BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

伊織→? ( No.341 )
日時: 2011/06/01 19:02
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: uHvuoXS8)
プロフ: 百合ーゆりゆりー展開速い。

「手、貸して」

 ——と腕を伸ばした先には、彼女のどん引きな顔があった。……何でだろう。カップルらしいことをしろと言ったのは向こうのはずなのに、酷く間違ったことをしている気分になる。一瞬だけ『ザ・ワールド! 時よ止まれェ!』と某ネタを呟きたくなった。嗚呼哀れなり漫画脳。

「……手を貸して、返ってくんの?」
「返さずに私の右手で握っときましょう」
「まじうっぜ」

 最近の子はすぐにうっぜとかきっもとか、ボギャブラリー貧困だよ本当。そう思うのに何故か胸にはざくざくと貧困な脳から搾り出された言葉の端くれが傷を作る。いってー。

「恋人なら手の一本や二本や三本くらいくれよ」
「恋人なら相手の手が三本ないってこと知れよ」
「…………三本目は股に生えtぐえぶぅ!」

 殴られた。痛い。下ネタはアウトラインらしい。
 ——あーあ、期待はしてなかったけど、手つなげないのって何気にへこむわー。
 ぽつりと心中で呟いて、空を仰いだ。茜色の空は眩しい。夕日がきらきらしてて、顔中に熱い光を浴びる。制服が汗に濡れる感触はどこかねっとりとしていた。
 
「夕日、綺麗だにゃー」
「そーだねー」

 良い反応。彼女は長い横髪を耳にかけた。可愛いうなじがちらりとかくれんぼした。

「……あのさー、手つないでみる?」
「え、……うん」

 ——まさか、そっちから言うなんて!?
 内心びっくりしたなんて、こんな日常の中ではささいなことで。



■手をつなごうと試みたがどうやら君の方が、