BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Q(擬人化)←マミ+潤 ( No.367 )
日時: 2011/08/02 00:29
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
プロフ: 色々分かってる潤と、どうしようもないQB

 ——あー、あー。電波、じゅっしーん。
 どこかの可愛い電波女ちゃんみたいに、電波を受信しようと思ったけど無理だった。直感で感じるのは、どこか別の世界から聞こえる——というか、俺、伏見潤に呼びかける声。
 ——あ、あいつか。
 幼い中性的な声と、とある世界の白髪赤眼の少年がだぶる。

「はいはーい、今行きますよっと」

 夜の池袋を見渡して、ライトの輝きと美しさに微笑む。やっぱり、この街は綺麗だ。でも狂った愛ばかりで、ちょっとばかしくどい。俺や臨也のように、一つの欲望に純粋に生きなくちゃ、この世界は少々辛いだろうに。
 ——潤君、大忙しー。
 呟いて目を閉じると、意識は混濁の闇へと沈んでいった。
 世界が、変わる。



■「兎さん兎さん、アリスはどうして泣いてるの?」「それはね、」



「どしたの、QB? 俺に告白? でも俺がお前と抜き差し運動しちゃったら即手錠でがっちゃんだよ? ……あ、手錠プレイ良いかも」
「ちょっと黙ってくれないか」

 池袋と変わらない夜の街の空気は、冷たかった。冬かと思ったけど、単に夜だからとかそういう問題っぽい。QBは真っ白い髪を闇の中で浮かび上がらせて(本人は目立ってるっていう自覚はないけど)、不機嫌そうに俺を見た。視線にぞくぞくする。何たってレッドアイだもの!
 少女とも少年とも取れる風貌は、まさしく魔法少女を手引きする不思議な存在にはぴったりだ。と、俺が考えていることに気付いたのかそうでないのかは知らないけど、QBは気まずそうに呟いた。

「マミ……巴マミが、ちょっとね……」
「巴マミちゃんって、あの金髪でおっきー胸の子? 魔法少女の? お嬢様ーって感じの、ふわふわした子かな」
「そうだよ。後、マミをそういう胸とか……君特有のやらしいもので表現しないで欲しいな」
「へぇ、随分と執着してるようだけど。傍観者気取りのお前がそんな風に嫌がるって、相当だろ。……どした、告白でもされた?」
「…………何で君は変態能力と共に心を読む能力も持ち合わせてるかな。神様は君によっぽど甘いらしいね」

 神様は俺のこと大嫌いだっつの、と苦笑して潤は近くのベンチに腰を下ろした。自分の胸の辺りまで背丈がないQBと視線の高さが同じぐらいになる。アイドルだといわれても可笑しくないほど端整な顔立ちのQBは、幼い顔には似つかわしくない、大人びた表情を浮かべていた。

「マミが、最近ずっと変だったんだ……だから、——」
「——だから、お前が理由をきいたら素直に『QBのことが好きなの』って言ってぇ、返事は良いとか言ってマミちゃん逃げちゃったんだろー。そんでそのまま会ってない、と」
「そんなにマミは気持ち悪い声色してないけど……大体合ってる、かな。本当に、君は何でもお見通しらしいね。あー気持ち悪い」
「残念だけど、男の娘に気持ち悪いって軽蔑されても俺らの業界ではご褒美です。あざーしたぁ! ……んで、どうしたいの?」
「どうって……」

 QBの赤い瞳が困ったように揺れる。潤は、いつもは計算高く飄々としている(自分もそうだからあまり言えないが)彼が困っているところをにやにやと見つめていた。
 同時に、まさかあの子がねぇ……と内心で驚く。潤が知っている巴マミは、お姉さんらしいところがある、豊満なボディを持つ落ち着いたお嬢様キャラ——というところだ。まだ子供らしいところはあるが、年上の男性を好む気がしていたのだ。なのに、実際はこんなちんまりとしたタイプが好みだったとは。しかも、ある意味人外。
 にやつく潤を横目で睨むと、QBは口を開いた。

「……正直、わかんないんだ」
「分かんないって——マミちゃんのことが?」
「いや違うよ。……マミの気持ちに答えるべきか、否か、だよ」

 QBの声は震えていた。
 潤は空気を読んでいるのか、無言になる。冷たい夜風が、二人の頬を撫でてゆく。真っ白い髪のQBと黒髪の潤の対照的な色合いは、闇で染められた。

「僕は……僕は、今までもこれからも……ちゃんと自分の任務を全うしなくちゃなかないんだよ。任務を全うするってことはつまり——僕は、マミを見捨てるってことじゃないか。僕には、それが出来ない……したくないんだ……。だけど……僕は任務を行うために生まれた存在じゃないか……だから、だから……本当に、分かんない。ソウルジェムのこととか、マミのこととか……考える度に、苦しくてたまらないんだ」
「ふぅん」

 潤は、なるほどというように呟いただけだ。
 きっと、今のQBに何を言っても意味はない——そう思うからだ。決して悩むQBに愛想がつきたとか、そういう理由ではない。単純に、QBの出す答えこそが正しいと思えるからだ。

「まぁ、とにかくさー」
「……うん」
「断るにしろ、愛してやるにしろ。……女の子を泣かしたら、俺が許さないからなーっと。とりあえず泣かせたら、俺はお前を——嫌というほど鞭を持たせて俺をぶたせてやるぞ!」
「っ、ははは……」

 潤の軽い言葉に、QBが笑いを洩らす。赤い瞳には、潤ではない誰かを想っているのか——柔らかい、相手を労わる光が灯っていた。
 ——きっと、俺に話す前に決断してたんだろうなぁ。
 にへらと緩んだ笑いをみせて、潤はQBの頭をぽんぽんと撫でる。QBはその手を払いのけようとはせず、どこか晴れやかな微笑を称えていた。

「何か、拍子抜けした気分だよ……潤、今日はありがとう」
「こちらこそ、QB。お前は俺の嫁!」
「断固拒否で」




(くすりと笑った兎の)(、その嬉しそうなこと!)