BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 古男鹿♀←伊織 ( No.366 )
- 日時: 2011/08/01 23:38
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- プロフ: おぱーい率ひでぇ。王道っぽいです。
「男鹿さんって綺麗ですね、もうたまらん」
男鹿の長い髪を頬にあてて、にこにこと微笑む少女。古市は、けして友好的ではない——苛立ちを必死に隠した表情で、部屋の主である男鹿に静かな声できいた。
「……ちょっと男鹿、何この子」
「ん? あぁ。昨日、スーパーの前で行き倒れてたから、拾った」
「拾ったって、おまちょ……」
■貴方だけに、懐きます。
——久しぶりに男鹿の家に来たかと思えば、これだ。
半ば諦めたように溜め息をつくと、溜め息をつく。元凶である男鹿は、いつもと変わらない美貌を称えたままゲームをしている。ベル坊は昼間に吹く涼しい風を堪能してすやすやと寝ているし、金髪の彼女はどこかへ外出してしまった。男鹿の家族は基本、昼間は外に出ているし。
つまりは、だ。
(男鹿と二人でにゃんにゃん出来るかと思ってたのになぁ……)
二人きりの室内で、夏の暑さも相まって良い雰囲気になるかと思って今日はやってきたというのに。古市はぐぬぅ、と唸り声をあげて男鹿の背中に抱きついている少女を睨む。
……二人きりのラブラブイベントをぶち壊す元となっている、黒髪のショートカットの——竜崎伊織と名乗った、その少女を。
「男鹿さんって強いんですよねぇ? 暴れ馬……いや、暴れオーガとして名を馳せているようで! 伊織ちゃんの強さレーダーがぴーんっと反応しましたよ。下半身もですが」
「下ネタじゃねーか!」
「ふっふふぅ、そういう目的で来たような白髪野郎に突っ込まれたくないです。無論、ツッコミ的な意味合いでですが」
ですよねぇ、と再び男鹿を愛で始める伊織。古市は正当なツッコミをしたにも関わらず、目的だったそれを的確に言われて、ぐうの音も出なくなった。沈黙が降りた部屋の中で、凛とした美しさを持つ男鹿は、テレビの画面に目を向けたままふと呟く。
「……あー、暑っち」
「暑いですよね男鹿さん! 私と一緒にランデブーして熱さの限界までイきますか! 亀甲縛りなら自分は得意ですよう!」
「何その突然の性癖暴露!? 男鹿はそういうこと聞いてねーっつの! てか酷いな下ネタ率!」
むぎゅう、と更に密接し、伊織は男鹿の細い体躯を抱きしめる。伊織の腕と腕の間で、細いながらも確実の大きな男鹿の胸がたわむのを、古市は生唾を飲み込んで見つめていた。その視線に気付いたのか、男鹿が切れ長の瞳を面倒そうにこちらへ向ける。
「どした、古市。飲み物なら勝手に取って来い」
「あ、いや……喉が渇いてる訳じゃねーけど……」
「男鹿さん、あの男は男鹿さんのこの胸を見つめていましたよ! それはもう舐めまわすように(ぐわしっ)」
「真実をはっきりと大声で言うなっての! てか男鹿の胸を掴んで主張すな!」
俺だってそんなことしたことないのに、と言いそうになり口を噤む。胸をぐわしっと掴まれた男鹿の瞳にはやはり面倒そうな色がみえるが、それは伊織が抱きついているからゲームがしにくいというだけらしく、胸を掴まれたことには無関心らしい。クールなのか単に気にならないのか、どっちだ——古市は頬が熱くなるのを感じて男鹿から視線を外した。
「男鹿さんの胸大きいんで、ついつい触っちまったぜ、ふー……」
「何、一仕事したみたいな顔してんの!? 変態隠せてないからねその理由!」
「マシュマロのような柔らかさとお餅のような弾力がですね」
「語り始めるな! さっきのワンタッチでお前は何を感じ取った!? お前の両手はゴッドハンドか!?」
「源田先輩ぐらいには、神的な両手です」
にやりと笑う伊織には、清純な少女らしさは欠片もなく、ただ変態という二文字が煌々と輝いている。源田先輩というのはよく分からないが、とにかく伊織は男鹿に対して女同士であるというのに恋慕を抱いているようだ。某後輩を思い出す。むかついて座布団をつねった。
我関せずという風に、男鹿はテレビゲームに夢中だ。しかし背中にはべっとりと幽霊のように伊織が張り付いているため、完全にスルーは出来ていないようである。
「……何ですか、また男鹿さんの豊かな乳を自身の欲望のために揉みしだこうと構えてるんですか? 残念、色んな世界で生きている伊織ちゃんには貴様の考えはお見通しですよ!」
「ちげぇよ! てかお前はその迷惑そうな乳揉みを他のとこでもやってんのか!」
「もっと柔らかく、バストハンターと呼べませんかね。……乳だけに」
「上手くない、上手くないんだよその表現! 何そのどや顔!?」
ダンッ!!
……と、伊織と古市の言い合いが白熱してきた頃、テレビの前辺りから硬質な音が部屋中に響いた。びくっと動きを止めると、伊織と古市はぎぎぎぎ……と壊れたロボットのようにぎこちない動きで————音を出した男鹿に体を向けた。
男鹿は背後からどす黒いオーラを発しており——イライラとした表情(傍目に見れば殴るのを必死に抑えているようにも見える)で、見た者を凍らせる壮絶な笑みで二人に言った。
「……うるッせぇから……ちょっと静かにしてろ。特に古市」
「何で俺!?」
「確かにうっせぇですよね、下半身も」
「お前はその下ネタ黙れっつーの!!」
男鹿の怒りも空しく——またもや、伊織と古市はぎゃぁぎゃぁと喧嘩を始めてしまった。
次に男鹿が笑顔を見せるのは、ぼこぼこになった古市と真っ青な顔の伊織を正座させた後……だった。