社会問題小説・評論板

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あの子と私。
日時: 2017/09/09 12:29
名前: なまた (ID: LJMHYFdO)

あの子と私は友達だった。

そう、友達、″だった″のだ。

「萌ーっ」
あぁ、みんなが呼んでる。

この世には天と地しかないのだ。
私は軽く振り返り、笑う。



「───ザマアミロ」

Re: あの子と私。 ( No.1 )
日時: 2017/09/09 18:57
名前: なまた (ID: Y9aigq0B)

私が天で舞う女神だとしたら、あいつは地の底で傷付いた翼を必死に動かす堕天使だ。

私は口角を上げる。ふわりと髪をかきあげ、隣にいた下僕に話しかける。
「ねえモモ、靴が汚れちゃったわ」
「──」
「モモ?聞いてるのかしら」
私が這いつくばったモモの腹に蹴りを入れると、
「…あぐっ!!…わ、ワン…」
情けない声を出し、モモは私の靴を舐め始めた。
「モモ、餌の時間よ」
麻那がドッグフードを持ってくる。私はそれを受け取り、モモの首輪に繋がったリードを乱暴に引っ張った。

「──ほらご褒美よ、″モモ″」

Re: あの子と私。 ( No.2 )
日時: 2017/09/09 22:13
名前: なまた (ID: LJMHYFdO)

周りの人間によって強引に口を開けられたモモの口に、ドッグフードを流し込む。

「ほら、おいしいでしょう?」


2年5組は私、花垣 萌の独裁国家。
誰も私に刃向かわないし、奴隷のように動いてくれる。
そして何にも変えず一番楽しいのは、「下僕」。

下僕──つまりは、イヌ。名前はモモ。
このクラスでは私の気の向くままに、下僕が決まる。始まったきっかけは分からない。実に突発的な出来事だったと思う。それ以降、みんな″モモ″になりたくないから私のご機嫌を窺って作り物の笑顔を浮かべているのだ。

そのせいで誰からも機嫌を損ねられなかった私の下僕は、4か月もずっとこいつだ。

篠原亜代、私の友人であり良き理解者だった屑。

Re: あの子と私。 ( No.3 )
日時: 2017/09/09 22:20
名前: なまた (ID: LJMHYFdO)

もう私にとってこいつは、篠原亜代ではない。
人間ですらないのだ。
こいつはただの、下僕なのだ。

「うぐっ…ゲホッゲホッ…!!」
やかましいモモの咳き込みは、9月になってもまだ鳴いている蝉の鳴き声よりも鬱陶しい。
「うぅっ…うがっぁ…」
「……あらあら」
耐えきれないようにモモはドッグフードを吐き出す。床にモモの唾液とドッグフードが落ちていく。
「汚いわね、この駄犬!!!!」
取り巻きの一人がモモを強く蹴る。それを合図のように、周りにいた人間が一斉にモモを蹴り始めた。
「モモ、謝りなさい」
私はリードを引っ張り、涎にまみれた汚らしい顔を向けさせる。
「せっかくあなたの餌をあげたのに、吐き出すなんて悪い子」
ぐいぐいとリードを乱雑に引っ張る。その度に首輪が締め付けられ、モモは苦しそうにもがいた。

「謝りなさい」
冷徹な瞳で、私はモモを見下す。
あぁいい気味だ。もっと溺れろ。もっと堕落しろ。

もう二度と這い上がれないほど、翼を切り刻んでやる。


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