社会問題小説・評論板

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

アイは私はカわれないから
日時: 2021/12/25 10:27
名前: 時鳥 (ID: /ReVjAdg)

 ―――。

 通知1。5。21。49。105。
 消えろよ。ウザい。ブスすぎw。
 「海斗」とのメッセージ欄にも通知がつく。
「ぶっちゃけ、キモい。もう俺のこと見ないでくんない?てか、学校来んなよ。」






 気分は最悪なのに、夜空は憎たらしいほど美しかった。
 頭がおかしくなりそうなくらい振動していたケータイは、もう動かなくなっていた。
 ――はは、やられた。まさか塾にまで尾けてくるなんて。
 画面がバキバキのケータイを指で撫でながら、私は親への言い訳を考える。うちの親、怒ると長いから。1ヶ月くらいはインターネット、確実に触れないな。まあ、鬱陶しい通知もなくなることだし、いいけど。
 さっきの襲撃で乱れた髪を、手櫛でさっと梳かす。耳が切れていることに今気づいた。
 フードで顔を隠していたけど、あれは間違いなく雅美だったな。友達だと思ってた自分が馬鹿みたい。
 ふと、雅美が「優しい心」という言葉で書写展に入賞していたのを思い出す。何が優しい心だ。私がいじめられるようになってから、私に優しい心で接してくれたことなんて、一度もないくせに。
 気がつけば空はもう真っ暗で、10時を軽く回っていた。やばい。雅美に殴られたの、結構ショックだったみたいだ。足取りが極端に重い。
 ガンッ!!!!
 突然鈍い音がした。驚いて周りを見渡すけど、暗くてよく見えない。でも多分、この近くの路地裏からだろう。妙に荷物が散乱していて、これ大丈夫なのかなあと思った記憶がある。ちゃんと片付けとけばいいのに。
「た……助けてっっっ!!!」
 どこかで聞いたことある声。そうだ、この声は私が昔焦がれていた声に似ている。休み時間のたび、とりとめのない会話に花を咲かしてくれた、今はもう醜いあの声に。
 この声は少し海斗に似てる。でももう私には関係ない。あれが本当に海斗の声だったとしても、そうじゃない他人の声だったとしても。
「葉山さんっ……!!!」
 押し殺すような声が、今……確かに私の名前を呼んだ……!?
 再び鈍い音がして、今度は荷物が崩れるような音がした。
 私は少し慌てて路地裏を除く。……私、駄目だ。もう海斗のことは嫌いになるって決めたのに。
 暗くてうまく見えないけど、誰かが荷物の中で倒れているような気がする。私はその荷物にそっと手をのべる。
「どこのどなたかわからないけど、大丈夫ですか……」
 私は「わからない」を強調しながら、海斗らしき影にゆっくりと手を差し伸べる。直後、手にあまりにも冷たくぬめった液体の感触がして、思わず後ずさった。怪我してるくせに手はがっしりと握られている。そう簡単に振りほどけそうな雰囲気ではない。
「……ありがとう、葉山さん。」
 無理に繕ったような明るい声。やめてよ。そんな声出さないでよ。自分が何したと思っているんだよ。
 横目で見た男は、確かに海斗のようだった。
「葉山さんだよね?あの、じつは、あ…」
 海斗が言い終わる前に、私は海斗に手を繋がれたのを振り切ろうと走った。海斗の体がぐらっと揺れたのがわかった。
「葉山さ……!!!」
 ガクン、と海斗の体が倒れた。私は思わず後ろを振り向く。そこには、私の知っている、明るくて、強くて、カッコつけたがりな海斗じゃなくて……
 全身を灰色に染めた、あまりに醜い男がそこにいた。
「かっ…‥」
 驚きのあまり、もう海斗の前で動かしてやるものかと決めた口が間抜けな声を出す。やば。
「やっぱり、葉山さんだ……。でも、あの、……」
 海斗は私の壊れたケータイをチラチラ見ながら言う。あんたも主犯格のくせに。怒りがふつふつとこみ上げてきた。
「自分で、壊したの?……それ、その、俺ら、葉山さんに……。」
 ほらまたそうやって仲間を守ろうとする。雅美の罪をなくそうとでも?仲間が悪いことしてるか良いことしてるかとか関係なく肩持つんだ?ふうん。頭悪そう。そして私は、海斗が雅美を好きなことも知っていた。
「なわけないでしょ?立川にやられたんだよ!ふん。性格最悪同士、二人でつるんどけば!?立川雅美と川岸海斗。すっごいお似合いね!!!!」
 そう叫ぶと、私の手を握る力は弱くなった。それでも私は自分の激情を止められなかったし、止めたくもない。言いたかったこと全部ぶつけてやろう。今まで私にしてきた屈辱、恥辱の分だけ。本気でそう思った。そう思ったよ。なのに――
 どうして――どうしてこんなにも胸が痛いの?
 急に罵るのをやめた私の顔を。海斗がおそるおそる覗き込んだ。
 どうして。どうしてそんな心配そうな顔をするの?
 どうして――私は泣いているの……。


続く


小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。