BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- イナズマ 昔の僕から未来の君へ ( No.338 )
- 日時: 2011/05/27 23:08
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
- プロフ: 改行し放題。捏造し放題。良いじゃない……人間だもの……
「さよなら」
——小さく呟いた言葉は誰のものだったんだろうか。
手向けの花にと選んだ薄桃色の花の名前を、俺は知らない。
きっと、夏美が選んで来たものだから相当高価なものなんだろうけど。
「俺達は終わってないけれど、」
あぁ。そもそもこのスーツもネクタイも全て先週買ったばかりのものだ。光る黒革の靴も肩が張るような黒いスーツも、汗と涙で彩られていた俺達には似合わない。
——不自然だ、俺も。これも。
「だけど、始まったものをずっと続けて行く訳にはいかないから、」
これ、と視線を下に向けると丁度そこには一つの棺があった。黒い、黒い棺。死を閉じ込めて、この世には一切黄泉の香りなど残さないような重圧を持つ、その棺。
それさえもこのチームの他の誰かが用意したものだ。おそらくこういう方面にも知識豊富な鬼道や豪炎寺辺りだろう。やっぱり、クールなあいつららしい外観をしている。
くすくすと笑いがこみ上げた。可笑しい、何故可笑しいのだろうか。
「だから俺達は、とりあえずここでコンマを打っておくよ」
いつものはち切れんばかりの笑み、までとは言えないけれど。
長い長いこの話に、一旦の終わりを打ち込もうと俺は棺へと花を投げ入れた。
真っ暗な闇に、まるで光のような色合いの薄桃の花が映える。
同じように風丸も、鬼道も、豪炎寺も、ヒロトも——みんながそれぞれの花を棺へと向けた。青や赤、黄色や白。みんなの手によって、黒い闇には色とりどりの光が咲いた。
「この光は、俺達から未来のお前達へのプレゼントだよ」
笑う。悲しさと切なさのせいで困ったように笑ってしまったような気がする。
俺から声をかけられた『棺の中のそいつ』は、何も言わない。いや、目蓋を閉じているから寝ているんだろう。
——そのままで良い。始まりがくるまで、そうやって。
「じゃあな、××」
未来で仲間と笑いあっているであろうそいつの名は、この世界ではまだノイズとなって、俺達には届かない。だけど俺はそいつの名を紡ぐ。
「未来でもよろしく、な」
——お前はお前のストーリーを、語っていけよな。
■未来ノットイコール俺
(きっと、サッカーでつながっているさ)