BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 堀宮 ユキ→石→堀 ( No.428 )
- 日時: 2012/03/29 00:08
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: bvgtbsWW)
- プロフ: 諦めて、前を向いて、立ち上がって欲しいと願う私は。
トオルが、泣いていた。
これはきっと夢の中で、私がこれから行うである行動はきっととてつもなく非生産的なもので、どれだけ何をしても結局は夢の中だから現実に戻っちゃえば意味なんてないってことは分かってるけれど、けれど、けれど、けれど。
だかって、目の前で泣いてるトオルを放って置いてはいけない気がするの。
「……トオル、トオル?」
少し近寄って、膝をついて泣くトオルの肩を揺さぶった。話しかけることに躊躇いはない。躊躇う時間があるなら、トオルを笑わせるために使いたい。そう思ったから、あえて気丈な風を装ってみせた。
けど、そんな私の頑張りも空しく。トオルから返ってきたのは、簡素な言葉。
「なんで、ほりはおれのことをすきになってくれないんだ」
高校生にもなって顔中ぐちゃぐちゃにして、泣いてるでやんの。現実ではけしてみることできない姿は、私にとって少し新鮮だ。場違いにも、少し笑ってしまった。
——あぁ、そのことでまだ泣いてるんだね。
着ているセーターの袖は、そこだけ涙で変色してしまっている。私のだるだるセーターだと、あれだけ涙を吸ってしまったら重くて動けないかもしれない。トオルの真っ赤な瞳は、私にさらに訴えかける。
「おれがいちばんにすきだったのに」
「みやむらとほりがであうまえから、ずっと、ずっと」
「あんなしあわせそうなふたりをみる、ぐらいなら、」
死んでしまいたい。そう締めくくって、トオルはまた塞ぎこんでしまった。
隣にいる私が見えているんだろうか、と疑問に思う。きっと見えてないんだろう。トオルはきっと、堀にしか救われたくないだろうし。こんなみっともない姿も、堀にしか気付かれたくない。
そんなことを全部知りながら、私は言った。
「……無理だよ」
だって、私は堀のように優しくはなれないから。どこまでも自分のことしか考えられなくて、現実しか見ていられない人間だから。
トオルの欲しがっている救いは、与えられない。
「堀はもう、宮村のものだよ」
——人をもののように扱うな、って先生はゆーけど。
トオルの泣き声がやむ。ぐずぐずと鼻をすする音のみが、鼓膜に響いてきた。私なんかの言葉を、ちゃんと聞いてくれているのだろうか。だとしたら嬉しい。
「だから——ごめんね、トオル」
あなたの欲しいものは、あげられないよ。
■Don't call my name.
「貴方の欲しいものは、私ではあげられない」
「だって、他の人がもう奪ってしまっているから」
それでも立ち上がろうとするなら、私は貴方を抱きとめよう。