BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

仗承(♀) シリアス ( No.228 )
日時: 2011/02/13 00:22
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: zi/NirI0)
プロフ: 無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!! 無駄ッ!

 ぽとぽとと水の粒が俺の頬をうつ。冷たい、とびっくりして顔を上げようとしたら、目の前が真っ暗になった。ふわりと鼻を掠めた甘い香り。彼女の髪の香りだとすぐに理解出来た。黒く長い髪が、ぱさりと音を起てて俺の肩に流れる。つまり、今目の前の彼女は俺の肩に顔を埋めているらしい。あれ、今の俺すげぇラッキーな状況じゃね? とか思ったけど、何でか雰囲気のせいで口には出せずにいた。

 「…………雨、降ってきたっスね」

 空いている両腕で、彼女の体を抱きしめる。片手は彼女の背中に、片手は綺麗な黒髪に。すると彼女は安心したように体を寄せてきたから、俺は更に言葉を続けた。部屋の中は俺が彼女を抱きしめる音以外は静寂で満ちている。寡黙な彼女は、一言も発さない。俺の独り言だけが、2人の沈黙を破る。

 (あー……何で普通のシャンプーを使ってるのにこんなに良い匂いなんだろーなー……)
 
 薄い肩を抱いて、長い髪を手櫛で梳く。さらさらと波をうつ黒髪はいつもは滅多に触らせてくれないものだから、ついつい触れたくなる。こんな状況なのに、俺は平常心だった。単に、彼女への欲の方が勝っていただけかもしれないけど。

 「じょ、う、すけ」
 「はいっス」

 たどたどしくだが、彼女の声が聞こえた。俺の名前を呼んだようだ。俺は小さく笑ってその声に答える。……上手く笑えてたかどうかは知らないけど。正直、彼女が安心できたらそれで良い。この雨が晴れるのなら、笑顔なんていくらでも作ってやるっスよーみたいな。

 「あめ、つよいな」

 でも、彼女の雨はまだ振り続けていた。


 ■雨振り彼女と傘持ちの俺


 「……そう、スね」
 (俺は貴方を雨の中に晒したくないんですよ、承太郎さん)