BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
- 支部に載せたやつ ( No.518 )
- 日時: 2012/09/15 23:07
- 名前: ささめ ◆rOs2KSq2QU (ID: hFu5/zEO)
- プロフ: 青→小学生、黄→高校生→、黒→女子高校生
「うっわー、またきせがいんのかよー。きめー」
俺の最愛の想い人、黒子っちは朝が苦手らしい。前に、本人が苦悶の表情で『例えば、私が毎晩この世界に蔓延る魔物を倒している魔法少女だとしましょう。それでも先生方は遅刻してきた私をあんな風に叱ることが出来るんでしょうかね……』と遅刻の反省文と向かい合っていた。基本的に寝坊、ましてや遅刻なんていう不良的行為をしない黒子っちだけど、課題が多すぎて学校に遅れてきたことがあった。『優等生の黒子っちが反省文! レアっス!』と騒いでたらピアスを持っていかれそうになったのは内緒。
兎にも角にも、黒子っちは家を出るのが遅い。女子は身支度が遅いというけれど、黒子っちの場合は自分の姿をどうこうする時間はほんの十分ぐらいで、後は遅刻しないギリギリのラインを見極めて眠っている。黒子っちは一人でアパートに住んでいるので誰も起こしてくれず、時々目覚ましに気付かないことがあるようだった。それを聞いてから、俺は出来るだけ黒子っちを朝迎えに行くようにしている。
黒子っちのことが大好きな俺としては、朝一番に好きな人の顔を見られるなんてご褒美以外の何物でもない。下心もちょっとはありながら、ここ二週間程いそいそと黒子っちの家へと通っていた。高鳴る鼓動を必死に抑えて。
「…………また君っスか」
「君ってゆーなよ、気持ち悪ィ。青みね大きっつっただろーが」
「……。青峰っち、おはようっスー」
——通っている内に気付いたのが、これだった訳だが。
目の前で機嫌悪そうにこっちを睨んでくる男の子。肌が浅黒くて、短い黒髪は自分はスポーツ少年ですってことをアピールしている。背はそれなりに高くて、背中におぶってるランドセルが浮いて見えた。黒子っち情報では『近所に住んでる小学生ですよ。私がバスケをやってたら、一緒に遊んでくれました』とのこと。遊んでくれました、と言った時の黒子っちのスマイルは忘れられない。
高校生(しかもモデルしかもイケメンしかもピアス付き)を怖がることなく(むしろナメられてる気がする)、青峰っちは話しかけてきた。黒子っちのアパートの前は、青峰っちの小学校の通学路になってるらしい。黒子っちの家の前で待っていると、よく会った。
「青峰っち、今日は桃っちと一緒じゃないんスね。いつも二人で仲良くいちゃいちゃ行ってんのに」
「ハァ? 何だよ、きせはろりこんなのかよ。さつきに言ってやろー」
「はぁ? 何スか、俺は黒子っち一筋っスよ。青峰っちみたいに他の女子といちゃいちゃしないっスもん?」
「っ……」
俺の言葉にむっときたようで、青峰っちの目が吊りあがる。いくら怒った顔をしても、たかが小学生。俺の方が背が高いので、見下ろす優越感に浸ることができた。
青峰っちは桃井っちと仲良くしていることを否定出来ずに、唇を尖らしてそっぽを向いている。ふはは、勝ったっス! 内心ガッツポーズをしていた、その時だった。
「うっせーよ、どうてい!!」
大声でそう叫ぶと、青峰っちが俺の脇の下をくぐり抜けて走り出した。「童貞!?」ちょっとそれは今をときめく黄瀬涼太(17)に向かってそれはちょっとそれはちょっとそれは!!————さすがに頭がかっと熱くなる。捕まえて一発拳骨を、と拳を握り締めて振り向いた。
振り向いた先にいたのは、黒子っちだった訳だが。
「あ、黄瀬君。おはようございます。今日も待たせてすみません」
「……おはようっス、黒子っち————!!」
寝起きで少しぼうっとした顔をしているけど、今日も可愛い黒子っちが立っていた。長い髪の毛に寝癖なんて一つもなく、さらさらと朝の風に揺れている。可愛い、いや、マジで。衝動的に思わず抱きつこうとして両手を広げる、が、すでに黒子っちの腰には先客がいた。
黒子っちの腰に、青峰っちが正面から抱きついていた。黒子っちの背丈は青峰っちよりも高いので、黒子っちの胸の辺りに額を押し付けている。思わず黒子っちの貞操について考えてしまった。
「ちょ、何してんスか青峰っち! は、離れるっスよ! 黒子っちがすごく迷惑そうな顔してるっス!!」
「別に迷惑な顔なんてしてませんよ」
「しっとしてんじゃねーよ、どうていモデル!! テツはおれのこと大好きだから、超うれしそうだろーが!」
「……いえ、嬉しくもないですけどね?」
俺の訴えがさらに怒りを煽ったのか、青峰っちの抱きしめる力が強まる。あぁ、あぁ……そんなに抱きしめる力が強いと、黒子っちが壊れるんじゃないかとひやひやする。しかも相手は小学生、黒子っちは己の身に迫る危険を感じ取っていない。世の中の男は年齢関係なく獣だということに、純粋な黒子っちは気付いていないのだ。急いで黒子っちの元へと飛んでいき、青峰っちの腕を引っ張る。
「青峰っち、いくら黒子っちの胸がないからってあんまりぎゅうぎゅうしてたら黒子っちが潰れちゃうっスよ!! はーなーれーろー! うぎぃ!!」
「黄瀬君は朝から血を見たいんですか?」
「おれは巨乳の方が好きっつってんだろ! べつにテツのぺちゃぱいにきょーみねぇし!!」
「青峰君も朝から血を見たいようですね」
「その小ささが良いんじゃないっスかと俺はあれほど!!」
「……黄瀬君、歯ぁ食いしばってください」
え、と顔を上げると、にっこりと微笑んでいる黒子っちと目があった。背筋に冷や汗たらり。
しつこく黒子っちに抱きついている青峰っちを引き剥がす前に、俺の鼻面に黒子っちの鉄拳が炸裂した。俺がモデルだということを一切考慮していない、本気の拳。目の前が一瞬暗くなり、すぐに明るくなった。あぁ、お星様がちかちかと。涙で歪んだ視界に映ったのは、溜め息をつく黒子っちだった。
「……女子の体をとやかく言うのはマナー違反ですよ」
「すみませんした……」
「テツはおっぱいねーのに女子なのか?」
「青峰君、歯ぁ食いしばってください」
小さなライバルが悲鳴をあげているのを見て、俺は何とも言えない気持ちになった。
■「おはようございます、今日も元気ですね」
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支部に載せたやつです