社会問題小説・評論板
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- 『へその緒』
- 日時: 2017/10/21 00:03
- 名前: 彩葉つむぎ (ID: PLnfHFFW)
母と子をつなぐ、決して切れない——『へその緒』。
そう、何があっても、決して切れない。だから、私は、いつも、こんなに——。
***
≪目次≫
№1 高杉 千夏
- Re: 『へその緒』 ( No.1 )
- 日時: 2017/11/12 17:26
- 名前: 彩葉つむぎ (ID: PLnfHFFW)
——首を絞められるような、息苦しさ。
——『ような』? あはは、違う、あたし、今、本当に、首を絞められてる。
——『誰に』? ……二人目の、ママに。
「あ……あっ……ぐぅうっ……げほげほっ、がはっ」
カーテンから、少しだけ漏れ出す日の光。それがこの部屋の光すべて。ママがあたしの上に馬乗りになって首を絞めているのが、影からわかる。
——苦しいの?
——いいえ、そこまで。
ぷつり、と記憶の糸がちぎれた。
「千夏ちゃん愛してる」
「千夏ちゃん好きよ」
「お前なんか死ねばいいのに……」
「お前が生まれたせいで、ママから自由はなくなった」
四方八方から、ママの声が。
『一人目』のままと、『二人目』のママ。
体は一緒だけど、中身が、くるっと、変わっちゃうの、不思議だよね……。
——でもね、あたし信じてる。ママは、本当はあたしのこと、愛してるって。
ああやって、暴力をふるって、暴言を吐くのだって、仕方ないもん。
あたしんち、『ボシカテイ』だからさ。
「千夏ちゃん……?」
ママがゆっくりと振り返る。
赤く染められた、唇。お仕事の、合図。
唇が、ゆっくり、ゆっくりと吊り上がって、にっこり。
——あたしはね、こんなママを、信じてるよ?
ママがゆっくりとドアを開け、夜の世界へ旅立っていくのを、私は、見た。どんな仕事をしに行くのかだって——。……でも、これは夢だということも、知ってる、とっくに。
——もう一度、記憶の糸が、ぷつり、途切れた。
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