BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

Re: 【色々】そして卵は割れた【短編】 ( No.443 )
日時: 2012/06/12 23:01
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: Wx6WXiWq)

 あぁ、死にたいな、死にたいな。
 お洒落のおの字もない野暮ったく重たい学生鞄の紐の部分を肩にかけていると肩がもげてしまいそうでそのもげた部分から白い骨と真っ赤な血が流れてきそうだとか思ったけど私の太い腕はそこまで貧弱な訳じゃないのでぶちぶちと筋肉が千切れる音だけを生んで未だつながっている。ふう。溜め息をついてみても梅雨のじっとりとした空気がからりと乾くわけがない。今日の英語のテストがなくなるわけでもない。
 死にたいなー。
 思わず呟いてしまう。死にたい。何かこう、死にたい。
 誕生日を迎えたばかりだというのに死にたいと思うのは可笑しいだろうか、答えはイエス。私の中の常識が正論を振りかざしてくる。貴方が誕生したのは貴方のお父さんお母さんのお陰でありけして貴方だけの生ではないのよだからそう簡単に死にたいだなんて思っちゃ駄目なんだよわかってる貴方の命は貴方だけのものじゃぁないのってうるさいわ常識。ローファーに包まれた足先を地面へと叩き付けた。
 自分はその辺にいそうなただの高校生だし中身も二次元スキーなちょっとお腐れ様なだけであって他の人の日常に強く影響を与えているわけでも誰かのために生きてるのよキュピーンなんてこともない。だからかなぁ、何故かむしょうに死にたくなる。誰からも必要とされてない私、とかテンプレな言葉を呟いてみたけどそれはどこか違う気がする。
 だって、前の席のあの子は明日の提出物の範囲でわからなければ振り向いて聞いてくれるし、目を細めて笑う姿が印象的な彼女は私に抱きついてくれるし、同じ趣味の美術部の少女は某漫画についてきゃっきゃと話しかけてくれるし。私が何気なくつぶやいた一言にコメントをくれる彼女も例外でなく、私が生み出した文字の山に価値を与えてくれるどこかの誰かについてもそれは言えることなのだ。
 誰からも必要とされていない訳じゃない。
 ただ、実感が出来ていないだけであって、自覚が足りていないだけであって。

「……ぷあー、死にたー」

 死にたくない日があるなんてことは私にはなく、心は一日ごとに自殺して、布団に入る度に私は願うのだ。
 あぁ、どうか神様。
 今日の続きが明日ではありませんように。


 そうして私は今日もまた、生まれた卵をぐちゃぐちゃに壊していく。



■そして卵は割れた。


 割った卵の中身なんて私が知るはずがない。
 きっとどろどろなんだろう、ってことは理解しているけれど。