BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

忘れてたとかそんなんじゃ ( No.507 )
日時: 2012/08/31 23:28
名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)

 君は強い。誰よりも強い。それは周知の事実で、敵も味方も関係なく、君を知ったものは誰もがその強さに跪く。だから君の隣にライバルなんてものも、理解してあげられる人、なんてものもいなかった。隣にいる者は皆その強さに頭を垂れなければならなかったのだから。
 赤色は君を見て「それで良い」と笑った。紫色は何も言わずに君の横をすり抜けていく。緑色は顔をしかめたまま黙っていて、黄色は信じられないような顔をして呆然と先を行く君を見送る。桃色は最後まで君の隣にいようとした。でも彼女がいたのは本当の隣、じゃない。何歩も間が空いた、一直線上。手を伸ばしても叶わない距離に彼女はいるしかなかった。
 どこまでも青い君。君は初め、僕と同じような淡い水色のような希望を抱いていたに違いない。だけど君の色を深めてしまったのは、君の必然である『強さ』だった。捨てたくても捨てられないそれは、君を楽しませていたはずなのに、ただ傷つける。


 ——どうしたらいいんだろう。
 ——どうすれば、君の深い青を少しでも……


 そんなことを考えていたのは、君に勝つ少し前のお話。
 今の君は、鮮やかな群青をしている。けれど奥底に残っている黒色はまだまだ消えそうにない。
 元のあのきらきらとしたスカイブルーに戻るまで、君はどうしたら良いんだろう。



「……だから、僕らの色をあげます」

 

 少しでも君の中の黒い記憶が消されるように、僕たちの色をあげる。
 凛とした赤。淡い紫。爽やかな緑。光る黄、温かい桃——それだけじゃあない。
 君の群青に光を与えるオレンジ。真っ暗な海の中で君を導いて行ける、水色。今までの君が見たこともないようなたくさんの色をあげる。目の前がカラフルすぎて、君があの黒色を見なくても済むように。



 だから、どうか。
 今日だけはこの思いを、受け取ってください。





■8月31日の君へ。









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青峰君誕生日おめでとうございます。
誰も君のことを理解してあげられなかったかもしれない。それは傲慢な願いだと嘲られたかもしれない。捨てたいと思っているそれを捨てられずに何度も苦しんでいたかもしれない。
だけど大丈夫、今の君は、幸せです