BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【色々】暗い、喰らい、Cry【短編】 ( No.172 )
- 日時: 2010/11/02 23:58
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: LQijQRnu)
- プロフ: そのまま言葉に出来るものなんて、なかなか無いよね
「…………雨、降ってるな」
「え、まじかよ」
厚い灰色の雲がかかった空を見上げ、源田は言葉を洩らした。靴の踵を治していた佐久間も少し驚いた声を出す。そして小走りで昇降口からグラウンドのすぐ近くへ。そこでようやく源田の言ったことが真実だと知り、顔をしかめた。
「うわーやべぇ、俺傘持ってねぇ」
「え、ほ、ホントかよ?」
「うんガチで」
「…………へー」
話している最中にもぽつぽつと音をたてて地面に吸い込まれている雨粒を背に、佐久間は苦々しい顔つきのまま脱力した。佐久間の家は帝国学園からは少し遠い。今は小降りだが、この様子だと走って帰っていても途中に必ずずぶ濡れになるだろう。と、佐久間は1人物思いに耽った。
佐久間は、対照的に頬を赤くし始めた源田(何故に)を横目で見ながら、もう一度落ちてくる水滴に目をやる。あぁ、だんだんと雨音が強くなってくるのを感じるわーと溜め息をついた。
(あー、どうしよう、まじやべぇ。……今日は辺見から借りたエr……じゃなくて聖本があんのになー……ぜってぇ濡らしたらアイツ怒るよなぁー……目にみえてるっつーの)
「あ、あのさぁ佐久間」
「ん?」
何だよ、と振り返ると、そこにはやはり顔を赤くしたままの源田が。もじもじとスカートの裾をつついている。よく分からないが、何か言いたがっているようだなと佐久間は考え、どうしたという言葉を飲み込み、言葉の先を促した。
「どうした源田、お前帰らねーの? 雨強くなってるぜ?」
「いや、あのさぁ……」
「だから何だよ」
「あの、私…………かっ、傘をさ」
「傘?」
一旦、深呼吸。
ぱくぱくと口を開閉しながら、頬を紅潮させる源田。が、しばらくして、胸につかえていた言葉を吐き出すように口を開いた。
「お、折り畳み傘あんだけどさあ! か、かかか貸してあげようか…………?」
……いや、語尾小さくなってんぞ。
そうツッコミたい思いを抑え、佐久間は源田の言葉を反復する。ふむ、折り畳み傘。確かによく見ると、源田の腰より下の部位(決して尻なんて言わない)から、赤い棒状のものが見えた。そこで再度、佐久間はふむ、と脳内の整理をし始めた。
今俺が困ってる状況で必要なものは? アンサー、折り畳み傘。
じゃあ今その折り畳み傘を貸してくれようとしてんのは? アンサー、——————片想いの相手。
「…………じゃあ、ゆーことねーじゃん」
「は?」
「いや、何でもねー。あーうー……源田?」
「な、何だよ」
「…………傘、入れてくれ」
「あぁ、うん、わ、分かった!」
ずいっ、と赤い傘を前に出される。いやいや、そういう意味じゃなくて。ていうかお前、俺にこの傘貸したらずぶ濡れになるだろ。濡れ濡れだろ。ブラ紐透けるぞコラ、他の男に見せるなよ! ……とか何とか考えてるのかないのか、佐久間はその源田の行為に気まずそうに目をそらした。しかし、やがてぽつりと呟く。
「…………いや、俺と相合傘しようぜーなんつって。い、意味だったんだけど……」
「あ、相合傘……(ぼぼっ)」
「いやいやいやいやいやいやっ変な下心は無いからなっ! うん、俺には一切そういういやらしい思いは無い、とっ、思う! う、うん!」
「…………そ、それはそれで傷つくような……」
「な、何でだよ!? ————あー! もー!」
佐久間はしょぼん、としてしまった源田の手を掴む。同時に傘もばさりと開く。やけに手際が良い。照れ隠しのつもりだろうか。
そして、耳まで真っ赤にして叫ぶ。
「ほら、帰るぞ!」
■それでも私の手を握ってくれてる彼がとてつもなく愛おしいのです。
(……て、手汗かいてねぇよな……!?)
(ヤバイヤバイヤバイヤバイ顔赤い絶対赤い)