BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

宛→カナ→吉 ネタバレ・グロいです注意 ( No.285 )
日時: 2011/04/14 23:03
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
プロフ: もしも、宛が吉野のことを嫌ってたら。本編とは違いますねサーセン。

 ぎゅるぎゅる、ぐちゃり。
 前者は吉野さんがぐるぐる空中で回転する音。後者は空中から回って落ちてきた吉野さんが肉塊になる音。よく文章とかではこういう音は表現されてるけど、実際に聞いたのはこれが初めてだった。
 地面に直下した吉野さんは、まるでそう——夏にするスイカ割りで、割り方を失敗したような無残なスイカに似ていた。真っ黒い、長い髪の間から果実に値する血や内臓が周囲へと手を伸ばしている。
 と、ぼうっと吉野さん(スイカ割り済)を見ていたら、足元にころころと何かが転がってきた。白い、いや灰色っぽい何か。赤い糸のようなものや赤いそれが付着していて、よく日常的に見かける……あぁ、眼球だこれ。本来ならば嫌悪するべきそれは、まるでビー玉のようだった。綺麗ではないけど、手に乗せて観察したいような気を誘われる。

「よし、の」

 ——あれ、カナちゃん?
 眼球鑑賞会を開こうかと思案しているところへ、誰かが吉野さん(と俺)の方へ歩み寄ってきた。ぺたぺたと聞き慣れた足音が鼓膜を揺らす。誰かと思えば、カナちゃんだった。現実と変わらない、もさもさとした前髪が両目を隠している。スイカ割り済み吉野さんのこと、アレで見えるんかな? ちょっと心配になった。

「よしの、なぁ、よしの。おまえなんで、おまえ、よし、の」

 壊れたラジオのように吉野と繰り返すカナちゃんは、泣き出しそうに見えた。震えるその両肩に手を置いて、甘い言葉でもかけてやろうと思ったけど、嫉妬心の方がむき出しになったのでやめた。
 吉野さんが亡くなってショックを受けているカナちゃんとは違い、俺はカナちゃんが吉野さんばっかりのことを見ているからむかむかしていたのだ。
 
(……あぁ、まだそんな過去に縛られてんのかよ、カナちゃん)

 ——そんなスイカ女、放っておけば?
 口角を吊り上げて呟いた言葉に、カナちゃんが反応して殴りかかってきたときは、思わず腹をよじって笑ったね。



■ぎゅるぎゅる、ぐちゃり、



 カナちゃん、もっと俺を構ってよー。