BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- たぶん、百合。中編だと。 ( No.372 )
- 日時: 2011/08/13 22:42
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- プロフ: スペクタクルPのThe Beast.です。自己解釈なので注意。
——人が紡ぎ上げた欠片達は、あまりに汚すぎる。もっともっと美しいものを作れば良いのに。
窓ガラスに映った美しい自分の顔と、窓の外でせっせと働くヒトという生き物を眺める。老いて汚くなると評判のそれらは、けして汚くなることの無い私には滑稽に思えた。
滑稽と思うならば、ドアを作ってこの家と外を隔離すれば良かった。
きっと、それが出来ないのは幼い私のプライドだ。
■うつくしいけもの、あいしたかのじょ。
「美女と野獣の王子は、魔法を掛けられ人から醜い獣の姿になりました。でも、私は自らに魔法をかけ 醜い人から美しい獣になったのよ。どう、凄いでしょう!」
笑顔で一人きりの家の中叫んでみても、誰も反応してくれない。
——良いの、私は一人でも一生綺麗でいられるんだもの。
外で笑顔で何かを語り合っているカップル、ガッコウというよく分からないところへ急ぎ足で通っていくヒトのグループ。楽しさと笑顔が蔓延しているそれを、私は窓越しに横目で眺めた。
*
(隠し事をしてました、傷つくのがいやでした)
桃色のドア。赤い色のソファー。レースのカーテンにはほのかなレモンの香り。大きなくまちゃんにはチェックのリボン。きらきらと光るガラスの箱の中には、色とりどりのビー玉と一緒に可愛いお魚さんたち。 やっと築いた私だけのお城。頬についた土を拭って、私は庭からお城を一望した。
「……でも、何か足りない」
私一人のお城は、余りに空虚で満ちているような気がした。こんなにも大好きなものを詰め込んだのに、まだ何か足りない。でもその足りないものが何なのか、私には分からない。
「…………何が足りないのかしら」
ヒトと接することを嫌う私の問いに答えるものなんて、いる訳がない。淡いブルーのツインテールに隠れた黒い角が、私とヒトとの隔たりだ。ヒトはきっと私のこの姿を見たら嫌うだろうから、私は絶対にこのお城から出ない。出たく、ない。
(そう、絶対に)
城を見上げて呟いた言葉は、広く青く澄み切った空が吸い込んでくれた。
空だけは私の味方みたいで、ちょっと嬉しかった。