BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

アレ神 ( No.356 )
日時: 2011/07/07 23:27
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
プロフ: もし神田があの後生きてたら。

「……アルマは、さよならって言わなかった」

 傷だらけの身体で、君は懐かしむように呟いた。

「何かそれじゃ、過去の話みたいですよ。……つい昨日のことなのに」
「俺には、過去だ」

 ふるふると力無く君は、首を左右に振った。振る度に長く艶やかな黒髪が揺れるのに、君は気付いていないだろうね。綺麗だなぁ、美しいなぁと思う僕に、君は続けて言ったね。

「……昨日までの戦いも、俺はただ過去を掘り起こしてただけだ。それが変にこじれて、戦争になってしまっただけで」

 包帯が幾重にも巻かれた右手をじっと見つめる。君の双眸は痛々しい自身の傷を見ているようで、その傷をつけた相手のことを思い返しているように、どこか危うい。

「アイツの、アイツの身体が眠っていた墓を。俺は掘り起こして、アイツの屍を確かめて、また埋めただけだ」
「だけど、今回の戦いで君は、花を添えることが出来たでしょう?」
「花?」

 怪訝そうな君の表情が、ひどく愛しい。
 ボクは君の為に、唇から言葉を溢れさせた。

「今まで、君はアルマの墓を呆然と見つめているだけだったろうけど。……今回の戦いで君は、アルマのお墓に花を添えて、手を合わせることが出来た」

 ——そして、さよならを告げることが出来た。
 にっこりと偽善的な微笑を浮かべて呟くと、君の切れ長の瞳はぐっと下がって、泣きそうな表情になってしまった。それでも泣かまいと必死に唇を噛み締める君は、やはり意地っ張りなんだろうか。

「…………花なんてがらじゃ、ねぇけどな」

 くしゃくしゃの笑顔で、そう呟いて。



■グッドバイ、グッドデイズ。



(ねぇ、過去と別れを告げた君は、こんなにも綺麗だ)