BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 緑高♀ ( No.497 )
- 日時: 2012/08/25 00:53
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)
私が欲しいもの。黒子みたいな白い肌、火神みたいな料理の上手さ。黄瀬みたいな愛くるしさと、桃井さんみたいな長い髪。青峰みたいなさばさばした性格や、赤司みたいな頭の良さ。宮地先輩みたいな大きな瞳も欲しいし、木村先輩のような常識も欲しい。大坪さんみたいにがっしりとした体があれば緑間を受け止められていられるだろう。欲しいもの、いっぱい並べてみたけど。でも駄目。私はまだまだ欲しいものがたくさんある。綺麗な指先とか、純粋さとか、傷跡一つない膝小僧とか、ニキビが出ないほっぺとか。たくさんあるんだよ。どれだけたくさん欲しがってみても、手に入らないってのはわかってるけど。同時に思うんだよね。「これぐらいいっぱい素敵なもので満たされた女の子じゃないと、緑間につりあわないんじゃないか」って。
ピアノは弾けない。睫毛は長くない。指も滑らかじゃないし、いつだって絆創膏をつけている。唇はいくらリップを付けても時々ささくれ立っちゃう。テストはどれだけ頑張っても中の上。緑間が目指す難関大学に行くには点数はまだまだ足りないんだ。彼が目指す高みへ、どれもこれも足りない私は、付いていくことができない。
「……俺が欲しいのは、お前のその明るさと強さなのだよ。相手のために笑顔を向けられるたくさんの明るさと、どんなことがあってもへこたれない強さ。どちらも俺には無いものだ」
真ちゃんは私を抱きしめて、ぽつりと零した。
壊れ物に触るみたいに、大きな手で私の腰を柔らかく抱きとめて。片方の手は癖のある私の黒髪をゆっくりと撫でながら。
「だから、安心しろ。お前以上の女なんて、どこにもいないのだよ」
「…………ふへっ」
照れ隠しのつもりで小さく吹きだすと、真ちゃんはまたゆっくりと私の髪の毛をなで始めた。涙でぐちゃぐちゃの顔を見られたくなかったから、抱きしめられているのは都合が良い。悲しみと嬉しさでふやけた脳内で、ぼんやりと思う。
私にはまだまだ欲しいものがあるけれど。別にそこに当てはめこむものは、他人の何かじゃなくても良いんじゃないかなーって。たった一人の大切な感情を当てはめることが出来たら、それが一番なんじゃないかなって。そう考えてみると不思議と心は軽くなってきて、普段のような笑みを浮かべることが出来た。
「……私の足りないとこに、もっと愛を注いでやってよね、真ちゃん」
唇を尖らせてそう言うと、真ちゃんは「当然なのだよ」と浅く笑った。
空白に埋め込まれた愛情を手に、私はくすぐったそうに目を細めてみせた。
■底なしの愛をあげましょう。