BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- Re: 【色々】暗い、喰らい、Cry【短編】 ( No.176 )
- 日時: 2010/11/03 17:11
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: LQijQRnu)
- プロフ: 泣いて良いから、まだここに居て欲しい
「……ヒロトは良いなぁ」
頭上から降ってきた声に頭をあげると、俺と同じ顔を持つグランと目が合った。グランは足を組んで、自分の髪を指先で弄んでいる。暇そうだなぁ、と思ってクスリと笑いを零した。そしたらグランはさらに不機嫌そうに唇を尖らせると、こっちを睨んできた。
「何で笑うの?」
「っふ……いや、笑って無いよ」
「笑ってるじゃん」
「だから違うって」
「…………ヒロトはいつもそうだね」
あ、怒らせたかも。緩んでいた口元を手で覆い隠す。その行為にさえグランは眉を吊り上げているから、どうにか気を鎮めようと、慌てて質問した。
「いつもって、何が?」
「……ずるいトコだよ」
「だから、ずるいって何が」
「人を愛せることについてだよ」
沈黙。机の上を整理していたはずの手が止まる。真正面からこられたせいで「え、何でそんなこと言うんだよ」なんて弱気発言は出せずに、俺は固まった。
その硬直を、理解したとみたのか、グランは俺と同じ翡翠の瞳に鈍い光を灯す。
「ヒロトは良いね、円堂君を愛せるから」
「……愛せるって、そんな」
「でも私は違うんだよ」
冷たい怒りを孕んだ声。もしも俺が彼女を今抱きしめたら、その冷たさは消えるのかなぁ。なんて、頭の片隅でちょっとした妄想をしてみた。だけど、彼女は俺に再び声をかける。
「グランはヒロトの過去。そしてヒロトは過去であるグランの憧れ————ずっとこんな風に生きたかった、っていう象徴。これがどういう意味か分かる?」
責め立てるようなグランの声に、鳥肌がたつ。過去はあまり思い出したくないと、俺はよく君に言っているはずなのに。だから、ついつい気持ちが高ぶり、分かってるよと声を荒げていた。それでもグランは俺に糾弾する。分かってるつもりなだけでしょう、と激昂している声が鼓膜に響いた。
「私にとっての愛はヒロトだよ。ヒロトは過去の償いとして、辛い自身の過去を押し付けた私を愛さなくちゃいけない。それが、ヒロトの責なんだよ」
「っ、責…………?」
「そうだよ。……でも、ヒロトは私——グランじゃない、未来を意味する円堂守を選ぼうとしてる。それは、いけないことなの。決してあっちゃいけないことなの、罪なの」
グランの瞳が揺れる。悲痛な表情で。あぁ、今俺もこんな顔をしてるのかな。だって双子だし。…………双子、か。嫌な響きだな。
さらにグランは、今にも俺に掴みかかろうとせんばかりに、自分の思いを叫ぶ。喉が壊れそうなぐらい、辛くてたまらないというように。
「それだけでも大罪なのに……ヒロトは私に、自分を愛すななんて言うじゃない! 何で、何で!? 愛したって良いじゃない、貴方の想いを殺したって良いじゃない——————じゃないと————」
私が、報われないじゃない、と。
嗚咽をこらえて、彼女は最後の言葉を俺に告げた。
グランの頬を伝う涙の光を眼球に映しながら、俺は生唾を飲み込む。苦い苦い味が口内に広がった。
「…………そんなこと、言うなよ」
乾いた声で呟く。グランの泣く姿を見据えて、からからに乾いた喉から必死に声を絞り出した。
「…………愛したっていうのか、しがみついてもがくことを。それは愛じゃないだろ……縛って誰にも触れないようにするのは、愛じゃないはずだ!」
「ヒ、ヒロト…………」
「お互いの思いやりの欠如と、君の形だけの愛は、双子である俺たちそのものなんだよ! それでも良いなんて甘いことは、俺は絶対に言いたくない!」
ねぇグラン、独りで愛を語らないでくれよ。……君が考えている以上に、俺は君を大切に想っているんだから。だから、だから。
「グランの言葉で傷ついた心から漏れ出すそれを、俺は決して、愛と表現したくない! 終わることにはお互いに飽いているような……愛か欲かも分からない言葉を放つような関係は————愛じゃないだろ!? そうだろ、グラン!」
「…………っ……」
グランの表情が強張る。それを見てようやく分かった。初めから君と俺の立場は逆だったということを。
嗚呼、君と俺の愛の定義はこんなにも————
■双子ディファレンス
「それでも愛してるよ、ヒロト」
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え、何こrばーん