BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ふるおが ( No.296 )
日時: 2011/04/23 00:25
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
プロフ: それでも荒巻なら……荒巻なら何もしないだろう……

「お前は弱いよ」

 帰り道でぽつりと言われた。その時の古市の表情がどんなものかなんて後ろを歩いていた男鹿には分からないことだし、それにただの独り言かと思って気にも留めなかったのだ。
 銀色の髪が夕方の生温い風に弄ばれて、さらさらとなびいている。男鹿は肩に乗せた赤ん坊のことを気にしながら、くしゃりと頭をかいた。短い自分の黒髪は、どうもちくちくと指の腹を押す。

「弱くねえよ」
「弱いよ」

 一瞬だけ、古市の剣幕に驚いた。振り返りもしていないのに、なぜか今、男鹿にとって古市は怒っているように思えた。声色は悪友である普段の彼とは全く変わらないのに、だ。

「お前は弱いから、泣かないんだ」
「? ……泣かないから強いんだろ?」
「違うっての」

 やはり、彼は振り返らない。男鹿は古市の言葉の意味が理解できないまま、茜色の空を見上げた。この様子だと、明日は晴れそうだ。

「泣かないから、弱いんだっつーの」



 ■意味不明理解不能