社会問題小説・評論板
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- ベノム かいりきベア
- 日時: 2021/06/21 20:21
- 名前: 萌 (ID: wxZ0SJGK)
ベノム
かいりきベアのベノムという歌を元にこの話を作ってます!
今回は、精神的病気など(オーバードーズ系)の描写がありますので、苦手な方は退出してください。
リスカや、薬を推奨してるわけではありません。
登場人物
・宮美結衣(みやびゆい)
・金谷海斗(かなやかいと)
・城島優香(きしまゆうか)
・山本友美(やまもとともみ)
・前田翔(まえだかける)
もっと、もっと。
もっと飲まなきゃ。治らない。
違うか、薬なんかに頼っても、私の病気は治らない。
切ればいいんだ。切れば。
1見たことのある人
今日から高校生か。
何だか実感がわかないな。
そう思いながら私、宮美結衣は真新しいセーラー服に着替える。
中学の時の仲良かった友達とは離れ離れ。
でも私には唯一の救いがいた。
金谷海斗だ。
海斗は私の初恋、今も片思いしている人だ。
小学校で出会い、中学も同じだった。
とは言っても、中学では同じクラスになれないし、会うこともなかったから、全然進展がない。
でも海斗と久しぶりにLINEしたら、高校も同じらしい。
「同じクラスだといいな。」
ついそんな独り言が出てくる。
「結衣ー!早く朝ごはん食べなさーい!」
「はーい!」
お母さんと同じくらいの大きさで返事を返す。
そんな大きい声出さなくても聞こえるのに。
時計を見るともう7時15分だった。
30分には出ないと間に合わない。
私はお母さんに言われた通り、下に降りてご飯を食べた。
「忘れ物ない?前髪留めたの?」
うるさいな。相変わらず過保護なんだから。
うるさいお母さんをスルーして玄関を出る。
学校は八王子東高校だ。
駅までが15分、電車で30分、電車を降りて10分くらいのところにある。
かなり偏差値が高く、有名な高校だ。
駅に着くと、同じ高校の制服を着ている男女がいた。
カップルなんだろうな。
すごい仲よさそうに手を繋いで電車を待ってる。
目を背けていても、かなり声が大きくて、会話が聞こえてくる。
そんな仲で聞き覚えのある名前が聞こえた。
「えー?でも海斗、カッコいいし、モデルくらいできるんじゃない?」
「そんなことないよ。優香だってかわいいし。」
海斗?
そんな訳ないと頭が必死に否定する。
海斗なんてどこにでもいる名前だし!
あんなチャラそうな見た目じゃなかったし!
目の前にいる「かいと」という人は、髪を金髪に染めていて、ピアスも開けている。
制服もかなり着崩していて、不良というイメージだ。
優香と言われてる女の子はすっごいかわいい子で、スタイルが良くて、少しギャルっぽい。
この2人にはできるだけ近づきたくないな。
そんなことを思ってしまった。
でもこの男の子の横顔は、確かに海斗によく似ていた。
それに、どこかで見たことがあるような気がする。
2 海斗との再会
学校に着くと、「5組です」と若い教員に伝えられ、1年5組の教室に行った。
教室に入ると、半分くらいの人が教室にいた。
その中に、隣り合って座っているさっきのカップルがいたのだ。
机に貼ってあるネームマグネットを見ると。
そこに書いてあった名前は『金谷海斗』だった。
私は少しの間、立ち尽くしていた。
これが、海斗?
海斗は違う!こんな人じゃなかった。
優しい黒い目をしていて、鼻はシュッとしていて、口は優しそうに弧を描いていた。
それでもその顔は、目の前にいる『金谷海斗』の顔とすごい似ていた。
「海斗……?」
思わず声が出ていた。
シンとしている教室に私の声が響く。
「は?誰だお前。」
やっぱりそうだよね!
海斗はこんなんじゃないもん。
こんな不良じゃ、ないはず。
「あー!もしかして、結衣?ごめん!忘れてたわ!」
そんな風に笑う『海斗』を目前に呆然としていた。
本当に海斗なんだ。
私は忘れられてたんだ…。
私はずっと好きだったのに。
そんなことを思うと同時に、海斗の隣にいる彼女らしき人への怒りがこみ上げてきた。
この人、小学校ではいなかった。
中学からの付き合いなのかな?
私の方が、先に会ってたのに…!
彼女の名前を見ると、『城島優香』と書かれていた。
「海斗、知り合い?」
心配そうに優香ちゃんが言う。
「まぁな。昔の。紹介するよ。こいつ、結衣。俺の小学校の時の友達。こっちは優香。俺の彼女。」
見せつけるように海斗が言う。
それでもそんなことは頭に入ってこなかった。
『昔の』『小学校の時の』
実際そうだ。中学に入ってからは会ってもない。
昔の友達。そう紹介されてもおかしくはない。
でも私は。そんなんじゃ嫌だった。
海斗の一番が良かったのに…!
3 2人の友達
「ねえ。結衣ちゃん!LINE交換しない!?」
次の日、お弁当を食べようとした時に話しかけてきたのは、昨日の、海斗の彼女。城島優香ちゃん。
「うん。いいよ。」
「やった!仲良くなりたかったんだ!」
あぁ。この子、かわいいなぁ。海斗が好きになるのもおかしくないのかも。
女の私でもかわいいと思うほど、優香ちゃんはかわいかった。
でもその分妬ましかった。
「あの。私もLINE交換してもいい?」
優香ちゃんの後ろから出てきたのは、知らない女の子だ。
クラスは同じなのだろうけど、まだ入学2日目だ。
名前も顔もまだ覚えてない人がおおい。
「いいけど。名前は何?おしえて?」
「あ、ごめんね。私、山本友美。人見知りだから、友達少なくて。仲良く、なりたいなって思って。」
最後の方はごちゃごちゃになっている。
よほど緊張してんのかな?
「いいよ。LINE、交換しよ。」
「本当?嬉しい!」
この子はセミロングくらいの長さの髪の毛で、派手ではないけど、小柄で笑顔がすっごく可愛い。
お弁当を一緒に食べる約束をして、友美ちゃんがお弁当を取りに戻った。
「ねぇ。優香と結衣ちゃん、もう友達だよね?」
綺麗なロングヘアをなびかせて言う。
「え?あ!もちろん!」
「良かった。じゃあ、またあとでね!」
そう言うと小走りで自分の席に戻る。
多分、海斗と一緒に食べるんだろうな。
「結衣ちゃん、お待たせ。」
「うん。食べよっか。」
私は極力、友美ちゃんの声しか聞こえないようにお弁当を食べていた。
それでもあの声は聞こえてきた。
「ほら、海斗。優香の作った卵焼き、好きでしょー!?」
「好きだよ。」
「ほら、食べさせてあげる。あーん」
言われるがままに口を開ける海斗と卵焼きを食べさせる優香ちゃん。
周りから見ればお似合いだった。
「結衣ちゃん?」
「えっ?あ、ごめん。」
「……」
「ごめん。怒った?」
思えばさっきから、海斗たちの声を聞いてはぼーっとするを繰り返している。
「ねぇ。結衣ちゃんって海斗くんのこと好き?」
「…えっ!?そんな訳ないじゃん!」
「顔、真っ赤だよ。ねぇ。そうでしょ?」
「……うん。」
「やっぱそうだよね。昨日の朝とか、すごい傷ついた顔してたよ。」
「見てた?」
「うん。海斗くんたちの会話見てる時だけすごい悲しそうな目、してる。」
「そうかなぁ。」
そりゃそうだよ。
心の中では今出た声とは違うことを思う。
だって小学校一年生から好きなんだもん。
9年くらい前から。
でも。あんな見た目になっちゃってる。
そう思いながら海斗を見る。
金髪でところどころ黒い。
耳にはピアスも付いていて、第一印象は最悪だ。
「まぁでももう高校生だし!海斗のことは忘れる!」
「そっか……」
忘れる忘れる!海斗なんて大嫌い!
海斗なんて、大嫌い……。
3 勉強会
「ねぇ、ここ教えてくれる?」
そう言って困ったようにノートを差し出すのは、隣の席の前田翔くん。
「えっとここは、XとYをかけるから、答えはこうやって出すの。」
「そういうことか。サンキュ。」
翔くんは頭は少し悪いけど、カッコ良くて、人気者。
本人は気づいてないみたいだけどね。
私はそこそこいい席にいる。
左隣には翔くん。右隣には友美ちゃんがいるから。
私のクラスは出席番号順に横並びで並んでいる。
だから、海斗と優香ちゃんは結構まえの方で、視界には入らない。
海斗のことなんて忘れる。席が遠くて良かった!
そんなことを考えていると、「今日、ここまでなー!ちゃんと予習しとけよー!」
と大きな声で先生が言う。
はぁ。来週か。テスト。
入学から1ヶ月くらいたったから、もう直ぐ最初のテストが始まろうとしている。
「ねぇ、結衣ちゃん!今日さ、海斗と翔と友美と優香の家で勉強するんだけど、結衣ちゃんもくる!?」
授業が終わって直ぐにきた優香ちゃん。
翔くんも友美ちゃんも一緒ならいいかなぁ。
海斗のことなんて気にかからないし、テスト勉強も1人じゃ進まないし。
「うん。行く。」
「良かったー!じゃあ放課後、八王子駅に集合ね!」
「うん。」
短い返事をすると、すぐに優香ちゃんは海斗の元に走っていく。
本当に仲いいんだなぁ。
「みんな来たー?」
「一応みんないるよ。」
「よし!じゃあ行こー!」
1人でノリノリだなと思ったけど、口には出さないでおく。
「着いたよ!」
駅から5分くらいの所にあったのは普通よりも少し大きな家だった。
「優香ちゃんのお家、大きいねぇ。」
「うん。友美ちゃんの家はどんな感じ?」
「ねぇ。私たち友達でしょ?友美でいいよ。」
「そっか。じゃあ、私のことも結衣で。」
「おっけ。」
「ほら、そこで話してないで入ってよー!」
家の中も少し豪華な感じだった。
大きなお家というよりか、小さなお屋敷というイメージだ。
「じゃあ、早速勉強するかー!」
優香ちゃんの部屋は広くて、30人くらい人が入れるくらい。
だから、自然と私たちはバラバラに勉強するようになった。
向こうには海斗と優香ちゃん。
こっちには私と友美と翔くん。
結局こうなるんだよねー。
まぁ都合がいいけど。
「ねぇ。お前らって出身中学同じ?」
「ううん。私たちはバラバラ。」
「そっかぁ。俺はこの中で出身中学同じの人1人もいないけどな。」
「えっ!そうなの?なのにあんなに人気者なんだ!」
友美がびっくりしたように言う。
「でも俺と友美は幼稚園と小学校同じだろ?」
「えー!そうなんだ。案外お似合いだね。」
「ちょっと結衣!どうゆうこと!?」
「えー?だって翔くんはかっこいいし、友美は超かわいいでしょ?だから、お似合いだなーって。」
「なんで友美の時は『超』可愛いなのに、俺の時は『超』がないんだ?」
「そのまえにお似合いを否定してよ!」
やっぱりお似合いかもしれない。
この2人だったら応援できるなぁ。
「はいはい。で?結衣は誰と出身中学同じ?」
翔くんが話を戻したから、私は返答を探すために、お似合いの考えをシャットダウンする。
「えーっと。海斗とは幼小中同じだよ?中学では一回も会わなかったけどね。優香ちゃんも多分同じ。」
「へぇー。それでかー。」
友美がひとりで納得するように頷く。
私が海斗のこと好きだったの知ってるからなぁ。
「さぁーて。そろそろ帰ろっか。送るよ?」
「サンキュ。」
優香ちゃんが声をかけ、帰ることになった。
最後の『送るよ?』はきっと海斗だけに向けられた言葉なんだろうな。
駅で優香ちゃんと海斗とは別れ、私と友美と翔くんで一緒に帰ることになった。
「でも、楽しかったねぇ。」
「まぁな。おしゃべりだけは。」
「翔、全然勉強してなかったしねー!」
「し、してた、してた!」
「あはは!本当かなぁ?」
翔くん、意外に面白いかも。
こうゆう所が人気なのかなぁ。
「なぁ。今度は俺ら3人で遊ぼうぜ。海斗と優香と遊んでも、結局あの2人でいちゃいちゃするもんな。」
「うん……」
「そうだね!」
私が落ち込んでるのを見て、友美が元気に言う。
優しいなぁ。
「じゃあLINEしようぜ!グループLINEも。」
「おけー!」
結局その約束が果たされることはなかったけど。
4 孤『毒』
私には友達がいっぱい出来た。
でも、なにかが足りない。
私の人生に足りないものって何?
校内は猛毒。そんな言葉を聞いたことがある。
なんでだろう。心にはみんな毒を抱えている。
それが校内なのは、私にとっては生産性がないからだ。
友達と仲良く戯れて、何が楽しいのだろう。
この前の勉強会以来、私はそう感じるようになった。
もちろん、勉強会の最中はとても楽しかった。
翔くんとも友美とも仲良く話せたのが楽しかった。
今では。違う。
『ねぇ。結衣?明日遊ぼうー』
『ごめん。無理。』
『そっか。』
最近はこんなLINEが続いている。
めんどくさい。それに、楽しくない。
「ねぇ。結衣。ちょっといい。」
「?…うん。」
言われるがまま廊下に出る。
「あのさぁ。なんで最近私の誘い断ってばっかりなの?」
「え、それは、その…」
「もういいよ。結衣、私と遊びたくないんでしょ。だったらもういい。」
「違うよ!」
私の声を無視して友美は席に戻る。
どうしよう。
友美がいないと。
『もういい。』
その言葉を思い出した。
私も同じ気持ちだったんじゃないか?
めんどくさいからいい。
思われる側はこんな気持ちだったんだ。
仕方ないか。
「あ、翔くん!」
「あのさ、もう話しかけないで。」
「…なんで?」
「俺さ、嫌われるの嫌いなんだよね。お前、最近誘いを断ってばっかだし。」
友美と全く同じことを言われて、びっくりする。
翔くんなら友達だと思ったのに。
こうして私は2人も同時に友達をなくしてしまった。
孤独。違う。
孤『毒』か。
5 毒抜き
あれから、私はひとりで過ごすようになった。
昼休みもお弁当も。
翔くんと友美はいつも一緒にお弁当を食べている。
もう付き合ってるのかな?
構って欲しい。みんなに心配して欲しい。
私は、ひとりで過ごすようになってから、みんなからの視線が違って見えた。
前は普通のクラスメイトとして。
今は悪意、軽蔑までも感じられる。
毒が心の中に生成されていく。
早くこの毒を吐き出したい。
吐き出して、みんなと仲良く、平和に。
違う。私はそんなこと、最初から望んでないのかもしれない。
毒が、体の中を回っている。
自分は血さえも毒されているのかもしれない。
どうすれば毒抜きができるの?
切ればいいのか。切れば、毒が抜けるかもしれない。
私は学校から帰ると、近くにあったカッターナイフを持った。
こうしたらいいんでしょ。
みんなが気づいて、心配してくれる。
毒が抜ける。
いいことばっかり。
切らなきゃもっと。もっと……。
愛が欲しい。哀が欲しい。
切れば、もらえる。愛も哀も。
次の日、包帯を手に巻いて学校に登校した。
みんな、驚いたようにこっちを見ていたけど、何も反応してくれなかった。
足りないのかな。
まだ…足りない?
6薬
いつも沈みっぱなしの人生。
ひとりで夜を過ごすうちに、気づいたら日付が変わ
ってる。
私だって。みんなと一緒にいたい。
私は自分勝手なの?
私は前向きな気持ちになろうとしてる。
でも私の心がそれを許さない。
薬、飲んだら治るかな…?
私は薬局でたくさん薬を買ってきた。
何を飲んだら何が起きるのかもわからずに。
でも、飲んだら治る。薬だもん。
私はそれをカッターナイフと一緒に大切なポーチに入れておくことした。
これでいつでもどこでも大丈夫!
私はお弁当の時も、授業中も薬を飲んだ。
傷ついた時は、一度にたくさん飲んでる。
私は自然と薬を飲んだら、気分が良くなることに気がついた。
そういえば。読んでくれた、かな?
気づけばLINEを開いていた。
翔くんと友美との個人LINE。
2人とも。未読だった。
ブロックされてるのかな。
読んでもくれないなんて。
せめて既読ぐらいつけて欲しい。
私のことを気にかけて欲しい。
友達が既読をつけてくれるのは愛。
愛が欲しい。愛が欲しい。
哀なんていらない。愛が、愛が欲しい。
みんなに、心配して欲しい。気づいて欲しい。
私の孤独を。私の孤毒を。
7 毒と私
毒が回ってきている。
前までは痛いだけだった。
前は心が痛くて、辛くて、切っていた。飲んでいた。
でもだんだん、痛いだけじゃなくて、気分が悪くなってきた。
消毒しないと…。
でも、毒は私。
毒は私と共同体。
毒を消してしまったら。
私の存在も抹消してしまうのではないか。
私は、このままでいい。
海斗とも、優香ちゃんとも、友美とも、翔くんとも。
このままでいい。
でも。誰かに気にかけて欲しい。
哀をもらっても傷つくだけ。
でも欲しい。愛も。哀も。
誰か、気づいて。
そう思いながら私は今日も自分を傷つけるのだった。
- Re: ベノム かいりきベア ( No.1 )
- 日時: 2021/07/19 17:10
- 名前: 亞狗兎 (ID: WVvT30No)
もうしわけありませんが、スレをたてる場所間違えてますよ
二次創作ばんだとおもいます
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