BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

さや杏♂ ( No.334 )
日時: 2011/05/14 01:10
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
プロフ: 頼むから、泣かないで。

 泣いている君を見かけました。初めて見る表情でした。
 だから私は、君の隣に座ってみました。

「さや……か……っ、さやか……ァ……っ」

 君が珍しくぼろぼろと涙を零しているものだから、私は少しだけ戸惑ったのです。だけど、貴方にもこんな弱い一面があるのだなぁと分かって、同時に少し嬉しくもあったのです。
 いつもポニーテールにしている君の緋色の髪は、今では別の紅に汚れていました。そもそも髪をくくっていなかったのです。きめ細やかな肌には青痣やすり傷がたくさんあって、戦ったことは明白だったのです。

「何で、何でお前が犠牲になんだよ……お前は……お前は幸せにならないと、俺はやり切れねェっつーのォ……」

 そしてまたさやか、と。私の名前を幾度と無く愛おしげに繰り返す貴方の美しいこと美しいこと。傷ついた貴方が綺麗なのでは無くて、たぶん私は——こんな姿になってしまっても私を愛してくれている貴方のことが綺麗だと思えるんでしょう、と考えました。
 
(お願いだから、泣かないでね)

 ——隣に座っていることを、まだ生きている君は気付かないだろうけど。

(君がくれた贈り物を、私は大切に持っているから。君がくれた想いを、私は大事に感じているから)

 ——それでも、君にこの声が届いて欲しいと。私はそう願うんだ。



 ■PLEASE DON'T CRY!



 だから、後もうちょっとだけ君の隣で見守らせてね。
 ——きっとね。君の笑顔は、誰よりも美しいだろうから。