社会問題小説・評論板
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- ファンタジーな僕の日常
- 日時: 2023/08/15 15:54
- 名前: pepe。 (ID: dTbIpO5j)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13780
このノートを見つけた君へ
これから、このノートには、僕の絶対にバレてはいけない秘密と、とある研究所の裏側が記されている。
もし読んでしまったのなら、一つ約束してほしい。
このノートに書かれていることを、絶対に秘密にしてくれ。
僕は今、とある奴らに追われてるんだ。
もし君が、このノートに書いてあった一文だけでも声に出して読めば、今度は君が奴らに追われてしまう。
例え1人の時だろうと、ここで見たものは声に出してはいけないし、なにかにメモしてもいけない。
このノートは、特殊な力を持っていて、奴らには見えない。でも、他のものに写してしまうと、バレてしまうかもしれない。
もう一度書いておく。このノートに書かれていることを、絶対に秘密にしてくれ。
でも、もし奴らに追われたならば、自分じゃなくて、僕を恨めよ。
──R.U
- Re: ファンタジーな僕の日常 ( No.1 )
- 日時: 2023/08/15 16:04
- 名前: pepe。 (ID: dTbIpO5j)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
0.金色の光
『その目は、特別なんだ。何億年先も見通す、美しい、金色の光を放つ瞳。だけれど、その力を、決して悪いことに使ってはいけないよ。』
──祖母から、何度も聞いた言葉だ。
忘れそうになったころに、夢にまで出てくる。
最初に言われた時から、忘れたことは一度もない。
金色の光を放つ瞳。
俺の両親は、純日本人で、俺も完璧な日本人だ。
確かに、人より少し茶色いけれど、金色とは程遠い。
ばあちゃんは、なにが言いたかったんだろう?
そんなことをぼんやりと考えながら、すぐ横で鳴っているのに、すごく遠くで鳴っているような気がする、目覚まし時計の音を消した。
目を開くと、カーテンの隙間から漏れた朝日が、地面に当たってキラキラと輝いていた。
──金って、こんな色かな。
まだ半分くらい眠っている体を、無理矢理起き上がらせると、部屋のドアを開けた。
- Re: ファンタジーな僕の日常 ( No.2 )
- 日時: 2023/08/15 18:07
- 名前: pepe。 (ID: dTbIpO5j)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
1.俺と妹
「…おはよう、母さん。」
俺は、玄関で靴を履いている母さんに言う。
「おはよう。今日は遅くなりそうだから、冷蔵庫に晩御飯入れておいたからね。」
母さんは申し訳なさそうに言う。
「大丈夫だけど…最近残業多くない?無理すんなよ。」
俺の記憶が正しければ、ここ数週間は残業ばかりだったはずだ。
家族のために働いてくれているのはわかるけれど、母さんにはもっと休んでほしい。
「心配してくれてるの〜?大丈夫。今日終わったら三連休だから。行ってきまーす。」
母さんはそういうと、家を出た。
…朝ごはん、食べないと。
そう思い、俺はリビングへ向かった。
俺は、“歌多気 瑠夏”。
どこにでもいる、と言うには、少し足りない。
勉強はそこそこできる。運動も、まあ、いける。でも、なんだろう。
気配?と言うのだろうか。
それが、全くない。
村人Aなんかよりも、全然。
テントウムシの方が、あるかもしれない。
ずっと隣で話していたのに、急に、「お前、いたのかよ!」って言われるのは、よくあることだ。
じゃあ、さっき話していた時は、何を思っていたのだろう。いつも、そんなことばかり考える。
リビングの扉を開けると、いつも通り、母さんの作った朝ごはんがテーブルに並んでいた。
椅子に座って、1人で手を合わせた時。
「あ、お兄ちゃん!おはよう!」
元気な声が聞こえて、振り返る。
そこには、妹の觀翹が立っていた。
父親譲りの茶髪は背まで伸びていて、寝起きで絡まっているが、それでも美しい。
寝転がってばかりの体は、とても理想的なスタイルをしている。ウエストがキュッと細くて、足もしっかり5点4穴だ。
そして、なにより顔が良い。
俺も同じ血が通っているはずなのに、觀翹は俺なんかよりもすごく綺麗な顔をしている。
しかも、性格がよく、困っている人がいたら真っ先に助け、進んで手伝いもする。
リーダー決め等で、なかなか決まらない時は、真っ先に手を挙げた。
外も内も完璧だ。
さらに、勉強も運動もできる。
通知表がオールAなのは当たり前。陸上大会に出れば、余裕で一位をもぎ取ってくる。
まさに、“非の打ち所がない”。
なのに、彼氏は一度もできたことがないそうだ。
…大好きって言ってくれる友達はいるらしいけど。
多分、觀翹が気づいてないだけで、かなりモテているのではないだろうか。
会うたびにそう思う。
「おはよう。今日は早いな。いつもならあと30分は寝てるだろ。」
俺は時計を見て言う。
まだ5時だ。
「今日はお兄ちゃんとご飯食べたかったんだ〜。間に合ってよかった。」
觀翹は笑顔で言うと、向かい側の椅子に座る。
「お兄ちゃん、一緒に言お?」
「なんでだよ。まぁ別にいいけど。」
俺と觀翹は顔を見合わせる。
「せーのっ!」
「「いただきます!」」
パチンッ!と同時に手を合わせると、早速、朝食を食べ始める。
「やばい…めちゃうま〜っ!」
觀翹は笑顔でそういうと、卵焼きを一瞬で消し去る。
俺も卵焼きを齧ると、その味を楽しんだ。
- Re: ファンタジーな僕の日常 ( No.3 )
- 日時: 2023/08/23 15:35
- 名前: pepe。 (ID: dTbIpO5j)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
2.シスコン気質?
「お兄ちゃん、中学校ってどんな感じなの?」
白米が半分くらいになった時、觀翹が言った。
「……普通?」
俺は、なんて例えれば良いかわからず、そう言った。
「普通って!もっとマトモな表現あるでしょ!」
觀翹が言う。
「…標準的。」
「それも同じ意味じゃん。」
觀翹が真顔でツッコむ。
「全く、酷いね、この兄は。本当に中学生?実は、めちゃくちゃ背の高い小学生だったりして。」
「失礼だな、お前。ま、お前よりは語彙があるから安心しろ。」
俺は觀翹の額にデコピンする。
「いてっ!なにすんだーっ!」
觀翹はぷくっと頬を膨らませる。
「お前、それでも小6かよ。」
「小6だよ!4ヶ月前に12才になったよ!」
觀翹のその言葉を聞いて、俺はカレンダーを見る。
「…そっか。もう11月も終わりなんだな。」
カレンダーの丸は、22日についていた。
觀翹の誕生日はちょうど4ヶ月前。8/22だ。
「あ、そういえば、お父さんとお母さん、いい夫婦の日に結婚したって言ってたよね。じゃあ、今日は結婚記念日じゃない!?金曜日だし、どっか外食行けたりして〜」
觀翹が嬉しそうに言う。
「残念。母さんは今日は残業だ。夕食は冷蔵庫の中。」
俺は、皿を重ねながら言う。すると、觀翹もちゃっかり乗せてくる。
「え〜、お母さん、また?…やっぱり、私がまた仕事を再開させた方がいいのかな?」
「やめろやめろ。お前がまた絵師を始めたら、忙しくて学業どころじゃなくなる。俺も稼いでるから、お前はやめておけ。」
「お兄ちゃんばっかりずる〜い。学校に説明してないからって、私だけできないのはなんか不平等。」
觀翹がまたぷ〜っと頬を膨らませる。
俺は、その頬を両手で挟み、無理矢理空気を外に出した。
「そんな顔してると、可愛い顔がもったいないぞ〜。」
俺はそういうと、皿を流しに持っていき、そのまま洗った。
後ろから聞こえてくる、あのお兄ちゃんが可愛いって言ってくれた〜っ!とはしゃいでる声は無視して。
…言って欲しいならいつでも言ってやるっての。
──今思ったが、俺って意外とシスコンなのでは…?
そりゃそうだよな。あんな綺麗な妹がいたら、誰だってシスコンになるわ。
俺は1人で頷くと、流しっぱなしになっていた水を止めた。
- Re: ファンタジーな僕の日常 ( No.4 )
- 日時: 2023/08/24 05:46
- 名前: pepe。 (ID: dTbIpO5j)
- プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
3.朝の賑やかな教室にて
「おっしゃ、1番乗り〜っ!」
横から、大きな声がする。
多分この声は、クラスメイトの小野寺 純也だ。
「いちいち騒がないの。…あれ?じゅんじゅん、1番じゃないじゃん。瑠夏っち、おは〜。」
声をかけられて、やっと本から視線を外す。
彼女は、なぜかいつも俺に気づく、橘 朱里だ。
「…はよ。」
それだけ言うと、俺はまた本に視線を戻す。
「瑠夏、いたのかよ。もっと存在感を出してくれ!」
「無理だな。これは生まれつきだ。」
今までその“存在感”を出すのに、どれだけ苦労したか…。全て無駄だったわけだが。
「瑠夏っち、相変わらず愛想悪いな〜。女子にモテないぞ☆」
「そもそも存在すら知られていないのはどうすればいい?」
「……あ〜。……頑張れよっ☆」
…もう、泣きたい。
「そうだ、瑠夏。これから委員会があるんだが、手伝ってくれ。」
純也にそう言われて、すごく驚いた。
目をかっぴらくほどに。
「なんでそんな驚いた顔してんだよ。」
「いや…全部やれ、じゃなくて、手伝ってくれ、とは…お前も成長したんだな。」
「うるせぇよ!最近先生にバレてヤバいことになったんだよ!」
ヤバいことか…
一年近く、俺に任せてサボっていたからな。
「…わかった。手伝う。」
「私も行く〜!」
「よっしゃ!3人で行くぞ〜!」
無理矢理純也に肩を組まれ、うげっ、と小さく声を上げてしまう。
…こんなインキャっぽい俺が、なぜこんな陽キャグループに入っているのか?…それには、ちょっとした訳がある。
…いつも早くくる朱里に、存在を気づかれて、なぜか宿題を見せることになって…なぜか、今に至る。
…訂正。ちょっとも訳は無かったわ。
「瑠夏も、そんなぶっきらぼうにしてちゃだめだぞ〜。女子はな、もっとこう…爽やかにおはようぐらい言えるやつの方が好きなんだよ。」
「でも、私はチャラすぎるのもあんまり好きじゃないけどね〜例えば調子に乗ってるじゅんじゅんとか。」
朱里がニヤッと笑うので、なんだと!と純也が反論する。
いつも通り、騒がしい朝だ。
俺の静かな時間は、授業中か、朝の3分間しかない。
あとは、休み時間には觀翹と朱里と純也の誰かが、必ず周りで騒いでいる。
ぼっちインキャだった前もよかったが、今の状況も満更でもないのも事実だ。
平日は休み時間に騒ぎまくって、休日は4人で遊びに行くかビデオ通話で話す。
こんな生活も、悪くはないな。と思っている。
小学校五年生の時に、クラスでカエルを飼うかの議論で大喧嘩してから、女子という生き物はあまり得意じゃなかったが、朱里は他の女子とは違うような気がする。もちろん觀翹はウザい女子の中に入ってない。女子というか天使って感じ。
そんなことを考えながら、体育委員会の草むしりを手伝う。
普通、女子はこう言うのは嫌がりそうだが、朱里はこういったものに積極的に参加する。
さらに、意見が対立すれば、仲が悪くなるのもお構いなしに自分の意見を押し通す。そんな朱里を横目にため息をつく男子が2人。これが日常だ。
「なあ、瑠夏。高校どこにするか決めた?」
「…一応、東京の方に行こうと思ってる。東京と言っても田舎の方だけど。お前らは?」
「俺はまだ県内から出ないかな〜。県立通って、大学はデカいところ受ける!」
「じゅんじゅんの成績じゃ、中卒でしょ。いや、中学校を卒業できるかすら怪しいね。」
「酷すぎる!」
2人の会話に、苦笑いをこぼす。
確かに、純也の成績はひどい。
全国共通テストでの偏差値が、20も無い。
俺と朱里は余裕で70超えだが。
「兄貴が言ってた!70以上だって言う人は、20のうち19は嘘だって!」
「残念。私らは残りの1で〜す。また成績表見る?」
「いいです…。」
「純也も学ばないなぁ。ここの差だよ、ここ。」
俺は、わざとらしく頭を指でコツコツと叩いてみせる。
「くっそ…お前ら、絶対後で覚えとけよ!!」
純也の声が、3人しかいない校庭に響いた。
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