
- 名前: アマテラス (ID: PLnfHFFW)
あなたにとって、何があっても手放せないもの、それって、何ですか——?
私が手放せないもの、それは——。
≪目次≫
・西条 歩 (サイジョウ アユミ) 編 【銀色の注射針】
- Re: 大好きなモノ【銀色の注射針】 ( No.1 )
- 日時: 2017/04/29 22:59
- 名前: アマテラス (ID: PLnfHFFW)
ある、日曜日の午後だっただろうか。私が、幸せと巡り合えた、運命の日は。
運命の日といっても、それはどんよりとした曇りの日に、美奈とショッピングに行った日のことだった。私は途中で迷子になって、真っ暗な路地裏に迷い込んで、そしたら、小さなお店があったっけ。
私はその時、警戒したけど、同時に、好奇心もあった。結局そっちのほうが勝り、お店の中に入り込む。
中に入ると、金髪のお兄さんがいた。
「何円?」
「は?」
「ああ、すみません、初来店ですか」
にいっと笑うと、小さな声で話し始めた。
- Re: 大好きなモノ【銀色の注射針】 ( No.2 )
- 日時: 2017/05/05 23:19
- 名前: アマテラス (ID: PLnfHFFW)
「ここは、美容の専門店で、サプリなどを中心に扱っております」
「はあ」
後ろの薬棚に目をやる。中は良く見えないが、結構な数があった。
「あなたぐらいのお年頃だと、やはり、気になりませんか。どんなに友達に可愛いといわれたって、どこか顔のパーツが嫌だとか、足が太いだとか、そんな風に考えていませんか」
「ええ」
「そこで、このお店があるのです。少し手を、こちらに出してみてください」
そっと、手首を差し出す。なんだかいつもより、静脈が透けて見える気がした。正直、こんなの信用してない。もしかしたら、覚せい剤の一種かもしれない。でも、もしそうだったらやめちゃえばいいし、効果があれば続ければいい。
チクリ、手に痛みを感じる。注射針が、血管にずぶりと刺さっていた。少しだけ、血があふれる。
「初回、サービスですよ。無料です。また、ご来店くださいませ」
首をかしげ、手首を見つめる。これは、無毒なのではないか。店を出て、少し歩き始める。もう、美奈と合流するのは、あきらめよう。
と、その時だった。急に心臓が、ドクドクとなったような気がした。目の前が一瞬真っ白になり、そのあと、何か、とても楽しい気分になった。
受験のストレスも、学校のストレスも、親のストレスも、全部なくなったような気がする。
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