BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

ボス←ヒメ ( No.389 )
日時: 2011/09/23 01:09
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: wzYqlfBg)

 ワンピースを、買った。
 いつものおてんばな性格と真反対の、桃色のワンピース。明るいピンクの花柄をした、白いレースがいっぱいついた、ワンピース。いつもぴしっと黒とか赤とか、派手な系統で固めている自分には似合わないなぁ、なんて思いながら買った。
 本当はこんなの似合わない、なんて知ってる。
 でも、一緒に買いに来ていたモモカにすごい勢いで勧めてきたから。苦笑いしながら、レジへ向かってしまったんだ。心の片隅ではモモカに両手を合わせながら、口の中では「モモカが、モモカが言った……」と繰り返す。あぁ、ごめん。また平謝りをした。
 膝上ならまだミニスカートのように履けていたんだろうけど、今回かったこれの丈は膝下だ。微妙な丈のため、どうしても着る人をおとなしく、清楚に見せてしまう代物。
 今まで女らしく彼に接してこなかった自分さえも、女という枠に嵌めてしまう、桃色の鎖。

「似合わない、なんて言わせへんからなぁー、ボッスン!」

 今くわえているぺロキャンの味は、あまずっぱいハニーレモン。彼が唯一好きだと笑ってくれた、個人的にはそこまで好きじゃない味。
 おとなしい、女の子らしい子が好きなんだと口を尖らせて抗議してきた彼は、この姿を見て驚くんだろうか。それとも、いつもの興味なさそうな顔でおかしいところを指摘してくるんだろうか。
 近くにあった鏡の前で、ワンピースを着た自分の姿をもう一度眺める。一回転すると、ひらりと円状にフリル付きの裾が揺れた。

「……髪の毛、黒に染めたろうかな」

 お気に入りの金髪の毛を指先で弄ぶ。
 何気なく呟いたその一言。何気ない言葉の裏に隠された本当の意味を、少女はまだ自覚していない。
 ——これは恋ではなく、女らしくないと言い張る彼へのただの対抗心だ。
 自分を彼の友人という枠に嵌めようと、彼女はそう言い張る。
 鏡の前で何度も自分の姿を見つめながら、言い張る。



■かがみよ、かがみよ、



 彼の好み通りになりたくて、彼女は渇望する。
 鏡に向かって、笑みを振りまいて。