BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【色々】憂鬱マゼンダ!【短編】 ( No.426 )
日時: 2012/03/18 22:49
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: bvgtbsWW)
プロフ: 源不♀といえば生理ネタだなんてそんな決まりがあるわけ無、

 休日、部屋の中、男女が二人きり。これだけの要素があるのだから、やることは決まっているだろう——そう言わんばかりに襲われた。相手が相手なので、強姦ではないけれど。無言になった源田との視線が絡んだ瞬間、突然抱きしめられたのだ。
 スカートに入れてあったシャツを出されると、冷気が背を走り鳥肌がたった。まだ自分の体温で温かい背中を、源田の冷たい指がおそるおそるなぞる。

「冷たいっての」
「、あ、う、……ごめん」

 少し刺々しく言ってやれば、シャツに入れられた手をすぐにひっこめる。チキンなのかヘタレなのか微妙なところだ(いや、どっちも似たようなものか)。体をのけぞらせて行為を止めようとした源田の体に足を絡める。逃がさない、という意味で。
 私が足を絡めると、源田は申し訳なさそうにネクタイを緩めた。普通の男ならがっついてきそうなシチュエーションなのに、源田は私のことを案じているのか、クッションやらゴムやらを探している。

(律儀だよなぁ、ほんと)

 一連の行動を無言で見守る。さっ、と近くにあったクッションを越しの下に宛がわれた。
 緊張した面持ちで、ワイシャツのボタンに手を伸ばす。そんなに緊張すんなよな、と思って額をこづく。別に、お互い初めてじゃなかろうに。
 マニキュアを塗った私の爪先は、マゼンダで派手に彩られている。長く伸ばしているせいで、よく源田に怒られる訳だが。源田は額をこづかれたことに対して、涙目で不平を訴えてきた。

「痛い、不動」
「私の方がこれから痛いっつーの」

 ばーか、と舌を出すと苦笑された。だけどボタンを外す手は休めない。ぷちぷちと外され、露わになっていく自分の胸元。薄くてぺったんこ、と眼帯女に評された胸元は、本当にこいつの興味を煽っているのだろうか。
 ——あぁ、そういえば。
 胸元を眺めながら、ふと思い出した。
 開いたシャツを押しのけて、源田が背中に手を回してくる。ひやりとした例の指先が、ブラのホックを掠めた。かちゃり、と金具が外される。

「……あ、源田、ごめんけど、」

 そこで、今気付いたという風体を装って、私は無邪気に笑った。
 目を丸くして驚いている源田をぐい、と押しのける。意外にもあっさりと避けることに成功した。

「私、今日生理だったわ」
「…………。………………それじゃ、やめとく、か」

 俺の発言に気を悪くした様子も見せず、源田は私からふいっと離れた。思春期の男子中学生なら考えられないほどすっぱりとした切り替え。目の前にこんな美少女(※半裸)がいんのに、食わないってどういうことだ、オイ。こっちの方が疑問に思うくらいだ。

「シャツ。寒いから、閉じて」
「はいはい」

 手元のゴムをかばんに収め、弦だが私の願い通りにボタンをかけ直す。ぷちぷちとシャツが閉じられていくのを観ながら、息をついた。はぁ、拍子抜けだ。
 こんなとこまでいってるのに、無理矢理犯そうとしないこいつの律儀さは、本当にどうかしている。普通、我慢出来なくね。女の方がどうこうなんて考え、あるわきゃねーのに。

「はい、できたぞ」
「…………どうも」

 首元までボタンを留めると、源田は最後の仕上げに柔らかく微笑んだ。劣情が一切無い笑顔に、私は少しだけ戸惑う。そんなにあっさりと諦めちまうのかよ、と唇を尖らしてしまいそうになった。
 ぼすり、とベッドに横から倒れる。血が流れる感覚が膝をふらつかせた。腰にひかれたクッションが丁度いい。源田に感謝。

「うあー、生理って思い出すと腹が痛くなってきた……」
「寝るか?」
「ん、そうする。……膝かりるぜー」

 腹部の鈍痛を和らげようと、ごそごそとベッドの上に横になる。頭の後ろにごつごつとした源田の膝頭があたった。横になると、すぐに腰まで毛布がかけられる。プラス、私の体温により温かくなった大きな手が、髪の毛をすいた。

(……律儀、だなぁ)

 何度か繰り返した単語を、また呟く。事の最中で止めて、しかも生理痛が辛いとかほざく女なんて、放っておけば良いのに。そう頭で考えているものの、源田の体温から離れられない自分がいる。
 こいつの髪の毛を撫でる手つきは心地よい。優し過ぎて、律儀過ぎる。

(愛してるぜー、げんだ)

 口元を緩めて、毛布を手繰り寄せた。





■だから俺は、お前の律儀さに死のう。