BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

キセキ青+いおたん ( No.458 )
日時: 2012/07/22 00:54
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)
プロフ: 青受け好きです、大好きです

「青峰先輩のDTください」

 さっと俺の背後に気配が現れたから影の薄い相棒がようやく戻ってきたかと思ってやれやれって肩を竦めながら「テツかよ、遅かったな。委員会はもう終わったのかよ?」と笑顔で振り向こうとしたら急にケツの肉をわしっと音が出るぐらい鷲づかみされて(しかも左右両方)悲鳴をあげて大きく飛び退いた先にはよかった誰もいなくてだけどいないせいで俺はバスケットコートに思い切り顔を打ち付けてしまった←今ココ。
 すまん、俺にもようわからん。とりあえずケツに残っている指先の感触とかそういうアレだけが体全体に鳥肌を生んでいて思考回路がまともにならない。「あぎゃぎゃぎゃ」と悲鳴に似た何かを漏らし続ける俺の頭上からは嬉しそうな声が降って来た。

「青峰先輩のお尻って意外と柔らかいんですね、伊織さんは感動し過ぎて濡れます!」
「あーっ、何かまた変なのがいるっス!! くっそぉ、青峰っちのケツが、ケツが!!」

 ……変な奴が、また増えた。
 ようやく落ち着いて俺のケツを鷲づかみにした相手を見上げる。普段は見下ろすほどの身長差があるのに、座り込んでしまった今では俺が向こう——伊織を見上げる形となる。肩までのショートと長ったらしい前髪。前髪からのぞいた瞳がにやりと嬉し気に歪んだ。
 俺の後輩を自称している女の後ろから、駄犬がぱたぱたと真っ青な顔で駆けて来る。おい来んな馬鹿。ただでさえ叫んだせいで注目を浴びてるんだから、お前みたいなイケメンが来たら余計に視線集めるわ。しかし黄瀬は座り込んだままの俺を一瞥した後、「むきぃ!」と伊織に鬼気迫った様子で近づいた。

「ちょっとちょっと! 何『青峰先輩のDTください』とか言いながら堂々とバック狙ってんスか、それはDTじゃなくてバージンじゃないっスかアンタ!」
「……え……そうですが、何か……?」
「本気で驚いてるやだこの子っ————じゃ、なくて! バスケ部でも同中でもないのに、何でアンタは平然と体育館の中に入ってきて俺の天使のお尻を掴んでんスか、誰の断りがあってそんなことするんスか羨ましい!!」
「お尻じゃないですよぅ、穴狙ってるだけですよぅ」
「へぇ、なら別に————ってなお悪いわ! てか黄瀬お前は黙ってろ、涎拭け駄犬!」

 復活した俺はとりあえず黄瀬を一喝し、まだ震える膝を殴り立ち上がろうとする。伊織の言葉に流されそうになったが、ここは流されてはいけないんだと本能が悟っている。立て、立つんだ俺。変態に勝てるのは俺だけだ、ケツ触られたぐらいでびびんな俺。
 そうだ……ケツ、触られたぐらい……ぐらいで……!

「……うっ」
「えっ、青峰先輩つわりですか? もしかしてあの夜のおかげ……? だ、だったら伊織ちゃん————青峰先輩のウェディングドレス姿、見たいなっ……!」
「ばーああああああか! 青峰っちさっきのセクハラに対する恐怖で泣いてんじゃないっスか! アンタまじどんな握力で青峰っちのどや顔打ち壊すほどのセクハラしたんスか! ……あー、大丈夫っスよ青峰っち。俺がいるっス、大丈夫っス、変態はいないいないっスよ」
「青峰先輩、やっぱり先輩の浅黒い肌に似合うのはオレンジ系統かと思うんですよね! 前に見せてもらったオレンジのうさちゃんパンツ、私的にはショタっぽくて本当におかずになりました!」
「うわああああああああああ!!」
「あ、青峰っち気を確かに泣かないでえええええええええ!!」
「…………おい、これはどういうことだ」

 俺が両目から落涙していると、背後から新たに声をかけられた。声の主は言わずともわかっている。たった一言で俺ら全員の口を閉じる技を持つ主将、赤司だ。赤司は片手にバインダーを抱え、ハァハァと息の荒い伊織と俺の間に入った。厳しい顔つきから察するに、どうやら俺を守ってくれるつもりらしい。さすがキャプテン、やるぜキャプテン。
 「あ、赤司……」と俺が羨望の眼差しでその赤い髪を眺めているときだった。真剣な表情で赤司が呟いたのは————

「————青峰には白無垢だろうが、JK」
「うわああああああああ変態三人になったああああああああ!!」
「ちょっ、その三人に絶対俺も含まれてるっスよね青峰っち!? 誤解、それ超誤解っスよ! だって俺はこの馬鹿女を止めようと、」
「赤司先輩、白無垢の素晴らしさは後で語るとして——ちなみにJKの略元は?」
「J(冗談は)K(黄瀬だけにしろ)のことだが何だ?」
「うわああああああ! ここでも俺フルボッコっスかああああああああ!?」

 赤司ははっと嘲るように言い放ち、黄瀬は顔を隠してしくしくと泣き始めた。伊織は赤司の白無垢発言に「たしかに……青峰先輩の黒を引き立たせるためには白無垢というベストアイテムがあるということを私は忘れていたようですね……なるほど、白無垢だからこそ活動的でワイルドな先輩を縛り付けて清楚な感じに仕立て上げることができるということですねわかります。大人しい先輩が私のために帯を外して……『今夜が初めてだな、伊織……』って頬を染めて……何それ滾る」とめくるめく妄想の旅を楽しんでいるようだった。とりあえずお前と赤司は俺が嫁に行くという発想を変えてくれ。
 赤司が話し込んでいるのを見て、バスケ部の巨人こと紫原もゆったりとした動作でこちらへやって来た。頼むからこないでください。ややこしくなる。うん、まじややこしくなる。珍しくお菓子を頬張ってないので、菓子が零れるから黙れと口止めすることも出来ない。

「えっとねー、俺は峰ちんにメイド服着て欲しい。そんで俺にご奉仕してお菓子食べさせてほしい。あーんして、あーんって」
「誰がやるか! 散れ紫原!」
「……青峰っちの、ガーターベルトっスか……」
「俺の太もも見てんじゃねーよ黄瀬、あ? 一発顔面にぶち込まれたいか、あぁ?」
「顔面にぶち込むとか——青峰先輩っ、そんな下ネタ露骨にっ……!」
「日本語で話せてるよな俺? 何かお前見てたら心配になってきたわ!!」
「そして青峰は顔を赤くしながら俺の上に四つんばいになりそのスカートの裾をたくし上げまるで中身を見て欲しいとでも言うかのように」
「赤司は何の朗読してんだテメェ!!」

 叫んだ俺はそこで初めて立ち上がることができた。立ち上がった俺を見て、四人はさらに笑みの色を濃くした。まだまだ遊び足りない、そう言いたげに。
 ぞわりとしたものが背筋を這った。







■愛されの君!






 
「……黒子? 何をしているのだよ」
「青峰君が可愛いんでビデオカメラ構えてます。後、おそらく三分後に青峰君が泣きながら僕のところに避難してくると思うのでそのために綺麗なタオルと水分補給のためにドリンクと頭を撫でて甘い台詞を吐く練習をしています」
「一番歪みないのはお前なのだよ……」
「褒めてくれてありがとうございます、緑間君」