BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 宛ハル どろどろ ひふみ様お題 ( No.282 )
- 日時: 2011/04/12 23:03
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
- プロフ: それでも荒巻なら……荒巻なら何もしないだろう……
床に転がされた時に、由良が密やかに笑っていた気がした。その笑いが何かを悟ったような表情に思えたから、俺は半分脱ぎかけた衣服もそのままに彼の頬に手を添えて訊いたのだ。
「……何、何か可笑しいことでもあんのかよ?」
くつくつと笑いを噛み殺す由良の瞳は、せわしなくぐるぐると辺りを見渡していた。俺が目の前にいるだろなんて女々しい言葉は吐かないけど。けどやっぱ、これから抱く相手が目の前にいるっつーのに周囲を気にしてるのは何か頂けないなとか思った。だから余計にむっとした。
「何だよ、何か可笑しいことあんなら言えっつーの」
「…………くっはははは、ははあぁ、ははああ、っはああはは」
はを長く言い続けた音をぶつ切りにしたような、違和感を感じる笑い声が広い工芸室に響いた。夜だから誰も来ないとはいえど、やっぱり抱かれるこっちとしてはひやひやする。俺は唇に人差し指を宛がい黙れという意味で由良に警告したのだが——由良はやはりくつくつと笑い、それに答えてみせた。
「ねえ、ハルさん。ねえ、分かりますか?」
「……何が」
「俺、今からハルさん抱こうとしてんのに。ハルさんのこと滅茶苦茶にしちゃおうとか考えてんのに——」
——気持ち悪い、です。
その言葉に俺の時が止まったなんていうまでもない。そして俺の腹に思い切りチェンソーを突き刺したような痛みが襲ってきたこともいうまでもないだろう。イコール傷ついた。はい簡単な数式。
びっくりしている俺を尻目に、由良はかくんと力が抜けたように膝を折って膝立ちの姿勢になった。彼の端整な顔立ちが、無造作に伸ばされた前髪の間からちらちらと覗く。虚ろな瞳は、焦ったようにぎゅるぎゅるといない誰かを追っていた。
「あ、ぁ。眩暈が、します、よ」
■くらくら堕ちて転がって
(気持ちの悪い眩暈がするの!)
それでも卑怯に笑む彼が妙に愛おしいのは、きっと俺がそこはかとなく彼の転落を知っているからだろうか。そう思い俺はまた、愛とはかけ離れた愛を持つ彼の呼吸を、受け入れる。