BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 黄笠♀ ささめの実話ネタ ( No.433 )
- 日時: 2012/04/28 20:59
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: Wx6WXiWq)
- プロフ: 黄→ささめ 笠→友人 休憩中にて
「あ、待って、ちょ、近づくな」
良い匂いがするっス、と首元に抱きつこうとしたら止められた。両手をあげて、万歳のポーズで待機していたこっちは面食らう。えぇー?
黒と茶の中間という、何とも素敵な色合いの髪の毛の一つ上の彼女。今日はいつもの二つ結びではなくて下ろしている。
大人しげな外見のくせに、俺に対しては凶暴化してすねを狙ってくるという一面があることを知るものは少ない。
「え、何でっスか? もしかして俺のこと嫌い、みたいな? 近づくなゲス野郎、みたいな?」
「いやいやいやいや!! そ、そうじゃなくて……、う……うーん……」
「やっぱり変態野郎っスか……?」
「だからそれはないって、そんなこと思ってねーっつの!」
少し悲しげに視線を落としてみれば、彼女は怒ったように反論してきた。何気に彼女は自分のことを嫌いじゃないことを知り、満足する。
「嫌いじゃないなら抱きしめても良いじゃないっスか、今日の俺はボディタッチ強化週間っスよ!」
「何だその週間……」
グッ、と親指を突き出してウインクする。向こうはこっちの笑顔に戸惑っているようで、困ったように目をそらした。
やがて、気まずそうにぽつぽつと話し出す。
「…………いや、実はさぁ……。私、昨日……体調悪くて風呂入れてないんだよ。だから、臭かったら悪い「先輩の匂いクンカクンカ!!」ってぎゃぁ!!」
首筋に顔を埋めて匂いをかぐ。何と言うか、普通に良い香りだった。多少髪の毛が固いけど、この辺りは潮風が強いからこんなもんだろう。
——とか冷静に考えてたら、振りほどかれた。あぎゃー、とお尻の方に隣の席の男子の机をぶつけながら仰け反る。
「ちょ、お尻痛いっスよ……」
「っ、て、てめぇ何してんだゴルァ!!」
「いやー、普段通り良い香りっスよってことをアピール」
「せんでいい!」
むきゃー、と頬を赤くしてこちらを睨んでくる彼女。そんなところも可愛いと思うのは俺だけの特権である。
ポケットから櫛を取り出して、次の授業の準備をしている友人に聞く。「櫛って何回振ったら他の人に使っても良かったっスかね?」「……四回、じゃない」「そっか、ありがとっス!」
四回櫛を振り、疲れたと机にうつ伏せてしまった先輩の髪の毛をひとふさ手にとった。そして、ゆっくりと櫛を入れる。長い髪の毛に櫛を入れるのは、少し難しい。
すると、髪の毛に違和感を感じた先輩が顔を上げた。不機嫌そうな表情に口元が緩まる。いやぁ、どんな表情でも可愛い。
「何」
「いやぁ、こうやって髪の毛とかさせてもらっても良いっスか? あ、痛かったら痛いって言って欲しいっス!」
俺の言葉に、一度だけ先輩の瞳が丸くなる。やがて、唇を尖らせてそっぽを向いた。
「……べつに、いいけど」
「そっスか。あざーす!」
さて、彼女の了解も得たことだし————と。
俺は次の授業のチャイムを気にしながら、彼女の髪の毛に触れるのだ。
■次のチャイムよ、まだ鳴るな!
「あ、引っかかった」
「…………んー」