BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- もぶ?←いお 何かノーマル ( No.377 )
- 日時: 2011/08/13 22:38
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)
- プロフ: 言い張って見栄張って結局自分には何も
——強い人は、強いから好きだ。
理由にもなってない理由だけど、私はいつでもそれを掲げている。
肉体的に強いのは良い。目の前で弱いものいじめや武力による何か争いが行われていたら、助けられる強さがある。もしも私が誰かに殴られて痛いと言ったら、そいつを殴り返してくれるだろう。
精神的に強いのは良い。目の前で正論や正義の味方がくだらない理論で組み伏せられていたら、正しく直す強さがある。もしも私が誰かに罵詈雑言を並べられても、そいつに言い返してくれるだろう。
「……それが、お前が強い奴を求める意味かよ」
「そうですよ。強い人が好きなのは強いから。それが理由です」
にこり。
辛いから泣く、悲しいから泣くなんていう正しい道。一般的に正しいとされている道は、私の場合は全部石ころで封鎖されちゃってる。だから、歪んでるがたがた道を進むしかないのだ。
「だって、思うでしょ。弱い奴同士が馴れ合ってどーすんですかー? ……って。弱い奴が馴れ合ってたら、一生弱いっていう層でミジンコみたいに動き回ってなくちゃいけないじゃないですか。でも、どっちか片方が強い人だと話は変わってくるでしょー? 弱い奴は強い人に感化されて必死に上の層へ這い上がろうとしますよね。強い人は弱い奴を見て、守ってやらなくちゃって強くなろうとしますよね。それって世の中の最善策だと思いませんか? 強い人がいるからこそ、人間は高みを目指せるんですよ。きっぱり言っちゃうと、世の中に弱い人間は必要ありません。ナッシングです。意味が見つからないんですもん」
「……お前さ、」
一息に言った。
その一息で綴られた思いに水をさすのは、誰だろうか。
「弱い奴は必要ない——って、お前、自分の存在を否定してるだけじゃねぇか」
びくりと身体が震えたなんて、信じたくない。
「否定して否定して否定して否定して。……お前さ、おかしいよ。何でお前の存在を確立させたいくせして、マゾみてぇに自分の存在踏みにじってるわけ? そういうの、見てて腹立つ」
彼の吐いた言葉に愛しさを感じただなんて。
「痛いって言えば良いじゃねぇか。言えよ。私は自分が存在してることが辛くてたまらない、って。強い奴求めて、そいつに突き放されて悲しんでる自分は辛いんです、痛くてもう駄目なんですって。……お前さ、かっこつけ過ぎなんだよ」
目の前の景色が、ぼやけて霞んできただなんて。
「かっこつけんなよ。痛いなら痛いなりに、絆創膏くれって言えよ。傷をほったらかしにしとくと、癖になんだ。だんだん自分が痛いのが当たり前なんだって、変な考え方してきて、自分の思い言わなくなってくる」
「……体験談ですか」
「違うっつーの」
——不器用に貴方が呟いた欠片を拾い集めると、私の胸の中はいっぱいになる。
貴方の言葉は全部大切だから、鞄の中も腕の中も、もう入りきらない。
「単に、そう思うだけだ。傷ついてる奴の傷に手当てしないのは、可笑しいだろ。……お前の怪我、気付いてるのは俺ぐらいしか居ねぇのに」
「自意識かじょーですね」
「うっせ」
冗談交じりに笑ってみると、彼は心地よさそうに笑った。
■否定して、否定して、否定して、愛して、否定して?
(それでも拾いたい、と思うのは許されるでしょうか)