BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

リナ(♂)→←神(♀) 神田テラびっち ( No.272 )
日時: 2011/03/20 19:38
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)

 柔らかい白に残った青紫は、なかなか消えそうにない。たぶん、元の白には戻らない。少しだけくすんだ色となって白へと治るのだろう。彼女の綺麗なわき腹に残った痣に湿布を貼りながら、そう思った。「痛ェよ」と爪先で額をはじかれる。少しびっくりして、彼女から遠のいた。



 ■嫉妬と君と何とやら



 「……神田、痛いんだけど」
 「こっちの傷の方が痛ェ、ほらリナリー、さっさと次」
 「はいはい」

 溜め息交じりに、また新しい包帯へと手を伸ばす。医務室だというのに医者や看護婦は全くいない。また新しい戦争へと駆り出されたんだろうか。胸がぎゅっと苦しくなる。今、俺の目の前には——精神的にも、肉体的にも——苦しいものしかない。最悪とか、そういう生易しい言葉では表せない。もう一度、はあと二酸化炭素を吐き出した。

 「何で俺は、他の男が残した傷を手当てしなくちゃならないんだ……」
 「お前だったら、裸見られようが襲われようが別に何ともねェからな」

 あ、また心に棘が刺さった。ちくちくとした痛みが体中に広がる。
 当然を口にする彼女は、俺の前で下着姿だった。補足だけど、変な意味じゃない。彼女が他の男と性行為をする時につけられた傷を、俺が手当しているから、ってこと。毎度のことだ、といったら聞いた皆は嫌悪をみせるだろうけど。だけど俺にとってはいつものことだから、心の片隅にあるのは苦い彼女への恋心と、微かな嫉妬のみ。彼女も俺が自分を好きなことを知っているから、平気で誘うような行動に出る。

 「…………なぁ、リナリー」
 「何」

 黒髪を揺らして、彼女がこちらに背を向けた。細く美しい背中には真っ白な包帯が巻かれていて、禁欲的な雰囲気が漂っている。彼女は平坦な口調で言った。

 「私に嫉妬、してるか?」
 「……………………さぁ」

 イエスか、ノーか。俺にもわからない。